『森園みるく』という快楽 ~芸術的レディコミ~

KIALA 森園みるく 桐野夏生

昭和40年代に生まれ、週間マーガレットや別冊フレンドの「お目目キラキラ、胸キュン♥青春ラブ」に親しんだ私たち世代にとって、「レディースコミック(レディコミ)」の登場は、存在だけで十分衝撃的だった。

少女誌では決して描けない「・・and They lived happily ever after(そして二人はいつまでも幸せに暮らしました)」の実態物語。

夫の浮気、妻の火遊び、嫁姑の確執、三十路独女の葛藤、性の不満、etc。

まるでお昼のワイドショーがコミック化されたようなリアルで生々しい話運びに、どんどんエスカレートする性描写。

昼の社会で、コンビニで売られているような商業誌に、ここまで描いちゃっていいわけ?? なレディースさまの世界に、「彼氏ナシ・耳年増」の女学生たちは学生寮のコタツを囲んで無言で回し読み。中でも一番人気だったのが、圧倒的な画力とドラマ性を誇るカリスマ漫画家の『森園みるく』の作品だ。

その他のレディコミ作家とは一線を画したエロティックで退廃的な画風はもちろんのこと、SM、猟奇、乱交、近親相姦、と、一般の商業誌でギリギリ許せる極みのテーマも「超」がつくほど刺激的(真面目なラブストーリーやコメディもありますが)。

「な、なんか、スゴいよね」と批判がましく言いながら、目はしっかり釘付け。

そりゃもう、「『みるく』の掲載されているレディコミは貸したら返ってこない」と言われるぐらい、うちの寮生は夢中になって読んでいたのだ。

じゃあ、森園さんの魅力は何か、と問われたら、ただのエロ漫画家ではない、一つの美学に貫かれている、という点でしょう。

確かに性描写は過激だし、物語もあまりにテンションが高くて、嫌悪感をもよおす人も多いかもしれない。

でも、SMにしても、ボンテージにしても、森園さんなりの価値観が感じられ、むしろ「芸術的」とさえ言いたくなるほど。

私には、そういう嗜好は理解できないけれど、森園さんの絵は美しい、と心底思うんだな。

学業を卒業し、寮生活に終止符を打ってからは、レディコミを読むこともなくなり、森園ワールドからもずいぶん遠ざかっていたのだけども、最近、電子書籍で見つけて、懐かしさついでに幾つか読んでみると、やっぱり面白い。画力の凄さに圧倒される(最近は少し画風が変わってきてる印象だけども)。

桐野夏生さんと組んだ作品も多く、中でもファッション・モデルの復讐を描いた『KIALA』はスリリングな展開で楽しませてもらった。

画力の素晴らしさときたら、「ヴォーグ」や「ELLE」の世界をそのまま映し出したようなセンスの良さと緻密さで、イラストレーターとしても通用するのでは、と思うほど。

こういう「大人の女性」の絵が描ける漫画家もずいぶん減ったような気がするだけに、絵を見ただけで嬉しくなってしまう。

そんな私が最近、夢中になって読んだのが、先に挙げた『KIALA(キアラ)』。

桐野夏生のセンセーショナルな原作に、森園さんらしいファッショナブルな画力がマッチして、まるでファッション誌でも読んでいるかのよう。

物語は、恋人ニノを誘拐されたキアラが、彼を捜し出すために有名なファッション・モデルとなり、事件の鍵を握っているファッション界の大物ラリックに近づいて真相を探る、というもの。

キアラを手助けする若手デザイナー、カイン&アーベルとのセクシャルな絡みも迫力で、森園作品の真骨頂を行くような傑作である。

が、見せ場は何と言ってもチャチなイラストレーター顔負けのファッション・ショーのショット。ちょっと画力のある漫画家なら、最先端のモードぐらいラクラク漫画化できるんだろうけど、森園さんは何と言っても陰影の使い方が上手い。しかも肉感的だから、目に迫るような息づかいがある。ホント、ポスターにして部屋に貼りたいぐらい。

電子書籍「ebookjapan」で無料立ち読みできるので、興味のある方はどーぞ。



こちらは森園みるくさんの公式サイトから。

海外のモード誌やフォトグラフなど、非常によく研究されていると思う。

森園みるく KIALA

  

森園みるく KIALA

森園みるく KIALA

森園みるく レディースコミック

こちらはマリリン・モンローの人生と死の真相に迫る桐野夏生原作の『モンロー伝説』。
マリリンに関わった実在の人物のエピソードを織り上げて、様々な角度からその死と生涯を追うもの。
架空の人物である「マリリンの隠し子」を主人公にし、証人となる人物を訪ね歩くという設定も分かりやすい。
もちろん、どれが真実で、どれが作り話なのかは分からないけども、一人の心弱き女性の生涯をじっくり読んでみる、という点でおすすめ。



これも衝撃的なお話。有栖川 寧の原作。
最初のエピソードでオチが見えてしまうけども、猟奇的な内容を芸術的に描いてしまえる画力はさすが。



森園みるくの作品は、夜中にコソーっと読むのがいいです。真っ昼間から読むのは、ちょっとキツイかも。

電子書籍のマンガも手軽で面白いです。興味のある方はドーゾ。



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