男塾塾長 江田島平八と80年代「少年ジャンプ」黄金期について語る ~民明書房刊・特別企画?

2017年9月15日書籍と絵画

魁! 男塾

今、宮下あきらのマンガ『男塾』が、「国内最大のマンガ(電子書籍)販売サイト ebook Japan」でぶっちぎりの人気らしい。

タイトルからしてイッってるけども、中身もそれはそれは筆舌に尽くしがたい迫力というか、ハッタリというか。「こんな作品、二度と出てこないだろうな」と思うくらい独創性にあふれ、売り上げ月間一位になるのも納得。

「一位」に釣られてebookjapanの特設ページにアクセスしてしまった私も、ついつい時間を忘れて電子マンガの立ち読み・・・

「そういや、こんな技があったなー」と懐かしく思い出したのでした。

知らない方のために、『男塾』はどういう所かというと・・

ウィキペディア『男塾』←(わざわざ「架空の学校」と強調されている点が渋い)

男塾とは、創立300年以上の歴史を持つ東京都にある全寮制の私塾[1]。全国の不良少年達を集めて鍛え上げ、次世代のリーダーを育てていく事を教育目標としている。

校長は塾長、教員は教官、生徒を塾生と呼び、学年に合わせて○号生と称している。

授業カリキュラムは独自色が強く、戦前の軍国主義を彷彿とさせる過激なスパルタ教育が一番の特徴である。軍歌と君が代(と塾歌)以外の歌を歌うことは禁止、下着はふんどし以外厳禁など厳しい規則があるが、頭髪に関しては自由なようでパンチパーマ、モヒカン刈りなどの髪型の塾生が多く登場。

また、塾長によると、授業料をきちんと納めている塾生は一人もいないため男塾の経営はいつも赤字状態とされていることから、意外にも塾長や教官による強制的な授業料の取り立ては行われていない模様。その代わりに、後述の「殺シアム」や「愕怨祭」といった過激な見世物をたまに開催し、一般人から見物料を集めることがある。

塾生間では「奴隷の一号・鬼の二号・閻魔の三号」とまで言われる絶対的な封建主義の元、厳しい上下関係がある。三号生に対しては実質的に教官たちでも手を出すことができず、指示を出せるのは塾長のみである。三号生は、天動宮を拠点にして活動しており、遠征と称して日本各地で抗争を繰り広げている。

「殺シアム」を開催した際、その過激な内容について一般人から「男塾ならやりかねない」などと恐れられている一面もあるが、「愕怨祭」には多くの一般客が訪れているなど地域にはそれなりに溶け込んでいる模様。その一方で塾長は顔見知りの警官が訪れた際に「タレント養成校である」と誤魔化した事もある。

なんだかんだで、みんな好きだったのね……と思うと、「クス」っと笑いがこみ上げる。
なんか、同窓会でも開きたい気分。

幹事はもちろん剣桃太郎、スペシャルゲストは大豪院邪鬼(だいごういん じゃき)?
あ、でも、あの人、デカすぎて、宴会場に入れないかも。

こいつ、高校生とちゃうんかい?? と思ったら、10年も男塾を影で支配してるらしい。

ということは、留年につぐ留年で、卒業できない落第ボーズだ。

マカロニほうれん荘」のキンドーさん(花の乙女)が40歳だったから、大豪院邪鬼さまも、それぐらい高校=男塾に居座るつもりかもー。

魁! 男塾
ブログ『大豪院邪鬼という男』より。おめーは奈良の大仏か?

