才能(個性)と共に生きる 『アナと雪の女王』

2017年9月15日映画, 映画音楽

何をいまさら、『アナ雪』の話題です。

松たか子の歌う「ありのままに~」でヒットした主題歌『Let it Go』。

各国でも様々に翻訳されて、世界中で大人気となりました。

うちの居住地では、Let it go は Mam tę moc(マム・テン・モツ)

直訳すれば、I have this power (私にはこの力がある)

自己肯定に目覚めた女の子の力強い歌唱になっています。

才能と社会の共存

英語でも対象になっているのは it であって、「私」ではありません。

it とは何か。

それは「才能」や「個性」に置き換えれば分かりやすいと思います。

エルザが呼びかけるのは「私」ではなく、自己の内側から湧き上がる力
アナと雪の女王

周知のように、エルザは幼少時より、触れるもの全てを氷にしてしまう不思議な力を持っていました。
それゆえに大切な妹のアナを傷つけ、自分の力におののいて、長く引きこもってしまいます。

アナと雪の女王

世間一般に、「才能があれば成功して幸せになれる」と思い込んでいる向きがあるけれど、現実に突出した才能を持てば、生涯苦しむことになります。

やることなすこと、他人と違う。

あまりにも突出して、いつも周りから浮き立ってしまう。

考え方も、感じ方も、他人と異なる為、他人に永遠に理解されない。

まるでナントカ症候群みたいですけど、「才能に恵まれる」というのはそういうことです。

絵が上手いとか、計算力があるとか、何かの能力に長けるのとはまた別。

能力に長ければ、いい仕事について、成功するかもしれないけど、その閾値も超えて、天才の域に入ってしまうと、一気に孤独の断崖に落ちて、逆に誰にも理解されない、絶壁の生き方になってしまうんですね。

エルザの氷の能力も、そうした才能(もしくは個性)に置き換えると分かりやすい。

周囲の普通人にとって、エルザの能力は「異常」でしかない。

エルザ本人もそれをコントロールしようがないし、下手に見せれば、周りも自分自身も傷つけてしまう。

彼女が選んだのは、世間との断絶。

そうすることでしか自分を守れなくなってしまうんですね。

そんなエルザも船の事故で死んだ両親に代わり、女王の公務を背負うことになります。

エルザは『普通』であること──もしかしたら、世間以上に普通であること──を求められ、いっそう自分の能力を抑えざるをえません。

アナと雪の女王

それでも、才能なんて、自分で出したり、引っ込めたりできるわけがなく、やがて世間に知れるところとなり、エルザは社会を追われます。

雪の道を踏みしめながら、エルザが悟ったこと。

それは決して「自分から切り離せない」ということ。

それが異端であれ、凶暴であれ、自分の一部に他ならない。

ならば、才能を解き放とう。

それが求めるがままに、生きていこう。

その決意が、Let it Go だと思うのです。

ここでの主体は「私自身」ではなく、自己の内なる才能なんですね。

エルザが足で踏みしだくのは、既存の概念であり、普通であることを求める社会
アナと雪の女王

とはいえ、人間というのは、社会の中で生きていかないといけない。

本物の仙人でもない限り、氷のお城に閉じこもって、現実社会で生きていけるわけがありません。

すったもんだの末、エルザが辿り着いた結論は、『才能のコントロール』。

いくら何かに長けていても、それを振りかざして、我が儘に振る舞っていたら、周りはぼろぼろに傷ついてしまいます。

かといって、遠慮して閉じこもっていては、自分を見失ってしまう。

『才能』と『社会』という相容れない二つの世界の間で、自分を上手にコントロールすることで、自分も活かし、周りも幸せにするマジックを手に入れるのです。

アナと雪の女王

才能は自分だけのものではない。社会に還元してこそ、本物の華になる。
アナと雪の女王

才能という厄介な個性

おそらく世間が『才能』について語る時、「能力に長けること」と捉えているのが大半だと思います。

それはそれで意味があるし、社会においては有力な武器ですから、皆が能力としての才能を欲しがるのは当然のことと言えるでしょう。

でも、一定の閾値=世間が理解できる範囲を越えてしまうと、これはもう、重荷以外の何ものでもないです。

「何をやっても際立つ」って、普通の人から見れば、羨ましい限りかもしれませんが、当人にしてみたら、一生、降りてこられない雲の上を歩くようなもの。

誰と知り合っても、何をやっても、周りと相容れず、奇異の目で見られるか、永遠に理解されないわけですから、ほんまもんの生き地獄です。

なおかつ、才能のある人は、自分の才能の為に生きてしまうから、余計で周りに誤解されやすいし、並の幸福では満足できなくなる。

一生、それだけに時間を費やし、一生、それだけを追いかけて生きていくから、安住の地など、どこにもございません。

何かを手にしても、自分の才能に優るものはないから、永遠に『完璧』に飢えて、最後はどうにも救いがたいところまで落ちていく。

それが、本当に才能のある人の生き方であり、価値観です。

そんなの、羨ましいと思います?

社長になった、1億もうかった、ガハハと笑える価値観の方が、うんと楽だし、バーキン買って満足できるなら、そっちの方が幸せですよ。
自分の才能に振り回されて、得体の知れない「完璧マニア」に陥るよりは。

エルザは、幸いにも自らをコントロールする術を見出し、周りと調和を図ることに成功しました。

そして、それが、才能人の一つの幸せの形なのだと思います。

Let it go の it が行き着く先は、自分だけの牙城に閉じこもるのではなく、社会とのバランスを大事にしなさいよ、というのが、ディズニー先生の一つの回答ではないでしょうか。

ブルーレイ商法も、だんだん手が込んできましたね^^;

劇場版DVDと抱き合わせたり、吹き替え盤を何度もリリースしたり。

時代は動画配信に変わりつつあるんだから……と思うけど、動画配信も、機能がイマイチ。

流しで見るにはいいけど、「一時間前の場面に戻りたい」「早送りしたい」という時、DVDみたいに融通が利かないから。

それに配信が終了してしまったら、二度と見られないし。

動画配信がポピュラーになっても、DVDを買う人は買うでしょう。

ディズニーも、これからいろんな商法を考え出すんだろうね。