育児と家庭

失われゆく子供らしさ

2007年12月7日

日刊スポーツの公式サイトに、『世界一小さい新聞』(通称「ベビー日刊」)というブログがあります。
そこの記事がなかなか面白いので、時々、見に行っているのですが、8月のアーカイブに、『真夏のクソガキさま』というタイトルがありました。
一部抜粋しますと……

http://blog.nikkansports.com/general/yoshida/2006/08/post_127.html

親がしつけをしないものだから、
しつけ糸がほつれたように、大人の空間が
子供によって侵食される現象が、あちこちで起きている。

40過ぎの女性と小学3年ぐらいの男の子。
どうやら母子で、この男の子が騒がしいし、落ち着きがない。
騒がしいといっても並のレベルではない。
しかし、母親はまったく注意をしない。

(そこで知り合いの編集者が母子に注意した)

失礼ですが、この可愛いクソガキさまのお母様っすか。
他のお客様はみな、暑い夏の午後のひとときを静かに
お茶とお菓子で語らいを楽しんでおられますので、
なんとか、このクソガキさまをおとなしく
イスに座られておいて下さいよ。

私はこれから仕事で大事な打ち合わせをしなければならないんです。
しかし、あなたの可愛いクソガキさまのおかげで、
打ち合わせに集中できないのです。
泳ぎたいなら、プールへお出かけくださいよ。
それとも、クソガキさまをソトに放り出したりしては、
このお店に迷惑がかかりますが、どうなさいます?

母子がようやく去った途端、店内で予期せぬことが起きた。
客が一斉に編集者に感謝し、小さく拍手をした人もいたのだ。

異口同音の喜びの声を聞きながら、たったこれだけのことなのに
どうして母親は理解して「ごめんなさい」といえないのだろうか、
と思った。

——————————————

タイピカルな話ですけど、私は、「どっちもどっち」という印象を受けました。
注意するなら、もっと他に言い方があるでしょうにね。

それにしても、近頃は本当に、こんな母子が増えているのでしょうか。

「親のしつけがなってない」という言葉は、私が10代の時からありましたけど、大阪で暮らしていた頃は、しつけのなってない子供の為に不快な思いをしたことなど無かったですけどね。

もちろん、騒ぐ子などはいましたけど、「子供なんてそういうもんだろう」ぐらいにしか思わなかったような。

それだけに、近頃、ブログやニュースなどで、「DNQのバカ親」とか「しつけのなってない子どもが急増」とかいう言葉を目にすると、うーむと考え込んでしまうんです。

どこまでが「腕白坊主」で、どこからが「行儀悪い」と判断されるのか、それは受けとめる側の感性にもよるでしょう。

バスの中で子供が、「あっ、お母さん、あそこにヘンな看板がある!」と叫んだだけで、「行儀が悪い」とみなされるなら、子供が社会で生きていくことなど出来ないと思うのです。

ですから、私は、「しつけがなってない」という意見の背景には、二通りあると思うんですね。

一つは、本当のほんとに、しつけがなってない子供が急増している。

もう一つは、社会全体が子供らしさを受け入れられなくなっている――という事です。
分かりやすく言えば、「子供キライ」「うっとおしい」と感じる人が増えている、と。

子育てする以上は――そして、社会全体でバックアップするからには――受けとめる側に「寛容さ」は不可欠ですよね。
では、その寛容さの元になるのは何かといえば、「子供らしさ」に対する理解です。

ところが、この「子供らしさ」に対する理解が薄れてきている――もっと突っ込んだ言い方をすれば、「子供」ってものを知らない人が、親にも、それ以外の一般人にも急増しているのではないか、というのが私の印象です。

第一の理由は、少子化によって、近所に「悪ガキ」やら「泣き虫」やら、うじゃうじゃした子供の姿を見る機会が減ってきていること。

第二の理由は、親戚、知人を問わず、家同士の交流が薄れて、「我が子以外の子供と深く接する機会がない」ということです。

もし、日常的に、「悪ガキ」やら「泣き虫」やら、ケダモノみたいな子供達に囲まれて暮らしていたら(窓を開けたら、そこらじゅうから、子供の笑い声や泣き声が聞こえてくる)、子供に対してもすっかり免疫ができて、多少、周りで騒がれても、そこまで神経質にならないでしょう。

もちろん、中には、「本物の非常識」もあるかもしれません。

でも、「本物の非常識」に対しては、注意のしようもあるわけで、ただフィーリングだけで「うるさいなぁ」と思っているようなケースは、『本人の感じ方』によるところも大きいと私は思うのです。

「育児とはこうあるべき」というリクツは持っていても、「子供らしさとは何か」と問われれば、たちまち答えに詰まってしまう人も多いでしょう(多分)。

そうした無知と、経験の無さ(子供と接したことがない)からくる誤解が、『しつけが悪い』であり、それは当の親自身も理解していなくて、我が子のことを異常か、病気かと、クヨクヨ思い悩んでいるのが今時の育児――という気がします。

これは、とある育児系サイトにあった、多動症を疑うお母さんの書き込みなのですが、

庭で遊ばせる。

ゆうべの雨でバケツに水が溜まってる。
当然、ひっくりかえす。
滑り台にぶちまけて、
そこをご丁寧にも滑る。

フェンスに登って
「おっお~!(本人は、やっほ~! のつもり)」と叫ぶ。

石を投げる、靴をはかずに裸足で遊ぶ、
物干し竿にぶらさがる。

なんでもありだ。
なんでもしてくれる。
嫌だなぁ~と思うことを一通りしてくれる。

これを多動と呼ばずになんと呼ぶ。

個性か?