それにしても、このコマ、1980年半ばの連載中に、少年ジャンプの2ページ見開きでドォォォンと目にした時は、吹っ飛んだわ。
それ以前もたいがい「あり得ない!!」設定で目が点になったけど、この見開きの衝撃は一生の思い出に残るほど(笑)
あの「北斗の拳」のラオウでさえここまでデフォルメされなかったものを、宮下あきら先生ったら、大まじめで二面もさいちゃうんだもん。

しかも男子学生が5人がかりで巨大ビール瓶をお注ぎするというオチつき。

あれ、サントリー・ラガービールというもっぱらの噂だけど、実際はエビスが期間限定で製造したらしいよ。

*

……と、このように。

『男塾』のどこがスゴイかというと、あり得ない技やあり得ないキャラ、あり得ない理屈やあり得ない展開を次々に持ち出して、読者の疑問や戸惑いを完全無視して、グイグイ話を押し進めるところ。

たとえば、男塾には下記のような荒技が続々と登場するのだが、それを勢いだけで信憑性をもたせ、あとで鵜呑みにするバカが現れても知ったこっちゃない。

魁! 男塾

その最たるものが、『民明書房刊』。これは100パーセント、宮下先生の想像の産物なのだけど、いかにもなイラストに「古代中国では○○と呼ばれ、闘士のパワーを高めるためにウンタラ、カンタラ……引用 民明書房刊『古代の武闘秘術』」なんて、もっともらしい引用が添えられていることから、真に受ける人が続出。中には本気で「ゴルフのルーツはイギリスだ!」と食って掛かった人もあるそうな。

魁! 男塾
画像元→「デアヒロ」

宮下先生の「口からデマカセ」が高じて、こんな本まで刊行されましたけど。

宮下あきら漫画家生活25周年記念出版! 今こそ明かす民明書房の真実!! 『魁!!男塾』『暁!!男塾』における引用文で広く知られる民明書房。その謎を解き明かし、膨大な刊行書籍文を網羅した日本男子待望の書!! 宮下あきら氏描きおろし実録漫画「大河内民明丸評伝」のほか、大河内氏×宮下氏、世紀の対談「出版界の魁たらん!!」、「民明書房社歌」など完全収録! 男塾ファン必携の企画満載本!

ちなみに似たようなエピソードに、竹宮恵子の『ファラオの墓』があります。
エジプト・ファラオの激動の歴史を描いた物語、随所に「この出来事は『奇跡の砂漠越え』と言われ、今もエステーリア戦記に残る愛の記録である」みたいな引用があるため(壁画を模した『ベスパの戦い』というのもあった)、年少の読者が本屋で「エステーリア戦記」を探し回ることも少なくなかったらしい。

*

そんな感じで、私も連載第一回から楽しみに読み、大豪院邪鬼が出てくる『大威シン八連制覇 (だいいしんぱーれんせいは)』のあたりまで記憶に残っているのだけれど、その後は、車田正美よろしく、話のスケールがどんどん大きくなり、『キャプテン翼』の最終回を機に少年ジャンプも買わなくなった次第。

なんでも、『男塾』には後日談があって、主人公の剣桃太郎が東大→ハーバード大→日本の総理大臣という出世コースを辿るらしく、だとしたら、政治問題の責任者は油風呂の柱にくくりつけられて、国民の皆さんにお詫びするまでフンドシ一枚でさらし者にされるのかも。「アチ、アチィィ~、い、言います、言いますぅ、本当のこと言いますから、だから許して~っ」みたいな。

キャラの名前を覚えるのが苦手な私も、「驚邏大四凶殺」「大威シン八連制覇」だけは一発で名前を覚えて、今も忘れてない。

とにかく、すべてが桁違いにキョーレツ、それでいてユニーク。同時期に連載していた「北斗の拳」が正当派武術マンガなら、「男塾」はまさにコミックの世界であり、白いものも黒と言い切ってしまうハチャメチャな勢いとアイデアこそ、今のマンガに必要なものでは……と思わずにいない。

驚邏大四凶殺 (きょうらだいよんきょうさつ)

男塾最大名物。四人一組で二チームが争うもの。千年の歴史を持つ由緒ある寺院・富士山麓宝獄院(ほうごくいん)を起点に無数の白骨死体が眠る暗魎洞(あんりょうどう)を抜け、砲魂玉(ほうこんぎょく)と呼ばれる巨大な鉄球に足枷で繋がれ、それを転がしながら富士山の山頂を目指す。途中のチェックポイントで各チーム1名ずつ代表者を選び戦う事になる。最終的に生存者が存在する側が勝利であり、覇者には勝彰巻(しょうひょうかん)という巻物が贈られる。

