泣き虫の殺し屋『ニキータ』リュック・ベンソン

リュック・ベンソンの初期の傑作といえば「レオン」か「ニキータ」が有名ですが、私は断然ニキータ派です。(レオンが苦手な理由は後述)

主演のアンヌ・パリローの魅力はもちろん、映画全体に漂うクラシックな雰囲気や小物使い、恋と殺しを絡めたお洒落な設定、等々、フランスの監督ならではの演出で、まさに『大人の女の映画』。

わけても秀逸なのが、ニキータの指導役となる元・女殺し屋を演じるジャンヌ・モロー。

出演は2場面ぐらいですが、強烈な印象を残しています。

この映画の、この役に、ジャンヌ・モローを配したことで、『女性の成長物語』としての深みがぐっと増したような気がします。

特に好きなのが、この場面。

殺し屋の養成所に送られたものの、教官をおちょくるばかりで、ちっとも真面目に取り組もうとしないニキータ。

初めて彼女が「女殺し屋OB」であるジャンヌの部屋を訪れた時、ぼさぼさ頭のニキータにこう言い聞かせます。

どう振る舞えばいいか分からない時は、微笑みなさい。
知的に見えなくても、相手に好感を与えるわ。

ニキータ

ニキータ

ちなみにQuoteしてるのは、テレビ洋画劇場でのセリフです。ここだけ完璧に覚えました。

「好感」よりも「知的」を優先する。

これぞヨーロッパ女性の価値観ですよね。

それをまたジャンヌ・モローのような大女優が口にすると、ひれ伏しそうになる。

私もこのセリフで『ニキータ』の大ファンになりました。(この場面だけ繰り返し見てしまう)

そして、こちらが二度目の邂逅。

ニキータ

組織の上官から「真面目に取り組まないなら、次はない」と言われて、ニキータは再びジャンヌの部屋を訪ねます。

その時、ニキータが彼女の手をじっと見つめ、ジャンヌがこう答えるのね。

私の手を見ているの? 昔は綺麗だった。
今は皺だらけだけど。

この場面もすごく好き。

この「手」に、女性の人生の変化、美しさと儚さ、老いの容赦なさ、思い出、切なさ、生き様、そういったものがギュっと込められていて、それを大女優ジャンヌ・モローが口にすると、何とも言えない味わいと迫力があるんですよね。

そして、このセリフの後の、笑顔がすごくキュートで清々しいんですよ。

老いても悔いなし。

若さと美しさを精一杯生きた、充実した女の笑みだと思います。

ニキータ

この顔を見たさに、ニキータを鑑賞するようなものです。

そして、ジャンヌはニキータをドレッサーの前に座らせ、

ルージュを引くのよ。女の本能のままに。
この世には無限のものが二つある。
女の美しさと、それを利用すること

DVDの日本語字幕と異なりますが、TV洋画劇場では上記のように言ってました

ニキータ

一度でいいから、こんなこと言っていみたいですよね。

この場面は、女性としても女優としても大先輩の人から、これから華を咲かそうとする若い娘への美と叡智のバトンリレー、あるいはエールという感じで、この中にニキータという作品の本質が現れているといっても過言ではないと思います。

リュック・ベンソンがこの映画にジャンヌ・モローを引っ張ってきて、この場面を撮らせたのは拍手喝采ものですよ。

そして次の場面で、ニキータは華麗に変身。

この映画は本当に「女」の描き方が上手いです。

やっぱ、女性にとって「メイクアップの道具が使いこなせる」って、一つの成熟のバロメータですからね。

ニキータ

この作品に登場する二人の男。

一人は、ニキータを導く政府の工作員。

もう一人は、一般男性のマルコ。

初めての仕事で身も心もボロボロになったニキータと「別れのキス」をする場面。さらっとして、いかにも「おフランス」な雰囲気がいいです。

ニキータ

カリンチョさまの切なげな眼差しがたまらん..
ニキータ

スーパーマーケットで知り合った恋人のマルコも、まめで、優しくて、私にも譲って欲しいぐらいです。

ニキータ

日本女性はコレに憧れるんじゃないか。彼氏が朝食を作ってベッドまで運んでくれるという(*^^*)
ニキータ

詳しくは書きませんが、この場面も「殺し」とは違う意味でスリリング。

もしかしたら・・と、最後の瞬間まで冷や冷やさせられる。

「殺し」に絡めて、恋人たちの不安や疑問、信頼の気持ちを、スピーディな展開の中にきっちり描いている点がこの作品の好感のもてる所です。

ニキータ

恋人の優しい問いかけに涙をぬぐいながら照準を合わす場面が印象的
ニキータ

そんでもって、「おフランス」らしく、衣装がすごくファッショナブル!

