映画

薬師丸ひろ子&真田弘之の角川映画『里見八犬伝』

2009年12月5日

薬師丸ひろ子の魅力

ひろ子ちゃんの魅力を、ちょいと下品な言葉で表せば『処女性』の一言に尽きる。

処女性というのは、精神的にも社会的にも「初である」ということだ。

「世間? 何それ? おじさん、親切ね、どうもありがとう♪」

大人の好意や忠告を素直に受け取り、その裏に何があるかなど考えもしない。

まして男性など、異次元も一次元。

処女というのは、男性の顔だけ見て、腰から下には考えが及ばないものです。(いろんな意味で)

それが邪悪なモノを内に秘めた男性から見れば、危うく、優しく、天使のように純粋で、久しく忘れていた童心を思い起こさせてくれるわけですね。

今もなお「アイドル」は存在するけれど、何故に、ひろ子のレベルに追いつかないかというと、世間も男も既に知っているような女の子が処女の振りをするからでしょう。

中には徹底的に演技できる人もあるけれど、客にとって、これほど白けるものはございません。

前に、一流クラブでナンバーワン・ホステスだったママに話を聞いたことがあるけども、客には、どの子が誰と寝たか、すぐに分かるそう。

こういう世界だから、誰かといい雰囲気になって、ベッドを共にすることもあるだろうけど、客はやっぱり贔屓の女の子を信じたい。いつかは自分に振り向いてくれるのではないかという夢も持っている。

たとえ、そういう事実があったとしても、いつ、誰と寝たかなど、具体的な事は知りたくないのです。

まして、自分の上司とか、自分のコネで店に連れてきた取引先の営業マンとか、有り得ない話ですよね。

そんな事が傍目にもバレバレになれば、客もアホらしくなって店に来なくなる。

だから、たとえ美人でも、誰と寝たか、すぐに顔に出るような女の子は絶対に雇わないそうです。

客が白けて店から離れる時は、周りの知人も一緒になって来なくなる。店側にとっては、大変な損失だからです。

客が水モノなのは、芸能界のアイドルも同じ。他の男の匂いがプンプンする女の子には熱の上げようがないし、そんなのが処女ぶっても面白くないですよね。(恋多き女を前面に出せば、すごい存在感になることもあるけれど)

「アイドルの恋愛禁止は人権侵害」という声もあるけれど、プロデューサー側が恋愛を禁じる意味は、一般人のそれとは大きく異なります。

男の子を好きになって、それを芸の肥やしにするのは一向に構わない。

だけども、世間を知らない若い女の子は、恋をすると、往々にして男に入れ込んでしまう。

プロデューサーより男の言うことを聞くようになり、それがファッション、芸風、言葉遣い、日常生活、全てににじみ出すようになる。

相手の男も、ショービジネスをよく理解して、自制の利くタイプならいいけども、中には、無知なくせに野心だけは旺盛な人間もいる。
「あのプロデューサーより、オレの方がお前のことをよく知っている」などと言い出し、女の子をますます混乱させ、疑心を抱かせるなるわけです。

たとえば、売り出す側は、いつまでも人形みたいなコスチュームで可愛く踊らせたいのに、恋をした女の子は、「もっと大人っぽいのがいい」「恋愛ものはやりたくない」などと言い出し、以前とは違う価値観をもつようになります。
メンバーだって、気の進まないパフォーマンスでも、ビジネスの為に一所懸命にやってるのに、その子だけがプライベートも充実して、皆と違うことを主張しだしたら、腹立ちますよね。

挙げ句に、相手の男に「君は才能があるから、独立した方がいい」などと吹き込まれたら、もうオシマイ。
方々に亀裂が入って、商売も成り立たなくなってしまいます。

いわば、あっちの世界がいう「恋愛禁止」は、商業的に「違う価値観を持ち込むな」という意味が大きく、恋愛自体を禁じているわけではないと思いますよ。
訳知りのおじさん達は、恋に夢中になった無知な女の子がどうなるか、非常によく理解しているのです。

その点、ひろ子ちゃんは、周りの大人(男性)に、しっかり守られていた感があります。

高倉健を筆頭に、酸いも甘いもかみ分けた良心的な大人の男が、ひろ子ちゃんの素朴な魅力を損なわないよう、いろんな知恵を授けて、大事にしていたと思いますヨ。

だけども、いつまでも無垢な少女のままでは、人間的にも、役者としても、成長が止まってしまう。

そこで制作されたのが『Wの悲劇』です。

あの作品で、精神的にも、芸の上でも、少女から大人の世界に送り出すことに成功し、将来の道を作ったように感じます。

多分、あの時代、世間がひろ子ちゃんに感じた無垢は、大人社会の良心でもあり、それゆえに安心して楽しめたのではないでしょうか。

ひろ子ちゃんといえば、『セーラー服と機関銃』の「カ・イ・カ・ン……」が有名ですが、快感なんて、大人の女性の言葉でしょう。それを無垢なひろ子ちゃんに言わせたから、訳知りの大人はドキドキし、彼女の将来に興味が持てたのだと思います。

