商売のコツは大塚家具に学ぼう

今は商売を始める方がリスキーで、サラリーマン志向の方が大半だと思いますが、人生何が起きるか分からない。
いつ、自分が物を売る側に回るか、神様にも誰にも分かりませんので、若い時分からビジネスや政治のニュース、おっさん系の雑誌によく目を通しておくと、いろんな面で役に立つと思います。

自分が実際、商売を始めることはなくても、旦那や家族がそういう立場に立つかもしれない。その時に、いろいろ相談に乗ったり、身の振り方を考えることができますから。(特に女性はこれが一番大事。年収1000万円のオトコと結婚できた! で胡座をかいていると、痛い目に遭います)

とはいえ、専門的に勉強したのでなければ、理解するのが難しい事もある。

一体、何をどう判断すればいいのか、一般人には訳が分からないことばかりでしょう。

そんな時におすすめなのが、『生きた事例』です。

これほど不況だ、貧困だ、と騒ぎながらも、確実に業績を伸ばしている会社、大成功とまではいかなくても、きっちり結果を出している商品など、いろいろありますね。

カルビーは快進撃で、なぜコイケヤはいまいちなのか。

なぜパピコより、ガリガリ君の方が話題になるのか。

なぜダイエーより、近所に新しくできた生鮮野菜の店に主婦が殺到するのか。

なぜこのテナントに入居した飲食店や小売店は次々に閉店の憂き目に遭うのか。

普通に街を歩いているだけで参考になる事例はたくさんあります。

有名な経済アナリストより、「この道30年で仕入れやってます」という近所のおっちゃんの方が遙かに敏感に斜陽を嗅ぎ取っていることもある。

そういう話の方が、一流の経済誌よりはるかに面白かったりするし、ほんと『商売の世界』って、興味深いですよ。それがまた、どこかしら、自分の生活に繋がってきますしね。

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私も、ちょびっとだけ関わっているのですが、最初にそれを始める時に一番重要だったのが、「誰を顧客層に定めるか」「価格をどう設定するか」でした。何でもそうだと思いますが、それで半分、商品の運命が決まってしまうところはあります。何故かといえば、シャネルやヴィトンのような、高いブランドイメージが庶民レベルまで降りてくることはあっても、ガリガリ君がベルギー王室御用達になることは、まあない(ガリガリ君が悪いわけではなく、あくまで分かりやすい喩えです)。上から下に移行するのは簡単でも、下から上に持ち上げるのは至難の業だからです。

そんでもって、今は「上か、下か」の時代になりつつある。

昔、主流と言われた、「毎月の手取り20万~30万」「月に一度は洒落たレストランでお食事♪」「年に一度は海外旅行」「そろそろ車でも買い換えるか」「冬のボーナスでMax Maraのコートを買うのよ」みたいな層がどんどん減少して、今は定価980円のTシャツでも、「買おうか、どうしようか」と足踏みするような層が増えている。将来のことを考えたら、怖くてお金を使えない、物も極力買わない、流れになっていくのは、当たり前ですよね。ちょっとそこいらに出掛けるのだって躊躇われるでしょう。喉が渇いた、小腹が減ったで、100円、200円とお金を使うからね。

そういう流れを見ていると、「物を売るなら安い方がいい」「安くすれば、皆さん、買ってくれる」と思うかもしれない。

でも、対岸には、信じられないような金持ちがまだまだ存在して、その人たちが景気よくお金を使ってるんですよね。

たとえば、○○百貨店の駐車場には、桁違いの高級国産車や外車がずらりと並び、一本数十万円もするワインをカートいっぱいに買っていく客がいる。どこのフロアの、どの商品も、何万、何十万という値段がつき、庶民には目玉が飛び出すような高額ばかり、でも、その百貨店は一度も赤字を出したことがない。不況だ、貧困だ、どこ吹く風で、店舗を拡張し、なんちゃらコーディネーターだの、フランス直輸入だの、ゴージャスな商売をしている。本当にいよいよ国自体がヤバくなったら、こんな商売、成り立たないですよ。

私も今は日本より三段階ぐらい下の中流国(ちょっと前まで下層と言われてた)の地方都市に暮らして、「わー、まじで国庫に予算がないんだー」というのを目の当たりにしてますから、つくづく思うんですけど、日本って、本当に奇妙なお金の回り方してますよ。金がない、とか言いつつ、一方でとんでもないハイレベルな世界がある。本当に国自体が貧しければ、そこのトップの金回りもたかが知れてますけど、日本はそうじゃないですからね。

ゆえに、最初から下に標準を合わせて、何でも安売りの方向に走れば、皆さん買ってくれる、というものでもないです。

(ここからは、あくまで商売の話として聞いてね)

何故かといえば、貧乏人が使えるお金の額などたかが知れてる。働いても、働いても、お金が貯まらない、むしろ目減りしていくから貧乏人というのであって、彼らはちょっと風が吹けば、たちまち財布の口を閉めて、一銭も使わなくなる。大好きな漫画も、音楽も、日々の食糧さえも、買うのを止めてしまう層だからです。

