マリー・アントワネット

私と夫が遠距離恋愛にあった時代、一緒にパリを旅したことがありました。

たまたま、私がイギリスのケンブリッジに語学留学していた時、それまでフロリダに住んでいた夫が、自身の事業の立ち上げのため、ポーランドに一時帰省したので、「お互いヨーロッパに居るなら、また会おうよ」ということで、ロンドン→パリと、一週間の日程を組んで、念願のパリ観光を果たしたのでした。

が、何と言っても、私の目的は『ベルサイユ宮殿』。

当然ですよね。

少女の頃からの愛読書ですもの。

「ベルばら」なくして、私の少女期はなかったし、またオスカルなくして、今の私はあり得なかった。

オスカルが、6巻のあそこで、「女でありながら、これほどにも広い世界を……人間として生きる道を……このような、ぬめぬめとした人間のおろかさの中でもがき生きることを……」と言った時から、私の生き方も、そのように定められてきたのです。

さてさて、むずがる彼(夫)の手を引いて、ベルサイユ行きの電車に乗り込んだ私たちですが、
「宮殿なんか見て、何が面白いの」
と真顔で言われた時には、ちょっとムカっときてしまいました。

子供の頃から、城や教会など見飽きている東欧人の彼にしてみれば、はるばるパリまで旅行に来て、またも宮殿に引っ張っていこうとする私の行為は、退屈きわまりないこと。

「そんなヒマがあったら、エッフェル塔にでも登ろうや」という東欧系お上りさんの彼にしてみれば、理解しがたいお姫様趣味だったのだと思います。

とはいえ、好きなものは好きだし、ベルサイユを訪れずして、私の人生は終わらない。

長年の夢が叶って、憧れのベルサイユ宮殿に足を踏み入れたのはいいですが、豪華なシャンデリアや調度品、目もくらむような美しさの「鏡の間」や「王妃の間」を見るにつけ、ロココの女王として咲き誇りながら、最後は断頭台の露と消えたマリー・アントワネットの哀しみが、心に流れ込んでくるようで、観光ルートを一巡した後、私はとうとう階段の踊り場で、人目もはばからず、ぼろぼろ泣き出してしまったのでした。

それまで大輪のバラのように栄耀栄華を謳歌し、光り輝く存在だったのが、歴史の必然からベルサイユ宮を追われ、地位も財産も家族も奪われたあげく、カビくさいコンシェルジュリの牢獄に閉じこめられ、大勢の市民の前で処刑された事を思うと、あまりにも哀れで、切なく思うんですね。

私は、その時代を生きていないので、マリーの犯した罪がどれほどのものかは分かりませんが、楽しいことが大好きで、普通の家庭人にすぎなかった、一人の平凡な女が、死をもってその罪を贖うには、あまりにも荷が大きすぎるような気がするからです。

「私が一体どんな悪いことをしたというの?」

絢爛豪華なベルサイユ宮殿には、そんなマリーの戸惑いが、今もさまよっているように見えました。

目を見張るほど豪華だけれど、どこか淋しい感じがするのは、落陽のぼんやりとした光を思わせるからかもしれません。

日程の都合から、コンシェルジュリーを訪れることは叶いませんでしたが、行っていたら、多分、目が真っ赤に腫れ上がるほど、泣いていたことでしょう。

民衆に憎まれ、晒し者にされて死んでいったマリーだけども、世界にたった一人ぐらい、あなたの為に泣く人間がいても、罪にはならないでしょう?

今も、あなたを見つめ、理解したいと願う女の子が、日本にはたくさんいます。

だから、天国で、いつまでも、バラのように咲き続けて下さい。

今回の記事はこちらからインスパイアされました。

ベルばらkidsプラザ 
~マリー・アントワネット最後の日々~コンシェルジュリ~

§ マリー・アントワネットのおすすめ本

マリー・アントワネット〈上〉 (岩波文庫)

マリー・アントワネット〈上〉 (岩波文庫)

マリー・アントワネット〈上〉 (岩波文庫) (文庫)
by シュテファン・ツワイク, Stefan Zweig, 高橋 禎二, 秋山 英夫

価格: 798円 129点の在庫あり 中古価格 1円より

アントワネットやフランス革命を理解するための基本の書。
クラシックな翻訳も手伝って、当時のフランスを体感できること間違いなし。
マリーは本当に悪い女王であり、愚かな人間だったのか。
その答えがきっと見つかるはず。

王妃マリー・アントワネット (「知の再発見」双書)

王妃マリー・アントワネット (「知の再発見」双書)

王妃マリー・アントワネット (「知の再発見」双書) (単行本)
by エヴリーヌ ルヴェ

価格: 1,680円 29点の在庫あり 中古価格 118円より

歴史のみならず、文化や習慣にも多大な影響を与えたマリーのライフスタイル。
その華やかな生涯を美しいオールカラーのイラストと写真で紹介するビジュアル歴史本。
さらりと読めます。

マリー・アントワネットと悲運の王子 (講談社プラスアルファ文庫)

マリー・アントワネットと悲運の王子 (講談社プラスアルファ文庫)

マリー・アントワネットと悲運の王子 (講談社プラスアルファ文庫) (文庫)
by 川島 ルミ子

価格: ¥ 1円 8点の在庫あり 中古価格 1円より

ベルばらやその他の歴史本には詳しく書かれていないルイ・シャルルとマリー・テレーズのその後の運命。
虐待され、孤独のうちに衰弱死した王子の生涯があまりにも哀れ。
今は遺骨も発見され、愛する父と母の墓の側に眠っている。

関連する記事

おすすめの本

Image of 愛とは、怖れを手ばなすこと (サンマーク文庫 E- 45)愛とは、怖れを手ばなすこと (サンマーク文庫 E- 45)
by ジェラルド・G・ジャンポルスキー
愛を望まない人などいないにもかかわらず、多くの人は愛を経験できないでいるようです。 過去からひきずっている罪悪感に満ちた怖れが、今、愛を差し出し、受け取る能力を妨害しているのです。 怖れと愛を同時に経験することはできません。どちらの感情を望むかは、つねに私たちが選ぶのです。 怖れではなく愛を選びつづけることで、人とのかかわりの性質や本質を変えることができるのです
Image of 大事にされない女たち―男の本音を知りたいあなたへ大事にされない女たち―男の本音を知りたいあなたへ
by グレッグ ベーレント, アミラ ベーレント
 著者であるグレッグは、「最高の復讐は彼の人生をめちゃくちゃにすることで はなく、あなたの人生を全力で生き抜くことだ」と語りかけます。この言葉は、 失恋した女性だけに向けられたものではなく、現代に生きるすべての女性に向け られたもののように私には思えるのです。暴飲暴食、ストーキング、ゆきずりのセックス、出社拒否―。恋におぼれ、自暴自棄になっている女性たちに、未練を断ち切るためのヒントと、別れ際の男の本音を伝授。