海洋情報部

9-3 面談で相手を怒らせる ~なぜ謝らなければならないのか

2016年10月6日
海洋情報部

ヴァルターは、海洋産業の第一人者であるノボロスキ・マリンテクノロジー社、情報管理部長のと面談する。
改めて海洋情報ネットワークの概念を説き、協力を申し入れるヴァルターに、フェレンツ氏の態度は素っ気ない。

「海洋情報ネットワークの話なら人づてに聞いたよ。プレゼンテーションの録画ビデオも見た。どういう経緯で動きだしたかは知らないが、勝手にあんな構想をぶち上げてもらっては困るよ」
 まるで自分たちが情報行政の目付役と言わんばかりの口調だ。
「それは、俺のアプローチの仕方がお気に召さないということでしょうか、あるいは、海洋情報ネットワークのアイデアそのものに問題があるのですか?」
と、こちらも受けて立つように返した。
 するとフェレンツはカニのように胸の前で両腕を組み、
「気に入る、気に入らないの問題じゃない。君のしようとしている事は越権だよ。すでに海上安全局や区政の情報サービスが十分に機能しているし、トリヴィア政府も海洋開発計画に基づいて観測システムの拡充を推し進めている。第一、君がそんなことを提案しなくても、我々でも似たようなサービスを構築する用意がある」
「ローレンシア海域に限れば、でしょう。俺が提案してるのは全海洋を対象とした情報共有ネットワークです。ステラマリスの『グローバル・シーネット』に類似したサービスと言えば、あなたもお分かりでしょう」
「知ってるさ。だが、あれと同等のものを構築しようとすれば、現在の観測システムを基礎から見直す必要がある。それだけでも億単位の出費だよ? 第一、島もない、飛行機も滅多に飛ばない、ローレンシア海域の裏側の海象情報をリアルタイムに提供して、どんな利益が得られるというんだ。もちろん、その科学的意義は分かるが、他に優先されるべき事はたくさんある」
「今すぐ必要なくても、将来を見据えて準備を進めることは決して無駄ではないでしょう。それに、ローレンシア海域の裏側は何も無いように仰いますが、それはただ単に調査が入ってないだけで、精査すれば意義深い自然現象が幾千と見つかるはずです。その中には、アステリアの気候や海象に大きな影響を及ぼすものもあるでしょう』
「それで君がイニシアチブを取る理由は何だね」
「誰も手を挙げないからです」
 彼が臆面もなく答えると、フェレンツも鼻の穴を膨らませ、
「それなら専門家に任すんだね。君は潜水艇のパイロットだろう。海に潜るのが専門で、調査分析・データ管理は職能ではないはずだ。それとも、前にこういう仕事を手掛けた経験があるのかね」
「経験がなければ、やってはいけませんか?」
「経験とは信用だよ。そして、君には信用に足る実績も資格もない。突然やって来て、『あれも出来ます、これも出来ます』と大風呂敷を広げられても、どうやって信用しろと言うんだ」
「そうかもしれません。しかし、現場の隅々まで知る者が何の問題意識も持たず、問題に気付いても指一本動かさないなら、新人だろうが素人だろうが、自ら動くしかないでしょう」
「君の考えは立派だが、全ての企業がこういう事に快く賛同するとは思わないで欲しい。だいたい企業の情報管理に携ったこともない人間に何が分かる? 君は何にも属さないから、いくらでも無責任なことが言えるんだよ」

結局、相手を怒らせたまま、面談は終わってしまう。

先方の不満はすぐにアル・マクダエルに伝えられ、小学生のように訓戒される。

「まさか、いい年した社員にこんな事を言って聞かせねばならないとは夢にも思わんかった。お前、潜水艇のパイロットをしていた時もこんな態度だったのか」
「それとこれとは話が別だ。パイロットの時は一度だって相手に言い返したことはない」
「じゃあ、なぜ今回に限って喧嘩腰になる」
「俺は喧嘩などしてない」
「お前がどう思おうと、相手が『喧嘩』と取れば、それは喧嘩なんだ。一から十まで馬鹿正直に物申すことが美徳だとでも思ってるのか」
「それで、俺にどうしろと?」
「謝ってこい」
「『謝る』?」
「それ以外に方法があるか」
「なんで俺が謝らなきゃならないんだ。最初に人を小馬鹿にしたのはあっちだぞ」
「だから自分には非が無いとでも言いたいのか。悪いことをした覚えがなくても、時と場合に応じて自分から頭を下げるぐらいの度量をもて。相手に謝罪したからといって、何を失うものがある?」

「阿呆らしい。そんな心にもないことを俺に言えと?」
「有るか無いかの問題じゃない、いかに相手を懐柔して、己の目的を達成するかだ。氏の人間性がどうあれ、情報管理に関してはお前よりはるかに知識もキャリアもある。態度が気に入らなくても、相手の知識やノウハウを盗むぐらいの気宇を持て。馬鹿の振りをする世知もないなら、誰かの後ろでおとなしくしてろ」

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Product Notes

Leopardのモデルは言わずとしれたアレです。。
やはり売り場で眺めて、「欲しい!!」と思わない人はないでしょう。
Windowsのパソコンなんて、芋に見えるよ……。

私も一時期、乗り換えを真剣に考えたことがあったけど、一番大事なアプリケーションがMACでは動作しない為、断念せざるを得ませんでした。

PCの使い方を見れば、相手のスキルのみならず、理解度も人柄も伺い知れる、というのはホントです。
今の時代、自分の分身ですね ~(´∀`~) 私も一番お金をかけて、一番大事にしています。

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こういう人も少なくないのではないかと。

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Photo : https://goo.gl/BE7WS4

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