3-13 意匠の盗用と示談書 CADとコピー

『緑の堤防』が再建コンペで二位を勝ち取り、これで住民の声も大きく反映されるだろうと期待が高まったのも束の間。
ヴァルターはロイヤルボーデン社に呼び出され、39年前の土木専門誌に掲載された広告用パースの意匠を盗用したと追及される。

「正直、これほど意匠の似通ったものを『自分の作品』などと主張してもらっては困るんだよ。それに堤防の内側を人工地盤で嵩上げし、全体に緑化して護岸強化する技術はロイヤルボーデン社のものだ。他者が応用する場合は使用許諾料(ロイヤリティ)を支払う決まりになっている。それとも三十九年前の雑誌広告を模すだけなら罪にはならないと思ったかね」

「君は『3Dキャプチャー』という技術を知っているかね。対象物の画像をスキャンして、コンピュータ設計支援のソフトウェアで解析し、基礎フレームを構築する。元々は、自分でマイホームやオフィスビルの外観をデザインしたいというユーザーの為に開発された技術だが、最近では意匠権トラブルの元凶になっている。無知な一般ユーザーが、住宅メーカーのカタログで目にしたパースをソフトウェアに無断で取り込み、基礎の設計データを簡単にコピーできるようになったからだ。それに気付かぬ業者がさらに手を加えて、オリジナルのように完成してしまう。後でメーカーの作品と酷似していることが発覚し、よくよく突き詰めてみれば、3Dキャプチャーが原因だ。時には有名建築家の作品までコピーされることもある。この問題は、どこまでが応用で、どこからが意匠権侵害に相当するのか、法律の専門家でも線引きが難しい。だが、この便利な機能が、『オリジナルを真似て、適当に手を加えれば盗用には当たらない』という誤った認識を広めているのは確かだ。そこで質問だが、君も本当は3Dキャプチャーで当社の広告用パースをGeoCADに取り込み、基礎フレームを描出したんじゃないかね。その後、色やテクスチュアを微妙に調整して、似て非なるジオグリーンを作り上げた。多少手を加えれば盗作には当らないと踏んでね」
「そんなことは断じてありません。俺は本当に新規キャンパスから立ち上げたんです。基礎フレームも自分で一本一本、線を描きました。キャプチャーなんて考えもしません。それにジオグリーンの技術を取り入れたパースは他の会社だって使っています。『緑の堤防』が意匠の盗用というなら、世界中、コピーだらけじゃないですか」

「穏便に済ませようじゃないか。今、ここで盗用した事実を認めるなら、訴訟は撤回し、以後は不問とする。これが示談書だ。条件は、意匠の盗用を認め、『緑の堤防』を自身の作品として二度と世に出さないこと。そして、その事実をデ・フローネンのウェブサイトで謝罪することだ」

告訴すると脅かされ、仲間を庇う気持ちで、訳も分からず示談書にサインをしてしまう。

失意のどん底でアパートに帰り着くが、ヤンの口から聞かされたのは思いがけない言葉だった。

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ウォールのPhoto : https://www.netgains.org/cad-services-india/

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