私もこんな帽子かぶって歩いてみたい・・。

ニキータ

ニキータ

ちなみに、20代の時、こういう髪型に憧れてたんです。
でも、恐ろしくて、ここまで短くカットできなかった。
絶対に合わないだろうな~と思って。

今、こういう髪型をしています。実は一番似合ってた。切ってから判った。
20代の時もチャレンジすればよかったな~と、後悔しとります。

(皆さんも、してみたいヘアスタイルがあれば、思い切ってチャレンジするといいですよ。失敗しても、また生えてくるから ^_^;)

*

この作品に関しては、男性はあまりそそられないかもしれないですね。

アンヌ・パリローが素敵! ジャンヌ・モロー最強! と思えるのは、やはり女性の方が圧倒多数だと。

ドンパチの野暮な展開を期待して見たら、多分、肩すかしを食らうけど、あのジャンヌ・モローとのやり取りと、ニキータの華麗な変身を楽しむ気持ちがあれば、きっと長く心に残る映画になると思います。

一つ一つの演出が丁寧で、映像を見てるだけでも飽きませんしね。

ある意味、ニキータの悲しみや淋しさを前面に押し出さず、最後の最後まで抑えた感じでもっていったのもポイントが高いのではないでしょうか。

もし、最後で、「実は私も辛かったの! ウワー」と大泣きする演出なら、あるいはマルコが「ニキータ可哀相。あんな非情な上官は殴ってやる」みたいな正義感なら、かえって興ざめしたでしょう。

なんかこう、傷ついた小鳥を逃がすような、そしてひっそり旅立つような、朝靄のかかったような演出だから、余韻の残るエンディングになったのではないかと思います。

ついでに私も「アレ」に何て書いてあったのか、知りたいです。

愛の言葉。それとも感謝?

永遠に教えてもらえない。それが君への罰。

みたいなシナリオが、たまらん大好きです。

サウンドトラック

音楽を手がけているのは、ベンソン監督御用達のエリック・セラ。

全体にJAZZ風のムーディなメロディで、エンディングの『The Dark Side of Time』、殺しの場面でかかるMPOLKMOPも、一度耳にしたら忘れられないですよね。

あの、「ちゃ~ら~ら~」の部分が、ニキータの「ええええええっ」という嘆きの声に聞こえる。

その後に続くリズムがアサシンの足音みたいで、すごい迫力でした。

っつうか、あんなレストランに行ってみたいですよね!!

お祝いのプレゼント。
ニキータ

開けてみたら・・
ニキータ

これは女性にとってホントに残酷な展開。だからこそ、暗殺者として腹を括ったニキータの強さと、その後の怒りに説得力があるんですよね。


アイテム

このDVD、吹替が入ってないの!!

洋画劇場で放映した時、吹替もすごく上手だったんですよ。
あの音源はどこへ行ったんだろう??
次にリマスターする時は必ず入れて欲しいです。

こっちは中古しかないみたい。輸入盤はあるけど。興味のある方はどうぞ。

『レオン』が苦手な理由

リュック・ベンソンと言えば『レオン』なんだけど、まー、早い話、私はナタリー・ポートマンが苦手なんですよ(ファンの方、ごめんなさい)。

スター・ウォーズも、ブラック・スワンも、どうしても好きになれない。

決して悪い役者さんじゃないんですよ。すごく熱心で、才能のある女優さんだと思います。

でも、好きになれない。

特にレオンのマチルダ。なんかこう、我が儘で、マセとって、好きになれないんですよ。

早い話、妬いてるんですけど (^_^;)

あの子がもうちょい慎重に振る舞ってたら、レオンも死なずにすんだわけでしょう。

愛人だとぬかしたり、一人で敵地に乗り込んでいったり、、、、

それでレオンが死んじゃうのが、もう許せなくって。

ちなみに、私は完全版より劇場公開版の方が好きです。

悪くはないけど、劇場公開時、カットしただけの理由はあったと感じます。

ベッドのシーンとか、何度も襲撃に行く場面とか、ちょっと余計かな、と。

ついでにレオンの女性のエピソードも不要だった。

「いったい、どんな女?」と見る側の想像に任せた方が味があったのに。

どうせなら、DVDも、完全版と劇場公開版と、両方収録してくれたらいいんですよね、ブレードランナーみたいに。

メニューでエクステンションするかどうか、選べるようにしてね。

劇場公開版を含むDVDが出たら勝ってもいい。

でも、やっぱり、マチルダ=ナタリー・ポートマン、好きになれないだろうと思います。

こればっかりは好みの問題です。

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