書籍と絵画

絶望名人カフカの人生論 ネガティブすぎて笑っちゃう

2012年2月28日

今、非常に読んでみたい一冊。

カフカは中学生の時「変身 (新潮文庫)」にトライしたけど、正直、ぜんぜん面白くなくて! まあ、中学生の読みこなせる小説じゃなかったんだろうけど、以来、ノータッチ。

でも、最近、西岡兄妹の「神の子供」というホラー・エログロ漫画を衝動的にダウンロード購入してしまい(ebookjapanで連載しているコラムニストのレビューがあまりに素晴らしくて釣られてしまった)・・なんでこんなもの買ってしまったんだろう……西岡兄妹のバカ~(T^T) みたいな気持ちでAmazonの関連商品を辿っていったら、こちらの本に行き当たった次第。

あ、西岡兄妹に決して文句があるわけじゃないですよ。センスのある魅力的な作家さんだと思います。フランツ・カフカに傾倒しておられるとか。ただもう「神の子供」がすんげーエログロで、こんなもの衝動買いしてしまった自分が信じられな~い、って気持ちです。萩尾望都の短編集でもダウンロードすりゃよかった(泣)

そんなわけで、運命的に巡り会った(?)『絶望名人カフカの人生論』。

誰よりも落ち込み、誰よりも弱音をはき、
誰よりも前に進もうとしなかった人間の言葉――

将来に、世の中に、自分の心の弱さに、
結婚に、人づきあいに、不眠に、学校に、
そのほかありとあらゆることに絶望したときに読む本!
「いちばんうまくできるのは、倒れたままでいることです」――カフカ
……………………………………………………
・頑張りたくても頑張ることができない
・手にした勝利を活用できない
・人生のわき道にそれていく
・気苦労が多すぎて、背中が曲がった
・散歩をしただけで、疲れて三日間何もできない
・やる気がすぐに失せてしまう
・死なないために生きるむなしさ
・親からの見当違いな励まし
・教育は害毒だった
・会社の廊下で、毎日絶望に襲われる
・愛せても、暮せない/ほか――目次より
……………………………………………………
カフカの絶望の言葉には、不思議な魅力と力があります。
読んでいて、つられて落ち込むというよりは、
かえって力がわいてくるのです。――編・訳者まえがきより

*

しかもAmazonのレビューが面白すぎて、こっちの方がウケてしまった。

ブックレビューで書評家が「笑っちゃうほどネガティブ」と称したカフカの名言集。冒頭1ページ目から凄い。「将来にむかって歩くことは、ぼくにはできません。将来にむかってつまずくこと、これはできます。いちばんうまくできるのは、倒れたままでいることです」と名言でもなんでもない、ただのネガティブな愚痴みたいなのがたくさん詰まっていて楽しい。・・・これは結婚を申し出たフィアンセに贈る手紙のなかの一文らしいが、結婚する気あんのかこいつは。これで「わーカフカ君素敵」ってなると思ってんのか

仕事への愚痴と、父親への愚痴と、人間関係の愚痴が主な内容。「目標があるのに、そこに至る道はない。道を進んでいると思っているが、実際には尻込みしているのだ」というドキッとするような名言もあり、フリータやニートも味わい深い。

いつだったか足を骨折したことがある、生涯で最も美しい体験であった」とか、まったく意味不明な言葉も多々あり、かと思えば「誰でも、ありのままの相手を愛することができる。しかし、ありのままの相手といっしょに生活することはできない」 という素晴らしい名言もあり、「うわーたまにはいいコト言うがなーカフカー」と感心していると、欄外説明に「恋人に言われた言葉」って書いてあって、「お前の名言じゃねぇのかよ」と思わず叫んでしまった

こういう人こそ、今の日本の論壇に出てくれば面白いのよ。このお先真っ暗、絶望不況の真っ只中で、元気だ! 前向きだ! 幸福だ! を連呼する声よりも、笑っちゃうほどネガティブな意見がとうとうと語られるのも一興ではないか。

私、最近、「心にトゲ刺す200の花束 究極のペシミズム箴言集 (祥伝社黄金文庫)」とか「ラ・ロシュフコー箴言集 (岩波文庫)」みたいな、ちょっとひねくれた文章ばかり好んで読んでるせいか、あまりにもっともで、文句のつけようのない意見を目にすると、「それだけが真実じゃなかろうね」と思うことが多い。

「正しい意見」は人を安心させるけど、魂までは救わない、そんな気がして。

ともあれ、近々、お取り寄せして読んでみようと思う。『変身』にももう一度トライしよ。

興味のある方はぜひ。

*

で。

肝腎な自分自身の読後レビューを書いてなかったので、追記。

一言、いい本でした

心底カフカの文学を愛し、全身全霊で理解している作者の気持ちが全文にこもっています。

文字ぎっしりの評論ではなく、作者が特に感銘を受けた文章をピックアップし、それについて自身の感想や解釈を述べるスタイルを取っています。

ちなみにカフカをATOKで変換すると「過負荷」になる。

本当にその通りの人生だったかもしれないけれど、だからこそ、心の内側に迫るような作品が書けたもの。

人間って、愛すべきものだと思う。闇に光を当ててこそ、深淵を覗き込んでこそ、人間として生きて行くことの価値が分かるんだよ。
光がこの世の全てじゃない。

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