なぜ 人間だけが
「自分は無意味だ」などと思うのだろう。
深い海の底を覗けば
何のために生きているのか分からないような
生物がごまんといる。
誰に知られることなく
息づいているような
生き物が。
その一つ一つが
何のために生きているのかと疑いだせば
「生命(いのち)」なんて
この世からすべて死に絶えてしまうだろう。
噴き上げる熱水の側で
硫化水素の中で
彼らは生きるために
生き続ける。
人間だけが、生を疑い
自らを無意味と思う。
あんな海の底にも
生きている命があるのだけれど──。
初稿:1999年