そういう層に、買ってもらうことを期待して商売をしても、これほど当てにならない購買層もない。

たとえば、「若者に人気があるから」を売り文句にしても、今の若者に、将来の憂いも躊躇いもなく、好きなモノにお金を注ぎ込める層がどれだけいるか、という話ですよね。

あの手この手でアピールしても、買わないものは買わない、というより「買えない」のだから、やるだけ無駄とは言わないけれど、甘く見ない方がいい。

そして、音楽や映画のように、ひとたび「無料」(もしくは超安価)で手に入れる方法を知れば、再び「金のかかる世界」に連れ戻すのは難しい。なんだよ、金とるのかよ、と、すぐどっかにいっちゃう。

それに人気があるのは「無料だから」(もしくは実際の価値よりはるか下)であって、現時点での支持率を真に受けて、「今これだけ客がいるのだから、300円ぐらい課金してもええやろ」と皮算用すると、これもまた痛い目に遭う。

貧乏人相手の商売って、非常に流動的で、不確かです。

なんでもかんでも安売りすれば、人は有り難がって買うだろう、と思っていたら、いつか期待は裏切られるでしょう。

ひるがえって、金持ち相手の商売はどうか。

彼らが最重要視するのは、社会的信用であって、値札ではありません。彼らが欲しいのは「モノ」そのものではなく、「精神的満足」であり「プライドの充足」であり「もちつもたれつ」の阿吽の呼吸だからです。その中には贔屓にしている店舗や従業員への愛情も含まれます。

10万円が15万円に値上がりしても、そこに「満足」がある限り、彼らは買ってくれる。

もうね、値札の問題じゃないわけ。

どこぞの会社が倒産して、庶民はアップアップしてます、も関係ないわけ。

いわばコンスタントにお金を落としてくれる、優良顧客です。

その代わり、何かで信用を失った時にはバッサリ切られますけどね。

そんでもって庶民の目からは、金持ち世界など、到底伺い知れない。

こんな高い置物や自転車を買う人間がおるんか、と思うけども、そこに商品がある限り、それを買い求める人間はどこかにいる。

前に「まんだらけ」というお店から何十万だかのロボットの玩具が万引きされたと話題になりましたけど、あれも一つの事例ですよね。オタクでも何でもない人が見れば、「そんなブリキのロボットにン十万?」という感覚ですが、世の中には、そんなものでも何十万と支払って手に入れたいと思う人間がいて、それを対象に商売する人がいる。恐ろしくニッチな世界ですけど、案外、こういうのが手堅く長続きしたりする。それもまた商売の妙だと思います。

で。

私が非常に興味深く見ているのが、大塚家具です。

ここは大塚父と大塚娘が全く異なる方針を打ち立て、株主、従業員、顧客を巻き込んでの騒動になりましたが、一応の決着を見て、それぞれの道を歩み始めたところです。

若い大塚娘が、昔ながらの大塚父の方針に疑問を抱き、「ここで舵を左に切らねば」と奮起する気持ちも分かるし、従来のやり方で客と従業員を育ててきた大塚父が「お前の方こそ間違っとる!」と立ちはだかるのも頷ける話。

これはどちらが正しいか否かの問題ではなく、時代の流れの中で「棲み分けが必要になった」という事でしょう。

Adidas と PUMA みたいに、時を経て振り返れば、まったく別々のブランドとして成長を遂げるケースもあるわけですから、それぞれに自身の経営哲学を信じて、今後も研鑽なさればよいことだと思います。

ただ、大塚娘が、大塚父の客層を当てにしていたら、思わぬところで躓くような気はしますけどね。  

お詫びセールで注目も失速、大塚家具・久美子社長の戦略転換は失策だったか

こちらの記事を読んでも分かりますが、大塚父と大塚娘の狙う客層も、アプローチの仕方も、全く異なるものです。

そして、世の中が不況だ、貧困だと騒いでも、何十万だかの家具をぽーんとお買い上げなさる層もまだまだ健在ということも視野に入れないといけない。

そんでもって、客は値札以上の精神的満足を求めている、ということも、ゆめ忘れてはいけない。

商売って、確かに、金とモノのやり取りだけども、それ以上に動いているのは「買い手の気持ち」なんだよね、楽天でパンツ一枚買うにも、数店舗のサイトとレビューを見比べて、「ここなら安心できそう」と、ようやく『買い物カゴに入れる』ボタンをクリックする皆さん!!

