オランダ人船長

3-12 プレゼンテーションと故郷再建の願い

2016年9月6日

『緑の堤防』は地元民の支持を得て、順調に予選を勝ち抜く。
そして、最終審査のプレゼンテーション。
「lactor et emergo (わたしは闘い、水の中から姿を現す)」のゼーラント州の記章を胸に、ヴァルターは全力で故郷再建の想いを語る。

 他にも、年配の夫婦、学生、家族連れ、車椅子の人まで、見守る顔ぶれは様々だ。
 その一人一人がどんな願いを抱いているか、壇上からは窺い知れない。
 だが、これだけは言える。
 元住民が帰りたい場所はただ一つ。
 皆の愛したフェールダムだ。
 堤防と運河に守られた、緑の干拓地。
 どんな小さな運河にも先代から受け継がれた治水の技術があり、一アールの農地にも手を掛けて育てた歴史がある。
 フェールダムの人々が堤防や緑を愛するのは、単に田舎暮らしが好きだからではない。
 そこに自身のルーツを感じるからだ。
 何処へ行こうと、遠く離れようと、彼が決して故郷を忘れないように。
「フェールダムの干拓地を新たに作り替えるのも有意義かもしれません。けれども、多くの元住民は以前のフェールダムに帰りたがっています。たとえ現在の住まいが遠く離れていても、二度と戻ることが叶わずとも、自分の愛した故郷が変わらずそこに在ることが心の支えなのです。何もかも洪水に押し流され、町として完全に壊滅したとしても、どうして『死に絶えた』などと諦めがつくでしょう。目の前に愛した我が家はなくとも、チューリップの咲く庭、スープの匂いが漂うキッチン、父が仕事をしていた書斎、サッカーに興じたグラウンド、全て鮮やかに記憶に残っています。以前と変わらぬ姿を取り戻すことがどうして時代遅れであり、不経済だと言い切れるのか。故郷は自身の血肉であり、人生の礎です。我々が求めているのは、心が回帰する場所なのです。どうか思い出して下さい。『この世界は神が創り給うたが、ネーデルラントはネーデルラント人が造った』という諺が我々の社会の背骨です。一緒に再建しましょう。Luctor et Emergoを合い言葉に」

彼らの『緑の堤防』は地元住民の圧倒的な支持を得て、堂々の二位に立つ。

だが、意外な落とし穴が待ち受けていた――。

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Product Notes

幾度となく大水害に見舞われてきたオランダの沿岸地帯。

洪水
Photo : http://goo.gl/2zSzoC

干拓の技術を分かりやすく伝える。

オランダ 干拓地
Photo : http://www.iamexpat.nl/expat-page/the-netherlands/the-dutch-and-water-in-the-netherlands

オランダ 干拓地
Photo : http://www.heardutchhere.net/duoutdoors.html

ウォールのPhoto : http://bridge2more.com/doing-business-in-the-netherlands/

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