接続

7-1 ミッション開始と潜航準備 一つ一つの航海が心の糧

2016年9月12日
接続

いよいよ接続ミッションが始まる。
リズとアルはコントロールルームのモニターで作業を見守り、ヴァルターは格納庫で潜水艇プロテウスの最後の調整に入る。
今日接続に成功し、採鉱システムが稼働すれば、鉱業においても、アステリアにおいても、歴史的一日となるだろう。

彼の脳裏に、プロテウスに出会ってから今日までの道程が懐かしく思い出された。
配属されたその日、操縦士長に分厚いマニュアルをどんと積み上げられ、「一週間でマスターしろ」と言い渡された。そして、その通り、機能や構造はもちろん、配線の一本一本、ボルトの位置や種類に至るまでつぶさに記憶し、すらすら諳んじてみせると、操縦士長は目を白黒させ、すぐに操縦席に座らせてくれたのだった。

それから何度潜り、何度見つけただろう。
一つ一つの航海が心の糧だった。
だが、それも長い人生のほんの一ページに過ぎない。
これからまたやり直す。
今度はもう少し自然に自分を出せるような気がする。

一方、タワーデリックのオペレーションルームでは、マードックの指揮のもと、揚鉱管の海中降下が始まる。

 まず、ムーンプールのクレーンに吊り下げられた揚鉱用の水中リフトポンプがゆっくり海中に降ろされる。
 高さ四メートル、縦横六メートルの格子型メタルフレームには十二個の球状チャンバーが搭載されている。チャンバーは水圧をかけて揚鉱管に海水の循環を作りだし、管の内部を負圧にすることで海台クラストの泥漿を吸い上げる仕組みだ。
 ポンプ底部の中心には長さ一五〇メートルのフレキシブルホールが取り付けられ、その先端は重錘式のコネクターになっている。これを水深三〇〇〇メートル下で集鉱機と接続するのがプロテウスのミッションの一つだ。
 白いあぶくを上げながらリフトポンプが海中に沈むと、続いて、パイプラックに縦向きに収納されたライザーパイプがハンドリング装置のアームに一本ずつ掴まれ、タワーデリックのパイプラッキング・システムによって縦方向に高く持ち上げられる。さながら筆箱から機械の手で一本ずつ鉛筆を掴み上げるような要領だ。
水深三〇〇〇メートルに到達するのに必要なパイプの数は約一五〇本。単純計算すれば、一時間とかからないが、適宜、作業を一旦停止して、パイプ先端の位置や深度を確認したり、それに合わせてプラットフォームのポジションを調整したり、何段階もの安全確認が行われるため、実際には倍の時間を要する。また、潜水艇や無人機の降下とタイミングを合わせる為、各部署の進行状況を見ながら抽出のペースを調整する必要もある。

揚鉱管がリフトポンプの深さまで降下すると、一旦、ムーンプール直下で揚鉱管の先端とリフトポンプの上部を接続する作業が行われた。使用される無人機は、前回マルセルが用いた『ヴォージャ』だ。水深数十メートル下で接続が完了すると、ヴォージャは揚収され、再び揚鉱管の降下が始まる。今度は先端にリフトポンプが取り付けられている為、揚鉱管の抽出も慎重だ。

潜航開始を前に、セスは息子エイドリアンの様子を見るため席を立つが、リズは「不安な顔を見せて、みんなの気持ちを乱したくないわ」とモニターの前で見守る。

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Product Notes

ライザーパイプ(本作では揚鉱管)のオペレーションを紹介するビデオです。
CGアニメーションですが、イメージの手助けに。

水深3000メートルの海底に到達する『揚鉱管』のイメージはこんな感じです。
山より高いわけですから、技術的にどうよ、という話です。

日本にはオイルリグはありませんから、それを専門とするオペレーション業者もメーカーも目立ちませんが(プラットフォームの設計・建造を受けたり、部品を作っている企業はあります)、海底油田やガスの採掘をやっている国や企業では、オペレーティングや部品製造が一大産業になっています。

私も作中で具体的に数値や名称を出していますが、それが正しいのかどうかは分かりません(^_^;

というか、そんなことが正確に分かるぐらいなら、こんな所で主婦業などしてないです(´д`)

Photo : http://archive.feedblitz.com/261222/~4183532

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