ちなみに、私の住んでいる町は、十年ぐらい前は、オーダーメイドの手作り家具が主流でした。

なぜかといえば、日本のような工場も流通も無いからです。ベルメゾンやホームセンターで出来合いの家具を手軽に購入とはいかない。家具屋さんに寸法を測りにきてもらって、部屋や好みに応じた家具を手作りしてもらう。完成まで三週間とか、一ヶ月待ちは当たり前でした。新婚時代も、かなり長期間、スーツケースの暮らしで「家具はまだか!! ベルメゾンなら数日で持ってくるのに!!」とぶち切れ寸前でした。

それでも、あっという間に経済成長して、最近ではIKEAが押せ押せのイケイケ。

こんな店舗が全国各地に出来たら、昔ながらの手作り家具のお店が滅びちゃう! と心配していたら、それはそれで、購買層がずーっと続いているんですね。

なぜかといえば、IKEAの出来合いの家具が必ずしもリビングや寝室にフィットするとは限らない。

どうせ何十年と使うなら、自宅の間取りにフィットしたタンスやチェストやベッドが欲しい・・という方が今も一定数存在するからです。

うちもオーダーメードの洋服箪笥があります。天井いっぱい、壁いっぱい、隙間なく。

私は出来合いの製品でイイと思ってましたけど、旦那いわく、「天井や壁に隙間ができると、デッドスペースになって、物が山積して、掃除が面倒」。確かに、その通りです。

そんでもって、材質、色合い、取っ手の色形まで、自分の好きに選べるのも魅力ですよね。

特に、欧州系は、インテリアへのこだわりが並大抵じゃないですから。(田舎のおばあさんでも、フォークロアな小物で彩られた、すんごいメルヘンな部屋に暮らしていたりする)

IKEAの快進撃を尻目に、いまだ町の手作り家具屋さんがしぶとく生き長らえているのは、いろんな意味で興味深いです。国民性が見えたりもしますしね。

家具

どんな商売でも、売り上げが落ちれば心配ですし、「よそがこれで成功するなら、うちも同じようにせないかんのかな」と不安になることはあります。

焦って、ついつい叩き売りしたくなる気持ちにもなりますし。

誰かに相談したからといてって、100パーセント正しい答えが得られるわけでもありません。

そこに『運』という要素も噛んでくる。

驕れるもの久しからず、で、それが自分の実力とふんぞり返っていたら、後で足元すくわれる。

常に波乗りしているようなところはありますよね。

だからこそ、人間や社会に垣間見えることもたくさんあるし、一生に一度は、どんな小さな商売でもいいから、手がけてみる価値はあると思います(失敗しても取り返せる程度に)。

そんでもって、資本の無い人間は、せめて『主』は選ぶこと。

「ベンチがアホやから野球でけへん」は会社も同じです。誰に付いて行くかで、人生も大きく変わります。

規模や知名度にかかわらず、賢い社長、賢い会社を見極めるためにも、学生時代に勉強はしっかりやっておこう。読み書きはもちろん、世の中を知るのも大事。その為のインターネットです。YouTubeとまとめサイトを眺めるだけでITライフを終わるのはもったいない。

その中で、大塚家具の一件は、いい事例だと思います。

ちなみに、私の意見は、この方に近いです。

Blogosに掲載されていた、Shuuiti Ohtakeさんという方のコメントです。

5年後、10年後、どんな結果になるでしょうね。

http://blogos.com/article/186615/

  たぶん、大塚家具の久美子社長は、ニトリ路線を意識して、比較的安価な家具を広範囲な客筋に販売していこうとしたんじゃないかな。それはそれで正しい路線のように思われるんだけど、そもそも「家具」と言ったものが、売れなくなっている現実を認識するのが甘かったような気がする。今、古タンスを売ろうにも、「タダでいいなら持って行きます」どころか、「廃棄物処分費用を頂きます」だからね。

  要は新しい建物がクローゼットタイプになって、タンスや引き出しは要らない造りになっているのが普通。また、ニトリなどは組み立て家具が基本でしょう。家に梱包された家具の部品が送られてきて、それを組み立てる。ネット注文で良いから、家具売り場は不要。輸送費も大きく低減されるので、コストは大きく下げられる。

  久美子社長の考えでは、中間層も含め多数の顧客を集め、売り上げを伸ばそうとしたのだろうけど、現にショールームに家具を取りそろえているのでは、テナント代もかかるのでその分、家具の値段に反映させなければならない。つまり、元々、大塚家具は薄利多売には向かない商法であったということが言えるだろうと思う。

  さらには、格差社会の問題も絡んでくるだろう。貧しき者はますます貧しく、富める者はますます富んでくるようなご時世では、店員が付きっきりで説明を行うというサービスを求める富裕層が、かえって増えて来ていると言うことなのかも知れない。つまり、久美子社長の父親が築いてきた旧来のサービスの方を好む層は健在であるということ。

  ネット通販のニトリのような家具の流通破壊が伸張する一方、実際に店員に付きっきりでサービスする従来型の高級家具の販売法を支持する層も根強くある。その狭間にあって、久美子社長はどっちつかずの商法を選んでしまったというのが、伸び悩みの真相と言えるのかも知れない。

by Shuuiti Ohtake

Photo : https://seeacareerwithus.com

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