ファルコン

8-1 鉱山会社の進出 海洋資源調査権

2016年10月2日
ファルコン

ファルコン・マイニング社が北方のウェストフィリア近海に、広大な海洋資源調査権を申請したニュースが駆け巡る。
予想以上に早い動きに、採鉱プラットフォームにも動揺が走る。

「アステリアは経済特区だから、企業活動には細かな規約がある。『税制の優遇や公的扶助を得られる代わりに、事務所や倉庫は区内に設立しなければならない』「最初の一年間で収益の数パーセントから数十パーセントを投資をしなければならない』『技術系従業員の四十パーセントをトリヴィア領内から雇用しなければならない』等々。投資や減税目的にペーパーカンパニーを作ったり、用地を買い占めたりするのを防ぐためだ。そこでアステリアに進出するための手っ取り早い方法の一つに『海洋資源調査権』がある。調査するだけだから、特区法で定められた投資も、企業監査も、従業員の雇用も必要ない。期限の半年間、申告した条件で調査を行い、そのデータを開発局に提出するだけだ。調査に必要な施設や設備は比較的自由に持ち込めるから、とりあえず権利を取得して、その間に足場を固めればいい。マイニング社も調査の拠点としてローランド島にオフィスを開設し、ウェストフィリアの資源調査に取り組む傍ら.事業拡張の準備を進める手はずなんだろう」

「だが、そんなことをすれば、誰でも調査権を掲げて進出できるじゃないか」

「民間企業がアステリアで海洋資源調査権を取得し、調査を継続するには、開発局に『調査費』を上納しないといけない。一キロ平方メートルにつき月額三百エルクだが、調査範囲が千キロ、二千キロにも及べば、上納金だけで月数百万になる。それを半年、一年と払い続けることを考えれば、資金のない中小企業には到底無理だ」

「なるほど」

「自治領政府も馬鹿じゃない。本当に実力のある企業だけがアステリアで産業活動できるようにフィルタリングしてる。政府にしてみれば、たとえ海洋調査だけでもマイニング社が進出してくれるのは有り難いだろう。調査船を一隻走らせるだけで税収になる」

ヴァルターは改めてトリヴィアとネンブロットの鉱業の仕組み、ニムロディウム採掘にまつわる社会問題、ファルコン・マイニング社の実態を調べる。

トリヴィア最大の資本グループ『ファルコン・グループ』の基幹を成す鉱山会社で、採鉱から販売まで市場の九割を独占している。
 グループは、代々、ファーラー一族によって運営され、彼らの閨閥は政財界、メディア、学術、芸能にまで広がっている。  
 とりわけ三十五年の長きに渡りマイニング社の社長として采配を振るい、グループ会長としても威権を誇示してきたドミニク・ファーラーの存在は絶大だ。鉱業行政への干渉は言うに及ばず、産業や科学界まで意のままに動かし、(インターネットの書き込みが真実ならば)闇に葬り去られた科学者や弁護士、鉱業局の調査員、社会活動家、ジャーナリストなどは数え切れないという。ニムロディウムという宇宙文明の黄金を手中に収め、世界の意のままに操る姿は、さしずめ権力の指輪を手にした地底のアルベリヒ*1である。
 ただ、ここ数カ月は公の場に姿を見せず、後継者争いや健康問題が取り沙汰されているが、真偽は定かではない。
 マイニング社のホームページを見る限り、「高度な採鉱技術で宇宙文明の基礎を支え、社会的使命を果たす」というイメージしかないが、労働者の支援団体やジャーナリストのルポルタージュ、匿名の告発サイトなどを見る限り、基準値を超える汚染水の垂れ流しや違法な廃棄物の投棄、不法就労者の斡旋、環境調査データの改ざんなど、どこからも罪に問われないのが不思議なくらい杜撰で無責任である。
 また採掘現場の写真撮影は企業機密のため一切許可されてないが、元従業員による告発や、鉱業オンブズマンが内密に行った調査によると、場所によっては大半が人力によって採掘され、その様はさながら『暗黒時代の奴隷労働』と指摘されている。より良質なニムロイド鉱石を得る為に、坑道はアリの巣のように岩盤の奥深くに入り込み、重機も侵入できない。そこで作業員は二十キロもあるドリルマシンを担ぎ、何時間もかけて固い岩盤を掘削するのだ。猛烈な土埃や振動などにより、呼吸器や神経系の障害に冒される作業員も後を絶たず、中には『作業中の事故死』として片付けられる例も少なくないらしい。

ファルコンの陰に怯えるリズに、ヴァルターは「海底鉱物資源の採掘など、簡単に真似できるものではない」と言い聞かせる。
そして、彼女とMIGのため、防波堤を作ってやることを約束する。

「『海洋資源調査』と一口に言うけどね、野山を探査するのとは訳が違うんだよ。地上のことなら観測衛星でおおよその地質も把握できるけど、海はたとえ水深数メートルの沿岸でも、特殊な音響調査機や水中カメラを使ってデータを取得しないといけない。地質サンプルを採取するにも、ツルハシで地面を掘り返すのと同じようにはいかないんだよ。そんな技術的問題が山積する中で、直ちに水深数千メートルの世界が把握できると思うかい? 俺は断言してもいい。どれほどの資本、どれほどの技術をもってしても、海底鉱床のターゲットを絞って本格的に採鉱に乗り出すには最低でも五~六年はかかる。たとえ有望な鉱床が見つかっても、採鉱システムの出来が悪ければ、無価値な石の塊を吸い上げるだけで一銭の得にもならないだろう。海台クラストの採鉱に成功したのは運も大きい。あれだけの人材を揃えるだけでも、企業にとっては大変な投資だよ」

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Product Notes

私たちが日常的に使う製品の原料がどこから来ているか、時に関心をもって、考えることが肝要。
こういうのを見ていると、現代人は存在するだけで罪深いような気もします。

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Photo : https://goo.gl/T5Oef7

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