6-10 臆病なウミガメ ~今すぐ好意に応えられなくても

ウミガメ

アル・マクダエルの家に一泊したヴァルターは、愛情に満ちた父娘の慎ましやかな暮らしを知る。
今でも彼女に対する気持ちは変わらないが、ウミガメのことを話したいと思った気持ちは本物だ。
彼女が共感してくれたのが嬉しかったことも。

アルは落ち込む娘をやさしく諭すが、自宅に帰り着いた父娘が目にしたのは、砂浜に作られた可愛いウミガメだった。

採鉱プラットフォームに帰り着いたヴァルターは、女性機関士のオリガと食堂で鉢合わせたヴァルターは、独りの身の上をしみじみ語り合う。

少し打ち解けたヴァルターは、「君もパートナーを探せばいい」と促す。
最初は反発していたオリガも「接続ミッションも頑張って。主任会議では異議を唱えたけど、あなたなら上手くやれそうな気がするわ」と快く応える。

引用

WEBに掲載している文章は『第二稿』です。書籍版とは内容が若干異なります。
 今、彼女について、あれこれ考えたくない気持ちは変わらない。
 もしかしたら、彼女の好意には一生応えられないかもしれない。
 だけども、完全には振り切れぬ自分がいる。
 今、彼女に言うべき言葉は見つからないが、あの晩、ウミガメのことを話したいと思った気持ちは本物だ。彼女が共感してくれたのが嬉しかったことも。
 ウミガメの甲羅が完成すると、次に両手、それから両足を作った。
 不器用なウミガメは砂をもぞもぞ掻きながら、海に帰ろうとしている。
 だが、本当にそれでいいのか。絶対に後悔はないのか。
 彼はいったん手を止め、後ろを振り返った。
 三階のルーフバルコニーの向こうに彼女の居室が見える。 
 いつもあそこから海を眺めて、何を想っているのか。
 初めてというなら自分も同じだ。もしかしたら、彼女以上に怯えているような気もする。
 だが、そうやって逃げ回ったところで、何の解決になる? 
 プラットフォームと同じで、ずっと一人の殻に閉じこもって、本当に人生が開けてゆくものだろうか。

<中略>

「元々、MIGエンジニアリング社の上級技師だったの。社長推薦でプラットフォームに派遣され、マクダエル理事長にもすぐに認められて、長年主任を務めてきたわ。口数は少ないけど、仕事熱心で、何事も確実にこなすところが理事長にも気に入られたのでしょう。だけど、今回はそれが災いしたみたい。ずっと前から体調が悪かったのに、ぎりぎりまで我慢するんだもの。せめて私に一言相談してくれたら、あんなことにならずに済んだのに……」
「そういえば、検査の結果はどうだったんだ?」
「朝一番に手術したわ。大腸に良性と悪性の中間ぐらいの腫瘍ができてたの。手遅れにならないうちに摘出した方がいいって。わりと簡単な手術だったそうよ。五年生存率は九〇パーセント以上ですって」
「それなら安心だね」
「でも、海の仕事は止めた方がいいって。年も年だし、これを機に引退するそうよ」
「だが、独りの老後は大変だろう」
「その点は大丈夫。ブライト専務が『エデン』という保養施設の入所手続きをして下さったそう。今日もお見舞いに来られて、ワディも感激してたわ。そのことで、さっき本人から二度目の電話があったところよ」
「もうそんなに回復してるのかい?」
「腫瘍といっても小指の頭ほどだし、内視鏡を使った簡単な手術だから、夕方には起き上がれたそうよ。それで、あなたにも御礼を言って欲しいと伝言があったの。でも、私はまだショックから抜けきれないわ。ずっと側で見てたのに、あんな風になるまで全く気付かないなんて……」
「鉄のように頑丈なんだよ。君にも心配をかけさせまいとして、必死に踏ん張ってたんだろう」
「あんなに気張ることなかったのに。人間、頑張りすぎて鉄みたいに硬くなると、案外、ぽきっと折れてしまうのかもしれないわね。私も機関部では本当にお世話になったから、何かの時はいつでも力になるつもりだったけど、肝心な時に役に立てなくて本当に情けないわ。『エデン』に行ったら、ちゃんとお世話してもらえばいいけど」
「君も情け深いね」
「お互い、独りだもの。困った時は+お互いさまよ」  
「君のご両親は?」
「両方とも健在よ。父はもう七十歳だけど、トリヴィアで小さな機械工場を営んでるわ。船舶エンジンの部品を作ってるの。母は既にリタイアしてるけど、地域の婦人活動に精を出して、毎日楽しくやってるわ。あなたのところは?」
「母がマルセイユにいるよ。父はずいぶん前に亡くなったけど」
「じゃあ、淋しいわね」
「もう慣れたよ」
「あなたもワディと同じ事を言うのね。でも、淋しさなんて慣れるものかしら。いくつになっても、人間が独りでいるのは淋しいことよ。私だって、両親が亡くなって、いよいよ自分一人になったらどうなるんだろうと心配せずにいないもの」
「その気持ちは分かるよ」
「でも、考えても仕方ないわよね。先のことなんて誰にも分からないし。ダグもガーフも言ってるわ。ここの独り者は、みな年取ったら『エデン』で同窓会だって。私も『エデン』に行くのかな。いい施設だとは聞いてるけど」
「パートナーを探せば?」
「あたしが? 冗談じゃない、この顔で、この年で、見つかるわけないじゃないの」
「そんなことはない。俺の知ってる女性海洋学者は五十代で初婚だ。四十を過ぎてから運航管理の講習会で再婚相手を見つけた人もいる。ここもどんどん人口が増えてるし、伴侶を求める気持ちは皆同じだ。いろんな集まりに顔を出すうちに、意外と近くに見つかるかもしれないよ。ノエやマルセルはオンライン・デートで知り合ったらしい」

Product Notes

星座のシンボルでは『魚座』が一番綺麗ですね。
占いでも『魚座』の女の子が一番可愛いし。
魚座の女の子に幸あれ(^^)

魚座
Photo : http://www.desicomments.com/desi/zodiac/

魚座
Photo : http://www.zodiachoroscopesigns.com/pisces-zodiac-compatibility.html

魚のガラス細工って、こういうやつ↓ 

ウォールのPhoto : http://goo.gl/1JjRRI