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7-3 揚鉱管の接続とストレインセンサーの取り付け

2016年9月12日
接続

ヴァルターとエイドリアンは慎重に海中作業を進め、揚鉱管と集鉱機のフレキシブルホースの接続に取り掛かる。

 そうしてプロテウスが集鉱機の背面から一〇メートル手前まで接近すると、そのほぼ真上にルサルカの強力なハロゲンライトが見えた。ライトが照らし出すわずかな視界に、集鉱機の白い背面と、機体後部に接続されたアンビリカブルケーブルがはっきり目視できる。
 ヴァルターはエイドリアンの方に向き、
「今から『クアトロ』を発進させる。俺がコントローラーでプロテウスを集鉱機の左サイドに保持するから、お前の方でクアトロを集鉱機まで接近させろ。集鉱機のアンビリカブルケーブルに絡まないよう、気を付けてな」
「了解」
 ヴァルターはエイドリアンと操縦席を変わると、レバーコントローラーと数種類のボタンが付いたコントローラーを持ってカーペットに腰を下ろした。左の覗き窓と操縦席のメインモニターで外の様子を確認しながら集鉱機の左側面に回り込み、集鉱機と同じ高さに位置を保ちながらホバリングした。
 エイドリアンは『クアトロ』のコンソールを操作し、プロテウスの前方に取り付けられたランチャーから発進した。ケーブルに繋がれた四〇センチ四方の無人機が小さなスラスタを回転させながら、まるで空中遊泳のように海中を進んで行くのが見える。
 クアトロにはソナートラッキング機能があり、ソナーが捉えた目標物までの距離と方位を自動的に算出して、前進操作だけで目標物に接近することができる。またコンソールを神経質にいじらなくても、機体を常に水平に保ったり、同じ深度を保持する自動操縦支援機能も備わっており、その点では「大学生でも出来る」というのは本当だ。

ついでストレインセンサーの取り付けに挑む。

 リフトポンプは十二個の球状チャンバーからなるハイドロモーターで、横幅五メートル、縦二・五メートル、高さ二メートルの格子型メタルフレームの中に前後六個ずつ並んでいる。空中重量は一二〇トン、プラットフォームに設置された注水ポンプの作用により、一分間に十五立方メートルの泥漿を組み上げる力がある。
 最初にルサルカが至近距離まで接近し、揚鉱管と水中ポンプのトランジション・ジョイント、ポンプ本体、ポンプ底部とフレキシブルホースを繋ぐコネクターの状態を水中カメラで確認する。
「目視でも、計器の上でも、特に異常はないようだ。そちらに問題がなければ、ストレインセンサー(歪み感知器)の取り付けを開始していいぞ」
 ストレインセンサーは揚鉱管にかかる異常な圧力や衝撃を検知するスティック状の装置で、揚鉱管とリフトポンプのトラジション・ジョイントの上部に取り付ける。揚鉱管の歪み、膨張、振動、温度以上などを検知することで機械の変形・破損、システムダウンといった深刻なダメージを回避するのが目的だ。海中に降下してからセンサーを取り付けるのは、パイプが目標の深度に到達し、海中に静止した状態でインストールしなければ感知器がダメージを受けやすいからだ。
「ノエ、ルサルカの投光器をストレインセンサーにフォーカスしてくれ」
ルサルカが一メートルほど上昇し、右上方から投光器を向けると、あらかじめ揚鉱管に取り付けられている黄色いスチール製のプロテクト・ケージがはっきり目視できた。
 ケージの長さは約九十センチの円筒形で、四本のスチールパイプに守られている。
 ヴァルターはプロテウスを七メートル手前まで近づけると、エイドリアンにプロテウスのコントローラーを手渡し、
「このまま船体を保持してくれ。今度は障害物がないから、それほど神経質にならなくていい」
再びクアトロのコントローラーをONにすると、ランチャーから発進した。
 クアトロがプロテクトケージの前まで接近すると、まず左のアームでスチールパイプの真ん中を掴み、機体を固定する。
 それから右のアームを機体の下方に伸ばし、工具バスケットから黄色いインストールボックスを取り出した。このボックス型ツールの中に細長いセンサーが収納されており、揚鉱管のプロテクト・ケージの中に嵌め込んで、スイッチを入れれば完了だ。

あれほど大騒ぎしながら十五分とかからず作業は完了し、スタッフも安堵する。

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Product Notes

無人機(ROV)を使った海中オペレーションの模様です。参考に。

北海で稼働している石油リグ会社のプロモーションビデオです。
洋上プラットフォームも一昔前は隔絶された世界でしたが、今はオンライン化で陸地のオフィスとリアルタイムに情報のやり取り、機械のモニタリングやオペレーションも現場ではなく、オフィスで完全制御になってきてますから、物理的な距離感は確実に縮まっていると思います。

私の書き方はドロ臭いので、あまり格好よく感じないかもしれませんが、実際はクールです。
プロモーションビデオだから、ハリウッド風の演出も入ってますけどね(^_^;

ストレインセンサーにも色んな種類がありますが、これはあくまで一例として。
水深数十メートルならともかく、数百メートル、数千メートルにもなれば、水圧の破壊力も半端ないですし、鉄パイプは真っ直ぐでも、洋上のプラットフォームと、深海底の重機の位置は必ずズレてきますから、常にポジションを垂直に保ち、なおかつ、パイプの歪みもチェックする、非常に重要なポイントです。

パイプが途中で折れるより先に、洋上のプラットフォームが引きずられて、採鉱システムが激しく損傷する危険性もあるでしょうしね。

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Photo : https://wn.com/subsea_alloy

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Photo : http://goo.gl/Vjc5c4

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Photo : http://goo.gl/7gyeja

海洋調査でも、石油リグでも、とにかく海中というのは暗い。
これは撮影用に横からライトを照らしてますから、まだ明るく見えますが、それでも数メートル先が闇なのは変わりません。
加えて、海中の浮遊物(プランクトンや舞い上がった堆積物)も多いですから、視界は非常に悪い。
場合によっては、魚が機材に絡んでくることもあります。(それをROVが救出するビデオも見たことがあります)

技術も日々進歩していますので、数十年後にはもっと性能の良いライトやカメラが登場するでしょうけど、それでも「暗闇の作業」は変わらないと思います。

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Photo : https://goo.gl/R8Wd9j

海外では女性も洋上プラットフォームで技術者として働いています。一生ものの技能職です。

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Photo : http://www.oceaneering.com/rovs/rov-personnel-and-training/

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