Notes of Life

なぜ自分の子どもが欲しいのですか  NHKスペシャル『地球大進化 46億年』より

2009年11月3日

最近、「発言小町」という掲示板で、興味深いトピックスが立った。

特に子供が欲しいとは思わない女性からの、『なぜ自分の子供が欲しいのですか』という質問である。

それに対して、こんなレスをつけた方がおられた。

死に際にわかる

私の母親がなくなる時、
「子供がいて本当によかった」
と言っていました。
私達子供は、母親と自分たちが似ている所を話しながら、
「母親は亡くなるけど、遺伝子は私たちの中で生きてるんだって思ったら救われるような気持ちになるね」
と言い合いました。
母親が亡くなる時、母親のDNAが自分の中に生きていることが無性に嬉しかったです。
理由はわかりません。本能だと思います。

>じゃあなんで私は自分のDNAを残したいと思わないんだろうか・・と、

それは死に間際にものすごく感じる気持ちなんじゃないかと思います。

とても印象深い言葉だった。

「救われるような気持ち」になるのは、母親とて同じこと。

私が上の子を産んだ時、一番強く感じたのは、「ああ、これで、生物としての大きな役割を果たしたなあ」という気持ちだった。

あとは、風に吹かれて死んで行くカマキリでもいい。

とにもかくにも、生物として大きな使命を果たせたのだ、と。そんな気持ちだった。

『自己保存の本能』。

おそらく、数ある本能の中でも、これが一番強烈なのではないか、と思う。

人が名声を求めるのも、財産とか会社とか作品とか形あるものを残そうとするのも、すべては「自己保存の本能」からくるもの。

自己愛とはまた別の、もっと荒々しい動機の上に人間としての生命活動がある。

生産、創造、その全ての源になっているのは、『コピーしたい!』という、ミトコンドリアの叫びのように思うんだな。

(ミトコンドリアDNAは、母親のものだけが子供に受け継がれます 参照:ミトコンドリア・イブ(人類の母)について

左⑨のソラマメみたいなの


そう言えば、ミトコンドリアをテーマにしたホラー小説もあったような記憶が。

私も、看護学校を受験する時、生物だけは大好きで、あれもこれも意欲的に覚えたものだけど、突き詰めれば、生物の活動というのは、このミクロな化学反応の連鎖に過ぎないのだ──と思うと、自分の思考や感情さえも、分子化学の結晶みたいな気分になったものだっけ。

実際、このミトコンドリアというのは、地球に生命が誕生した何十億年という昔から存在していて(もちろん性質は形状は異なるけども)、このミクロな化学反応容器がやがて神経を生み出し、心臓を生み出し、消化器を生み出し、ついには高度な知能を生み出したのだと思うと、その働きは魂よりも強い、と思ってしまうのだ。

つまり、子供が欲しいとか何とか、頭で考えるよりもずっと、ミトコンドリアの「コピーしたい」という化学反応の方がもっと強烈なんじゃないかな。

なんせ、何十億年、生き長らえてきた遺伝子だもの。

じゃあ、子供が欲しいと思わない女性は遺伝子レベルでダメなのか、という話ではなく、「なぜ子供が欲しいのか」と問われたら、主義や思想を超えた、遺伝子の力としか言いようがない、という話。

だってね、遺伝子の欲求より、女性の意志や思想の方がはるかに勝るとしたら、人間なんて生き残れないと思うから。

ちなみに、「ミトコンドリア・イブ」について。上記リンクより。

このミトコンドリアが持っている独自のDNAは母親からのみ受け継がれ、決して父親のDNAが子に伝わることはありません。 
あなたのミトコンドリアDNAは母方の祖母から受け継いだものです。
その祖母も母方の母から受け継いでいるのですから、何代さかのぼっても、ミトコンドリアを伝えてくれた先祖はたった一人なのです。 
何万年遡っても同じことです。 
現在地球上にすむ60億人が持っているミトコンドリアの起源をたどれば、すべてのヒトが、ヒトとして姿を現した太古の集団まですべて一本の線で繋がっているのです。

(略)

人類はアフリカで生まれしばらくとどまった後、各地に広がっていったと解釈できたのです。  
その上現代人にミトコンドリアDNAを残せたご先祖様はたった一人の女性で、他の系統は消えてしまっていると結論づけました。
この名誉ある女性にミトコンドリア・イブの名称が与えられたのです。 
現世全地球人共通の大祖母の誕生です。

おそらく、子供を産んだり、育てたり、というのは、人間のリクツをはるかに超えた次元の話なのだと思う。

もし、それが、主義や思想でコントロールできるものなら、女性性をめぐる悲劇も葛藤もこの世に起こりようがないから。

目にも見えない一つの分子が、原始の海の荒々しい化学反応によって、一つ、また一つと結合し、いつしか自己複製の能力を身につけ、有酸素のエネルギーを生み出す生命の工場となった。

やがてそれは、複雑なシステムをもった「細胞」へと進化し、細胞は「組織」を、組織は「肉体」へと発達を遂げていった。

その連鎖の果てに現れた「人類」。

今、彼らは、産むか、産まないかの選択肢を持つにまで至る。

それもまた進化の過程であろうし、いつか、人間自身が複製することを止めてしまう可能性だってなきにしもあらずだ。

でも、これだけは言える。

産まなかったことを後悔しても、子育てしたことを後悔する母親は、ごくごく数えるほどしかないだろう、ということ。

「だから、あなたも産みなさい」──ではなく、女性の心と身体は、そう納得するように出来ている──というお話です(遺伝子レベルで)。

§ NHKスペシャル

これは本当に感動しました。
グラフィックの技術もすごいけど、全編に漂う「生命」への畏敬の念と、ドラマティックな演出が素晴らしい。
いつ死に絶えてもおかしくなかった「生命」。
奇跡というなら、私たちの存在そのものが奇跡と言えるでしょう。
これはNHKにしか作れない傑作だと思います。

ちなみに、内容はこんな感じ・・

<第一集>
最新の研究で、地球は誕生から大変動を繰り返して生まれた星であることがわかってきた。なかでも最大の変動は、40億年前に起きたと考えられている「全海洋蒸発事件」である。直径400キロの巨大隕石の衝突により、すべての海洋が蒸発し、海底さえも溶け出してしまった。太陽の表面温度に匹敵する 4000~6000度もの高熱の中、生命はどのように生き延びたのか?

<第二集>
およそ6億年前。地球は一面真っ白な氷で覆われていた。平均気温はマイナス50度以下。陸は南極大陸のように厚い氷で覆われ、海は1000メートルの深さまで凍りついた。数百万年も続いたこの全球凍結を引き起こし、生命を窮地に追い込んだのは、懸命に生きて繁栄しようとする生命自身の本能だった。
しかし、この危機を克服した時、微生物にすぎなかった生命は、大量の酸素とコラーゲンを使って大型生物へと進化した。

<第三集>
4億年前、大陸移動によって生存に適した浅い海が減少し、生存競争が激化。弱者の立場にあった私達の祖先=ユーステノプテロンは浅い海を諦め、大陸の内部に誕生した新たな淡水の世界へ進出した。その進出を支えたのは、地球最初の木アーキオプテリスだった。淡水域での酸素不足や次第に激しくなる生存競争を克服するため、私達の祖先は肺で呼吸を始め、手を進化させる。その進化が上陸への決め手のなるのだった。

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