江田島こそが過去三百年唯一の生存者であり、五十年前の昭和25年(1950年)にこれに挑み見事大成就を遂げた。塾の敷地内には命を落とした者の慰霊碑が建てられている。

大威シン八連制覇 (だいいしんぱーれんせいは)

男塾名物と明記されてはいないが、男塾において三年に一度開催される武術大会。中国四川省の八連返天竜の伝説に因み八人対八人で闘う団体戦で、信州長野・海抜二千m八ヶ岳連峰に位置する八竜の長城(ぱーろんのちょうじょう)を舞台に行われる。
大威シン八連制覇 を制するものは男塾をも制する、男塾最大の修羅業行である。前回優勝チームが対戦チームを指名できるようになっており、邪鬼は十年に渡りこの大会を己の権力保持のために利用した。灼赤棒の儀式により戦いは成立し、臆してこれを受け取らねばその場で敗北が決定する。
なお、八対八とされているが実際には二対二のタッグマッチであり、託生石(たくしょうせき)の儀式によりその組み合わせが決定される。ただし参加者側の申告により任意でメンバー変更が可能。

1980年代半ば、バブル黄金期の少年ジャンプがどれぐらい凄かったかといえば、週間の売り上げは600万部越え。

「いい年したサラリーマンが電車の中で朝っぱらからマンガを読んでいる」と世のオジサン達を嘆かせ、「こいつらが日本社会の中核に立つ頃には日本は滅びる」とまで言わしめた(実際傾いてるけど)、それぐらい、みんなが夢中になって読んだ。

当時、連載していた作品といえば、

北斗の拳、キャプテン翼、シティハンター、キャッツアイ、ドラゴンボール(天下一武闘会のあたり)、Drスランプ、キン肉マン、聖闘士星矢、ジョジョの奇妙な冒険(ジョナサン・ジョースターの頃)、シェイプアップ乱、etc。

毎週月曜日に発売だけど、朝一番にコンビニに行っても既に売り切れなんてしょっちゅう。それこそ売り場に山積みになって、それがあっという間になくなるの。

どれもこれも、一回欠かせば、「あの後、どうなってん!!」ってイライラして夜も眠れないくらい(?)盛り上がりとスピード感があったんだな。

今の若いマンガファンに言わせれば、「黄金期のオッサン読者の感性や趣味はイマイチわからん」かもしれないが、そりゃもう出発点からして違うからね。
今みたいに、アニメ化やゲーム化、商品化を意識して作ってるのが当たり前の中で育つとね、本当の意味での「型破り」が体感しにくいけども、オッサン読者のように、手塚治虫や石森章太郎のような正当派マンガから出発し、水島新司や松本零士のようなスケールアップした作品を経て、「北斗の拳」や「男塾」で面食らった体験があるとね、黄金期のジャンプのあの異様な熱気と迫力は忘れがたいものなの。もう一度、作り出そうとしても、もう二度と作り出せない、それは作家に力量がないからではなく、読み手の側に「それとわかる」下地がなくなりつつある──というのも一理あると思うよ。

「日向小次郎を勝たせなかったら、殺す」と高橋陽一にカミソリを送りつけた女の子も、今は中学生の母親。

通勤電車の中で「アターっ」と声を上げそうになった新人サラリーマンも、今じゃ課長か、プロジェクトのリーダー、でしょ?

そりゃ日本も傾くわぁ~~……というより、「面白いものが無くなった」→「月曜日に早起きしてまで買いたいと思わない」→「お金が回らない」という図式で滅びつつあるのが、今の世の中。

その元凶を作ったのが、他ならぬ少年ジャンプ自身だとすれば、便乗商法のツケはあまりに大きかったと言わざるを得ないのではないだろうか。

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Photo : http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q13113140363