マイケル・ジャクソンの何がそんなにスゴかったのか (ひょうきん族のパフォーマンス付き)

私が初めてマイケルのパフォーマンスを見たのは、高校のクラブの先輩に連れられて行ったジャズ喫茶(”むかし”はそう呼んでいた)だった。

銀色のスチールで統一されたインテリアと、その頃、若者を中心に大人気だった『MTV(ミュージック・ティーヴィ』を一日中流していることで、主に大学生に人気があり、平日の昼間でも、一杯のソーダで何時間も居座る客で店内はいつも賑わっていた。

その頃の私は、大人の世界に魅せられ、大学生や社会人のOBの後ろにくっついては、ジャズ喫茶、居酒屋、カラオケパブにしょっちゅう足を運び、ジョッキになみなみと注がれたチューハイを一気飲みしては、「高校生とは思えん」とか言われて舞い上がっていた元祖コギャル。

そのジャズ喫茶に連れて行ってもらった時も、青いソーダ水がカクテルに見えるほどオトナの気分で、天井につり下げられた大きなTVに次々に映し出されるMTVを見上げては、「この曲、知ってる。これも知ってる」とポップス通を気取りながら、上級生の恋の話にドキドキしながら耳を傾けていたのだった。

そんな私が、向かい合う先輩の姿も目に入らないほど陶然となったのが、世界中で大ブームになりつつあるマイケル・ジャクソンの『スリラー』だった。

今でこそ当たり前、むしろ古さを感じさせるくらいだけれど、当時の音楽ファンにとって、それがどれほど衝撃的で、斬新に映ったことか。

一糸乱れぬ群舞に、隙のない身のこなし。

人間の身体がこんな精密に動くものかと目を見張らずにいないマイケルのダンスに、伸びのある歌唱力。

MTVでありながら、そこには一編の物語があり、音楽がまるで芝居の一部のように心にとけこんでくる。

それまでも「歌って踊れるアーティスト」はたくさんいたし、素敵なミュージックビデオも少なくなかった。

でも、それらはまるでカラオケ・ビデオのように淡々として、スター1人が出来合のセットで歌を披露する、いわば「プロモーションの一環」にすぎなかった。

みんなが作ってるから、作る──そんなノリだったように思う。

しかし、マイケルのは違った。

全体が1つの芸術だった。

マイケル前のビデオを「演歌歌手のワンマンショー」に喩えるなら、マイケルのそれはまさにブロードウェイのミュージカル。

スター1人の歌と踊りだけでなく、端っこで踊るバックダンサーや何気ない背景のアイテム、プロット、カメラワーク、コスチューム、すべてに神経を行き届かせ、一分の隙もない「映像」を見せてくれる。

ビデオそのものを独立した作品として昇華させ、その後のMTVの流れを大きく変えたのは、やはり『スリラー』をはじめとするマイケル・ジャクソンのヒット曲であり、このアルバムがギネス世界記録を打ち立てたのも、その斬新さと気迫に誰もが圧倒されたからだと思う。

もし、今の若い子に、「なんか面白いものない?」と聞かれたら、『スリラー』が世界に席巻し始めた80年代のあの頃に連れて行ってあげたい。

マイケルの本当の凄さは、80年代をリアルに体験した者にしか分からないし、「あれが出てきた時」──というのがどれほどスリリングでエキサイティングだったか、言葉で説明しても伝えようがないからだ。

そんなマイケルも、最後の世界公演を前に、心臓発作で急逝された。

第一報を聞いた時、「誰かに一服盛られたのではないか」と思うほど、その私生活は妬みと醜聞に満ち満ちていた。

50歳。

若いと言えば若いし、シャープな美しさを売り物にしていたマイケルにとっては、ここらが限界だったのか──とも思う。

実際、私には、「年老いた白髪のマイケル」など想像できなかったし、恐らく、マイケル本人も、それは望まなかったのでないか……という気がするから。

そう考えると、彼はすべてを見切って、短い生涯の中に全人生を燃焼させたとも言えるし、一方、どうしても背負いきれないものに押しつぶされて力尽きた、という印象もある。

誰がマイケルを殺したのか──それは、皮肉にも、彼を愛する人々、そして、彼が愛する者たちだったのではないか、と。

今頃、彼は、月の水面を歩きながら、本当に自由に、楽しく歌える世界を探し求めていることだろう。

そして、時々、地球のファンを振り返りながら、「Remember Me(ボクのことを忘れないで)」と口ずさんでいるにちがいない。

『さよなら』なんて言わないよ。

あの時代、マイケルをリアルに体験できて、本当に幸せだったと思う。

そして、この幸せゆえに、世界中のファンも、きっと君のことを忘れないだろう。

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§ VIDEO

こちらは、私が最も好きな作品。「in closet」。

セピア色の映像と、有名カメラマンによるカメラワークが素晴らしい。

共演のナオミ・キャンベルの美しさがハンパではない。
この時、まだ21か22歳ぐらいなんだよね。(ためいき。。。)


こちらは、『スリラー』が大人気だった時、お笑い番組『おれたちひょうきん族』でコピーされたパフォーマンス。
ひょうきん族の歴代パフォーマンスの中でも一、二を争う傑作。
マイケルを演じたウガンダさんの、限りなく本物に近い踊りが秀逸だ(よく練習されたと思う)。

でも、確か、もう一つ違うバージョンがあって、そこでは「本物そっくり」と噂だった山田邦子さんがゾンビ女を演じているんですよね。これが一番すごいパフォーマンスだったんですけど、誰かアップしてくれないかな~。

ウガンダの『スリラー』 「おれたちひょうきん族」より

本物の『スリラー』。


エジプトを舞台にした『Remember The Time』もお気に入り。
ファラオを演じるのはエディ・マーフィー、女王はソマリア出身のモデルさんです。
壁画風のカクカクとした踊りが秀逸だった。

Remember the Time / Michel Jackson

§ 関連商品

アメリカに行った時、衝動的に買ったマイケルのベスト盤。
カーラジオから流れるマイケルの曲を聴いた時、猛烈に欲しくなって、「Walmart」で購入した。
マイケルの音楽は、アメリカらしい、アメリカ人気質に合った、アメリカを象徴する響きだった、とも思う。
こちらは「ジャクソン5」時代のデビュー曲から、80年代~90年の大ヒット曲を網羅した2枚組。
すでに聞き慣れている曲ばかりだが、改めて聞くと、まさに時代を象徴する響きであり、世界の魁けだったと感じる。
特に、クインシー・ジョーンズをプロデューサーに迎えた頃の、若く、みずみずしいヒット曲が秀逸。

「アメリカの至宝」とも言うべき、マイケルの偉大な業績がぎゅっと詰まったベストDVD。
ファンのみならず、リアル体験をしたことがない平成っ子でも目を奪われること間違いなし。
まったく古さを感じない歌、ダンス、演出──全てにおいて完璧主義どころか、「歴史に挑戦した」としか言いようのないクオリティの高さだ。

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