音楽

恋の悦びとせつなさと ~松任谷由実の世界~

2009年3月9日

ユーミン(松任谷由実)を聞いていると、今も胸いっぱいにこみ上げる。

高校生の時、大好きだった先輩のことを思い出すから。

最後まで「好き」と言えなかった。

先輩には、五年越しの恋人がいたから。

それでも好きになってしまったのは、先輩があまりに優しくて、
私のことも妹みたいに可愛がって下さったからだ。

好意をもたれているのをいいことに、遊んでやろうとか、仲間内で弄ぼうとか、
そういう汚らしい下心もいっさいなくて、
あくまで「彼女第一」の傍らから、そっと手を差し伸べてくれる優しさが、
私には何よりも、誰よりも、身にしみたのだった。

友達の中には「告白すればいいのに」と言う人もあった。

でも、それだけは出来なかった。

ふられるのが怖いからではない。

優しい人を苦しめたくなかったからだ。

でも、言わなくても、先輩には全部分かってたんだよね。

みんなも知ってた。

彼女も知ってた。

その中で、気付かない振りを続けてくれた。

それだけが、お互いの立場と気持ちを壊さない、唯一の方法だったから。

今も先輩の誕生日は忘れたことがない。

ああ、今日であの人も○○歳なんだな、って。

心ひそかに幸せを願わずにいない。

そんな風に思える人と巡り会えたことが私の幸せ。

気付かぬ振りをすることで、私の恋を大切にしてくれた先輩の心遣いが最高の贈り物。

それもまた形を違えた『愛』だったのだ──と思いたい。

先輩や仲間達とあちこち遊び歩いた高校二年生の夏。

傍らにはいつもユーミンの音楽があった。

そして今も永遠に心に響く。忘れ得ぬ人の面影のように。

*

こちらは『カンナ8号線』。まさに私の恋そのものでした。
夏、みんなで海水浴に行った日のことを思い出します。

ジャンケンに負けて、みんなの分の缶ジュースの買い出しに行って、「重いよ~」と思いながら坂道を歩いていたら、後ろからすっと手を差し伸べて、何本か持って下さった。「重そうやから」と微笑んで。
そして、そのままスタスタと先を歩いて行った、そういう照れと気遣いが好きでした。

チェックのシャツが風にふくらむ後ろ姿を
波をバックにやきつけたかった まぶたの奥に

カンナの花が燃えてゆれてた 中央分離帯
どこへ行こうか 待ち遠しかった 日曜日

思い出にひかれてここまできたけれども
あのころの二人はもうどこにもいない


初めてこの曲をラジオで聴いた時は、あまりの美しさに陶然としたもの。
これを松任谷由実のベストソングに挙げる人も多いですね。

これぞまさしく恋する乙女の気持ち。
深く静かな愛の祈りです。

大好きなあなたの部屋まで
凍る街路樹ぬけて急ぎましょう

今年も最初に会う人が
あなたであるように はやく はやく

新しいキスを下さい 
そして鐘の音 通りにあふれて

今年もたくさん いいことが
あなたにあるように いつも いつも

今日の日は ああどこから来るの
陽気な人ごみにまぎれて消えるの

こうして もひとつ年をとり
あなたを愛したい ずっと ずっと


これも切ない片想いの歌です。
こんな気持ちで日の暮れた家路を歩いたこともあったな。

あの人のうわさが聞ける町なら
私は流れてゆくわ
冷えそうな心と なぐさめのカセットと
淡い口紅ひとつもって

そして もう一度 もう一度
私の声にふりむいて
しばらくは 夕闇を ひとり歩いてるから


これは80年代後半、『純愛ブーム』のさきがけとなったアルバム『ラブウォーズ』に収録されていたもの。
こちらも胸が痛むような失恋ソングで、「崩れそうな抜け殻でも 歩いてゆけるから きっと」というフレーズがもう心にズキズキと……。

題名は忘れたけど、「誰か 優しく私の 肩を抱いてくれたら どこまでも遠いところへ 歩いて行けそう」という歌もあってね。これと、それとが、私の中では二大失恋フレーズでした。

またとない またいつか あるなら教えて
崩れそうな抜け殻でも 歩いてゆけるから きっと

意味のないダルセーニョ もう少しいさせて
あなたと暮らした町で 今年も暮れて行くわ


松任谷由実のおすすめアルバム

数あるユーミンのアルバムの中でも最高位に位置づけられる名盤。上記で紹介した「カンナ8号線」「夕闇をひとり」「A Happy New Year」をはじめ、関西圏の女の子なら涙せずにいられない「タワーサイド・メモリー」(神戸を歌った曲)など、何度聞いても飽きることがない上質な逸品。ファンの中でも圧倒的に支持されています。

オリジナルは1980年に発表。ポップで明るく、初期ユーミンの作品でもファンに人気の高い1枚。「Corvet 1954」は来生たかおとのデュエット曲となっている。

「埠頭を渡る風」「ロッジで待つクリスマス」など、若い恋を歌った秀作。
特に、来生たかおとのデュエット「Corvett 1954 」は、ジャジーな魅力にあふれ、ロマンティックの極み。この曲だけでも聴く価値があります。Amazonで試聴できますので、ぜひ訪れて下さいね。
HMVのレビューより「“ゆるいカーブであなたに倒れたら 何も言わずに横顔で笑って♪” このシチュエーションを待っているのにいまだにいつでも寂しいオレの助手席であった」←秀逸

☆ その他のおすすめ

ユーミンの本当の魅力は、上記の2枚とこちらのきわめて初期の2枚(まだ荒井由美だった時代)に集約されていると思う。
最近の曲も悪くはないんだけど、どうも90年代に入ってからは、本来のノスタルジィにあふれるサウンドから遠ざかってしまったような気がして、ファンとしてはちょっと複雑。
その証拠に、ユーミンの名曲と言われるものは、ほとんど初期のアルバムに収められいて、ファンも「ユーミン」と言えば、この頃のアルバムを挙げるんじゃないかな。
こちらのアルバムもかなり値崩れして、入手しやすくなっているので、ちょっと気になる方は是非に聞いて欲しい。

1. グッド・ラック・アンド・グッド・バイ
2. 天気雨
3. 朝陽の中で微笑んで
4. たぶんあなたはむかえに来ない
5. 航海日誌
6. 雨の街を
7. さざ波
8. 花紀行
9. 中央フリーウェイ
10. 雨のステイション
11. チャイニーズ・スープ
12. そのまま

1. 曇り空
2. 紙ヒコーキ
3. 恋のスーパー・パラシューター
4. 海を見ていた午後
5. コバルト・アワー
6. あなただけのもの
7. 生まれた街で
8. 14番目の月
9. 卒業写真
10. アフリカへ行きたい
11. 旅立つ秋
12. 避暑地の出来事

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