5-5 潜水艇と深海の接続作業

ヴァルターは潜水艇プロテウスの整備を手掛けるフーリエから機材に関する説明を受ける。

「『機械の接続』といえば大層だが、一つは管の口と口を合わせて、セレクタスイッチをOFFからONに切り替えるだけ。もう一つは、大人の掌ほどのプラグを差し込んで、ケーブルを繋ぎ替えるだけだ。多くの部品は接合した瞬間に自動的に回転して、凹凸がガッチリ嵌まる仕様になっている。複雑な操作は何一つない。若いオペレーターでも実験プールで半時間とかからずやってのけた」

「だが、実験プールと深海は異なる」

「それはその通りだ。だが、この一世紀、ステラマリスの石油リグでも水深数百メートル下で無人機を使って同様の操作をしているが、事故が起きたことは一度もない。高電圧リアクターだって、海上のオペレーションルームで主電源をONにするまでは通電しないんだ。まさかお前の存在を無視して、海中で丸焼きにはせんだろうよ」

「丸焼きになる前に、電気ショックで即死すると思うが」

「真顔で反論するなよ。お前も生真面目だな。どれ、試しにオレが実演してやろう。ここにあるのはプロトタイプの残骸だが、現在の重機や揚鉱管にインストールされている部品とほとんど形状は変わらない。オレがマニピュレーターでちょっちょとネジを締めて見せれば、お前も納得するだろう」

その過程で、ヴァルターは、アル・マクダエルが閉所恐怖症で、自費で建造した潜水艇に一度も乗ったことがない事実を知る。
上から耐圧殻のハッチを閉めて、仕返ししたいと言うと、フーリエは、厳しいのも愛情表現だと説明する。

「一台欲しくなった……って、一二〇億エルクだぞ?」
「なんだ、お前、知らないのか。あの人の個人資産は推定八兆エルクと言われている。トリヴィアの長者番付の常連だ。あの人の百億エルクは、オレ達の一千万ぐらいの感覚だよ。ちょっと奮発して高級スポーツカーでも買うような気分だ」
「真面目に働いているのが馬鹿らしくなるな」
「そうでもないさ。稼ぐ分だけ、人一倍努力してる。あれだけ率先して動けば、誰も文句は言えない」
「でも、閉所恐怖症なんだろう?」
「そうだよ。オレもコンソールを改良した時に『一度、どうですか』と誘ったが、ハッチから中を覗いただけで満足してた。本当に怖いみたいだ」
「じゃあ、耐圧殻におびき出して、上からハッチを閉めれば愉快なことになりそうだな」
「お前も残酷なことを考えるなぁ」
「いつもぼろかすに言われてるんだ。これぐらい復讐の範疇にも入らない」
「それは愛がある証だ。何の関心も無ければ、一日寝てようが、悪態つこうが、何も言われない。あの人に全力で叱られるなんて、お前、前途洋々だぞ」
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Product Notes

自分たちが日常的に利用しているエネルギーが、どこから、どのように採取されているか、いちいち考える機会も少ないと思います。
昔は「石油」といえば中東でしたが、北海やメキシコ湾の海底から採取される石油量も半端ない。
『BP』も欧州では超大手です。
この分野では、海外企業が二歩も三歩も先に行ってます。
↓ これは石油流出事故のオペレーションを説明しています。
採鉱プラットフォーム
Photo : https://goo.gl/Cp4XYk

海底深くから石油を輸送するライザーパイプ。
水深1000メートルの壁を越えて、1500メートル、2000メートルと、まだまだ続きそう。

ライザーパイプ 採鉱プラットフォーム
Photo : https://goo.gl/jvTFuM

海中の接続作業は、こういう感じです。

海洋関連のイベントで欠かせない超水圧の実験。
「なのに、深海魚は、どうしてペタンコに潰れないんですか?」「それはね……」
素朴な疑問から科学する。

Offshore Platform(沖合のプラットフォーム)のデザイン。

採鉱プラットフォーム
Photo : ウォールのPhoto : http://goo.gl/tWm4ow

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