個性なのか?

摘んではいけない個性なのか・・・。

多動症のお子さんをもつママさんや、その他の方も教えて下さい。
多動症とはどんな仕草や行動から分かりますか?
もちろん最終的には医師の診断ですが、まず気になる行動などを知りたいです。
うちの一歳三ヶ月の♂はとにかく落ち着きがないです。
外出時も手をつないで歩いてくれないときが多いです。
こちらの言う言葉は結構理解してますが、まだ単語は出ません。
何事も指さしで要求します。
こういう行動は多動症に当てはまったりしますか?
症状は人それぞれだとは分かってますが、なんだか不安で…

「大声を出す」「そこらじゅうを走り回る」「言うことを聞かない」なんて、子供らしさの基本中の基本だし、「道端に寝ころぶ」「展示物をいじくる」「水たまりでザブザブする」「植木を引き抜く」「ゴミ箱をひっくり返す」「目を離すと、どこかに消える」「何でも触りたがる」等々、元気で、遊び好きで、好奇心旺盛な子供なら、「ゲッ!」と思うことは一通りやってくれるんじゃないでしょうか。

むしろ、目の前に、いろんな面白いものがあるのに、指一本動かさず、興味も示さない方が問題だと思うんですけどね。

つまり、子供が正常に、それも元気いっぱいに育てば、大人の世界はムチャクチャにされるのが当たり前で、それが彼らの仕事だといっても過言ではないでしょう。

『親力』で有名な親野チカラ先生が、ベネッセの教育サイトで、「もともと、子供というのは、大人をイライラさせるようにできているのだ」と書いておられましたけど、まさにその通り、彼らは存在自体が脅威だと思います。
大人のリクツではコントロールできない、エネルギーの塊なんですね。

それを上手く手なずけよう、思う通りに動かそうとするから、幾多のストレスが発生するわけで、「ノウハウで、どうにかできる」というような幻想を持ちさえしなければ、我が子に幻滅することはないと思います。

ある意味、子供に振り回されながら、手間暇かけて育てる(時間をかけて、じっくり見る)ということを、親自身が否定している(それは下手なやり方だと誤解している)のが、今時の親と言えるのでもないでしょうか。

そうでなければ、この少子化の時代に、これほど育児・教育ビジネスが興隆したりしません。

本来の子供らしさ――時に、破壊的で、反抗的なエネルギーを骨抜きにして、自分の扱いやすいような、あるいは他人が賞賛するような、問題なき子供に変えることが「育児」や「しつけ」ではないですから。

他人さまに迷惑をかけたら「すみません」と謝ることは必要でも、ワケも分からずそれをしてしまう子供に対して、生まれながらの個性やエネルギーを封殺するようなしつけの仕方は不要だと、私は思っています。

今って、何かといえば、「メーワク、メーワク」って言いますけどね。

この世に、他人に迷惑をかけずに生きている人など、あるんでしょうかね。

子連れがメーワクだと言う人だって、年を取って足腰が立たなくなれば、若い人の世話になるのでしょう。
その中には、自分が舌打ちした子供だって、含まれるかもしれないのですしね。

本物の非常識と思うなら、上手に注意すればいいわけで、感情でイライラしているだけなら、単に大人げないだけではないか、と。
私は、世の多くの声に対して、言いたくなるわけです。

近頃は、「我が子は異常ではないか」と心配する人が多いですし、実際に、専門家の助言を必要とするような、深刻なケースも増えてきているのも事実です。

でも、我が子が異常だとか、騒ぐ子はダメとか考える前に、「本来の子供らしさとは何か」ということを、今一度、自分自身に問いかけて欲しいですね。

もしかしたら、あなたは、これまで子供と接する機会などほとんどなくて、頭でしか子供を知らないタイプなのかもしれませんし。

上記の「ベビー日刊」の記事にはたくさんのコメントが付いていますが、その中で、私がナイス!と思ったのは、以下の意見です。

最近の子供たちは大声を出して遊べる場所が一体どれくらいあるのでしょうか?
もしかしたら、このような行動は不満の鬱積が原因ではないかと思います。
もちろん、公共の場で騒ぐことは許されることではありませんが…

「子供に行儀良くしなさい」と言うならば、それ以上に、大声を出して騒いで遊べる機会を与えるのが、親の務めだと思いますよ。

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