ミッション開始

5-12 クラゲと月夜の海賊 ~庭園の語らい

2016年9月9日

ヴァルターとリズは夜の庭園で落ち合うと、ベンチにかけて静かに語り合う。
重役会議で赤恥をかき、プライドを傷つけられた彼も、リズの優しさに心を癒やされる。

「プレゼンテーションが上手だと聞いているわ。エンジニアリング社のオイラー副社長も褒めておられたわよ。来たばかりで、あれほど理路整然と自分の考えを説明できる人もないと」
「アイデアだけだ。具体策まで提示できたわけじゃない」
「そのアイデアさえ、普通の人には思いつかないのよ。アイデアを軽く考えないで。全ての源泉はアイデアだと、父もいつも言ってるわ。サービスも、製品も、世の中を良くする施策も、全ては小さなアイデアの種から始まると。今すぐ具体策は思いつかなくても、問題を明らかにし、幾つかの方向を示すだけで、現場は大きく変わるわ。父もあなたのアイデアに期待すればこそ、突然、重役会議での発言を求めたのでしょう。何も無いと分かっている人に、こんな大事を命じたりしないわ」
「父は今日のあなたを見て確信をもったはずよ。私には分かるの。憎まれ役を買ってでも、あなたに気付かせたい事があるのよ」

二人の会話は「好きな魚」の話題に及ぶが、生まれてから一度も海で魚が泳いでいるところを見たことがないリズは、トンチンカンな返事ばかりしてしまう。だが、それもヴァルターには魅力的に映る。

彼の夢は「クラゲを飼うこと」だ。

「あなたに夢はあるの?」
「夢? そうだな――クラゲを飼うことかな」
「クラゲって、中華料理の?」
「そう。前菜に出てくるクラゲだ。死ぬとコリコリして美味しいが、海の中では幻想的だ。海で死んだ命がクラゲに生まれ変わって、永遠に波間をたゆとうような気がする。今度生まれてくる時はクラゲがいい。何も考えずに、ぼーっと波間を漂いながら、海の果てまで旅するんだ」

「どうして飼わないの?」という問いかけに、彼は答える。

「海に出ている間、世話してくれる人がないからだ」

その一言に、彼の置かれた立場や状況を理解し、リズはいっそう心を揺さぶられる。

互いの温もりを感じ合ったその時――。

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Product Notes

クラゲは可愛いですよね。水族館の『クラゲ・コーナー』も幻想的で、見ているだけで癒やされます。

最近は、卓上のクラゲ飼育セットもあって、手軽に育てることができます。

クラゲ

Photo : https://goo.gl/8IGb2B

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