ファルコン

8-5 海洋情報ネットワークの概念とメリット

2016年10月3日
ファルコン

産業振興会の役員や海洋行政の担当官、コンサルティング部の営業主任や沿岸調査会社の役員など、様々な分野の専門家を集めて、「海洋情報ネットワーク」のプレゼンテーションを行う。

「それにはまず海洋調査データを社会資源として活用する必要があります。誰もが手軽に利用できるオープンデータ・システムを提供し、海への理解を深めるのです。提供する調査データは、海洋図、潮流、潮汐、波高、水温といった汎用情報から、海底地形、海底地質、海水分析、海底ボーリングなど、研究開発に必要な専門的データまで多岐にわたります。これまで行政や企業、学術団体などが個別に保有するデータを一元管理し、ポータルサイトを通じて、誰もが手軽に参照できるデータベース・システムを構築するのです」

 それから彼はネンブロットの鉱業が寡占や汚職など違法行為の巣窟となった経緯を語った。
 一つでも多くの企業を誘致したいが為の先願主義の探鉱権付与や、猫の目のように変わる鉱業法、鉱山に関する情報を一部の企業連合が「機密」を理由に独占し、排他的な環境を作り出したことなどを例に挙げ、

「アステリアはその逆を行く。社会資源としてのデータ共有によって、海の状態や可能性を広く知らしめ、公正と透明性をもって優良経済特区に育てます。大航海時代、海洋国家に発展した国々は、造船技術だけでなく、正確な海図を作成する知識や調査力にも長けていました。その海図に相当するのが海洋情報ネットワークです。それは単なる検索サービスにとどまらず、企業、研究者、行政官、一般ユーザーが分野を超えて意見交換したり、グループワークを行う場も提供します。他にも様々な応用が可能でしょう。ここには国境も領海も無いからこそ、より柔軟性に富んだシステムが構築できるはずです。こうした情報サービスは直ぐさま需要を呼び込んだり、テーマパークで観光客を集めるような訳にいきません。けれども、アステリアの海に何が有り、どんな可能性が秘められているか、多くの人が正しく理解することによって、海上の安全やマナーの向上、人材の育成や新規産業の創成など、海洋都市の基盤となるはずです。アステリアも次のステージに上ろうとしている今、真に必要とされるのは海洋都市としての通念であり、指針ではないでしょうか」

「だが、予算はどうするんだ」
「一つのモデルケースとして、ステラマリスのパシフィック・マネージメントシステムは、年間約十八億七千万エルクで運営されています。その六十パーセントは公的基金、残りの四十パーセントはユーザーの年会費、システム利用料、データ売買の中間手数料、寄付金などによるものです。人員についても、登録される情報は、情報提供者がそれぞれに収集、加工、管理しますし、いったんデータベースシステムを構築してしまえば、その後はメンテナンスが中心になり、維持費も人件費も多くを必要としません。パシフィック・マネージメントシステムも、運営に携わる主要スタッフは十四名、IT技術は二社の民間会社がサポートし、個々の情報の編集や管理は情報提供者に委ねられます。サービスのガイドラインを明確にし、ユーザー、情報提供者、総合管理者のフィードバックを充実すれば、少数のスタッフで膨大なデータを効率よく管理できるはずです」
「万一、システムの構築に失敗し、利用者も少なく、投資に見合った公益が得られなかった場合、どうするつもりだね」
「いきなり大きなシステムを構築する必要はありません。それこそ、現在海上安全局が無償で提供している汎用情報サービスを徐々に拡大するのも有りだと思います。従来の考え方と違うのは、これまで各機関が独自の判断で蓄積し、活用してきた調査データを一元管理し、有償、あるいは無償で閲覧できるポータルサイトを通じて、縦横に活かすという事です。鉱物に限らず、海洋資源をどれだけ活用できるかは、ひとえに調査データの有効利用にかかっているのではありませんか」

「大航海時代、海洋国家の王侯がこぞって船を送り出し、海洋を調査させたのは、それが繁栄の基礎になることを理解していたからです。今は大航海時代とは全く異なるかもしれませんが、アステリアも海洋情報ネットワークという『海図』を描くことで幾多の可能性が開けるはずです。物事を停滞させるのは無知に他なりません」

「データベースが提供する情報の種類は、大きく分けて二種類。海流、水温、海上気象、潮位といった自然科学的な情報と、港湾・沿岸の利用状況や船の運航、海洋開発計画や研究機関といった社会的な情報です。そこで、行政機関、民間企業、学術団体など、将来ユーザーになりそうなものを対象にヒアリング調査を行い、どんな情報を、どのような形で利用したいか、ニーズを把握します。たとえば、海況に関する情報も、海運業者の知りたいデータと、観光業者の知りたい事は全く異なります。誰が、どんな情報を必要としているかを把握し、システムのアウトラインを明確にするのが第一歩です。また、それに並行して、IT面の環境を整えます。サーバーは誰が管理するか、データシステムはどのように構築するか、ポータルサイトはどのようなデザインにするか、購入手続きはどうするか、システムの基礎が整い次第、徐々に情報提供を開始し、利用者のフィードバックを参考にしながらサービスを拡充します」

様々な質問に対し、ヴァルターは「いつの時代も、最後に世界を動かすのは大衆の良心」と締めくくる。

PDFで読む

右上部のアイコン『ポップアップ』をクリックすると、ブラウザの全画面にPDFが表示されます。

サンプル版につき、保存や印刷はできません。よろしくご了承下さい。

ファルコン   フルスクリーンで見る


Product Notes

海上保安庁の一部門として、『海洋情報クリアリングハウス』が存在します。

ファルコン   ファルコン

日本もいろいろやってはいますが・・
アメリカの海洋機関とはビジュアル的にもかなりの差が。。^^;
どこの組織が、何をやってるのか、知ってる人の方が少ないでしょう。
もっとお金をかけるべきところに、かけて、
こういう分野こそ日本が世界に先駆けてやればいいのにと思うけども。

ファルコン   ファルコン   ファルコン

ファルコン   ファルコン   ファルコン   ファルコン

Photo : http://www.noaa.gov

You're here


Navigation

You Might Also Like