ネットと社会活動 代表者が発言するということ

私の10代から20代にかけて──インターネットもマイPCも無かった頃から、医療、福祉、生活支援、就労、いろんな社会活動がありました。

たとえば「移植ネットワーク」「終末医療研究会」「がん患者の支援」「難病疾患のサポート」等々。

今と大きく違うのは、そうした支援グループや組織や団体の代表者や発起人などが世に広く知られることは少なかった、という点です。

もちろん、終末医療の研究や支援に深く関わっておられる方なら「ああ、○○病院の内科医長の山田ドクターね」みたいに、「知っている人は知ってる」という事はありました。

それでも個人として全国的に知られる機会は非常に少なかった。

せいぜい「ナース専科」みたいな専門誌のインタビューや、地元新聞の市民欄の「今こそ考える。理想の終末医療の在り方」みたいな特集記事の中で取り上げられる程度。

発言も自分が専門とする分野に限られ、代表者や発起人の個人的な信条やプライベートはもちろん、その他の問題にまで言及することはほとんど無かったように記憶しています(中には全国区で名前の知れた「組織の代名詞」みたいな方もおられましたが)

順序としては、まず最初に『終末医療を考える会』という団体があり、その続きに代表者や発起人が注目されるという感じです。

私の間接的な上司も、ある分野では非常に名前が知られ、機関誌や医療専門誌、講演会などで積極的に発言し、患者のサポートはもちろん、社会の理解や支援を得る活動に全力で取り組んでおられましたが、「個人」としてブログやSNSのアカウントを持ち、組織の活動以外のことに言及し、群集の前で自分のアンチと論争して見世物になる(良い意味でも悪い意味でも)という事はなかったわけです。

一方、ネット以降、とりわけSNSが登場してからは、代表者や発起人が積極的に発言し、どんな団体の代表で、どんな活動をしているかは二の次。

「次にコイツは何を言うか」という野次馬的な関心を持たれている部分も大きいと思います。

ウェブサイトやSNSを使って積極的に発信し、団体の存在や、活動内容や、そこに横たわる問題について、社会にしっかり伝えていくのは非常に有意義ですし、あの頃、こういうツールがあれば、寝たきり問題にしても、終末医療にしても、もっともっと多くの人に関心を持たれ、まったく違った方向に進展したのではないかと思うことしきりです。

医療にしても、生活支援にしても、基本的に関心のある人しか専門誌や特集記事に目を通しませんから。

今みたいに、ニュースサイトで「炎上してますよ」と面白おかしく取り上げられ、それを機会に全く無関心だった人まで「そんな問題や活動があったのか」と認知することは、まず無かったのです。

そう考えると、ネットやSNSにはまだまだ大きな可能性がありますし、たとえ小さなグループでも、積極的に広報なされば、それを必要とする人に届きやすくなるのは確かだと思います。

が、一方で、「活動・グループ」よりも「代表者」の方があまりに際立って、「こうした問題に関心はあるが、アイツが嫌いだから、アイツの活動には協力せん」という人も出てくると思うのです。

実際には実のある活動をし、グループの末端の方々は誠実に取り組んでおられるにも関わらず、です。

これは例え話ですが、私の知り合いに某企業の会社員がおられました。ところが、その会社の一部の人がとんでもない事をして、国会をも巻き込む騒ぎになり、その会社が悪徳企業の代名詞みたいに罵られた時期があるんですね。

その人自身は全く無関係。会社で決められた通り、コツコツ働いているだけなのに、その頃、世間は「○○といえば人殺し企業」みたいに激憤してましたから、その人も外で迂闊に勤め先を口に出来なくなってしまったのです。それこそ、会社名を口にしたら相手に殴られるのではないかと恐怖するくらい辛かったそうです。

それと似たような感じで、代表者が敵意をもたれることで、せっかく良い活動をしていても、全てがミソクソにされ、そこに所属する末端の人たち──心から活動に共感し、一所懸命にやってる人たちまでもが同じように見られる事は往々にしてあると思います。

何事もなければ、もっともっと支援が集まるかもしれないのに、ネットでの発言を通して、「代表者がムカつく」というだけで、全てがクロに見られたら、本末転倒ですよね。

今後も、老若男女を問わず、「社会に役立つ事がしたい」とグループを組織し、ウェブサイトやSNSを通じて社会に訴えたい方は次々に現れると思います。

それ自体は非常に意義がありますし、これまで情報が届かなかった層へも手を届かせ、一人でも多くの人に問題を知ってもらうことが、活動を底上げすることでしょう。

でも、一方で、「アイツがムカつくから、わざと協力しない」という流れを作る恐れもある。
上の態度一つで、末端の人たちまでもが白い目で見られるのは、会社と同じです。

これからやろうとお考えの方、今実際に活動されている方も含めて、そうしたネガティブな一面もよくよく考慮した上で取り組まれることをおすすめします。

アンチも鬱陶しいかもしれませんが、もっと怖いのは、これらを冷ややかに見ている「物言わぬ大衆」です。

Site Footer