逆に、世間も男も知ってそうな女の子が、いくらひろ子ちゃんを真似て「カ・イ・カ・ン……」と口にしても、どこか白々しく、言わされている感がハンパない。

でも、それは女の子が悪いわけではなく、早々と世間を見せてしまった周りの大人(特に中年オヤジ)の落ち度ではないでしょうか。

里見八犬伝では、真田広之と初のラブシーンを演じたけども、男に抱かれても、ひろ子は、やっぱり、ひろ子。

「やっぱ、女優として、いつかはやらなきゃいけないんだよね。ついにこの日が来たんだよね。これが本物の女優への登竜門よ。私、一所懸命に頑張りますっ!!」

北島マヤのような健気な気持ちばかりが前面に押し出され、全然、ロマンチックじゃありません。逆に痛々しいくらい。(角川の話題作り)

それがまた可愛くて、ひろ子、がんばれよ……と応援したくなるのが、彼女の最大の魅力だと思います。

里見八犬伝の美しさと面白さ

角川映画に一番勢いがあった頃の作品ですよね。『魔界転生』も圧倒だったけども、里見八犬伝も、あの頃の邦画らしいパワーと遊び心が感じられます。

作品の要は、なんといっても玉梓姫を演じた夏木マリ。ゴージャスかつ妖艶。誰にも真似できません。

夏木マリ 里見八犬伝

血の池に身を浸して、永遠の若さを得る。オールヌードを披露して、体当たりの演技でした。

夏木マリ 里見八犬伝

夏木マリ 里見八犬伝

息子の目黒弘樹とはちょっと近親相姦な母子です。

夏木マリ 里見八犬伝

千葉真一と寺田農の修験者姿。似合いすぎて怖い。

千葉真一 里見八犬伝

ここで松坂慶子(=伏姫の声のみ)が出てくるのは意外でした。
姫の身体から八つの珠が飛び散り、八剣士の印となる。
この巻物風の演出はよかったです。美術さんが手書きされたのかな。

松坂慶子 里見八犬伝

志穂美悦子も綺麗だわ・・。アクションもできるし、芝居も上手。この頃のジャパンアクション・クラブも最高でしたね。ちなみに私の中学の同窓生が通ってました。あの後、女優になれたのかしら……。

志穂美悦子 里見八犬伝

志穂美悦子 里見八犬伝

真田広之も、スーパー・ハンサムではないのだけど、立ち居が綺麗だし、アクションも上手い。
彼の才能を見出した千葉真一はさすがという他ない。

真田広之 里見八犬伝

岡田奈々の美しさも神がかってました。この頃の女優さんは、真っ赤な口紅がよく似合う。
みな顔が大人びてるからね。

岡田奈々 里見八犬伝

蛇つかいの妖之介を演じた萩原流行。最近、事故で亡くなられて残念です。
本作は、美術や衣装も豪華版。グスタフ・クリムトの絵を模した背景が素敵です。

里見八犬伝 萩原流行

京本政樹も美しいこと。妖怪の美女軍団と太刀を交える演出がいいですね。
日本女性と長刀は、ほんと絵になります。

京本政樹 里見八犬伝

京本政樹 里見八犬伝

ひろ子ちゃんの入浴シーンも話題になりましたな。

里見八犬伝

フナムシに襲われて、きゃぁあ~あ~と叫ぶシーン。「オレたちひょうきん族」で山田邦子が真似して、めちゃくちゃ可笑しかったのが今も印象に残っています。あの頃のバラエティも最高やった。

里見八犬伝

ひろ子……

里見八犬伝

発泡スチロールに絵の具を塗っただけ……みたいな重量感のない大柱。それでも楽しめた。
これぞ東映! 太秦映画村!

里見八犬伝

なんだかんだで買ってしまったDVD。作品自体が古いので、リマスターしても、そこまで高画質にはならないけど、アクションや美術、ベテラン勢の演技がいいので、お宝ものですよ♪

里見八犬伝

記:2017/02/11

YouTubeの動画が削除されているのに気付いて、書き直しました。

2009年のレビュー

やっぱ、角川映画は面白い。

この『里見八犬伝』も20年ぶりに見たけれど、歳月をまったく感じさせないほど魅力的だった。

いかにも「東映太秦映画村~!」という感じの発砲スチロールの柱が倒れてきたり、イトーヨーカ堂のチビッコ・ショーに出てきそうな怪物が登場したり、スピルバーグやジョージ・ルーカスのCGバリバリの映像に比べたら随分見劣りはするけれど、それがかえって映画ならではの醍醐味を醸し出している。

大道具さん、小道具さん大活躍の、オール手作りのセットを見ていると、本来、『映画』って、こういうものじゃなかったの?──ということを、懐かしく思い出させてくれるのだ。

*

そして何より、役者が上手い。

登場しただけで空気が変わる。

ひとつ間違えば滑稽でしかない作り物のセットの中で、なんと見事に化け物や剣士を演じておられることか。

その姿を見ていると、いつしか発砲スチロールが気にならなくなる。

学芸会のセットみたいな魔宮がリアルに輝き出す。

さすが「プロ」、さすが「役者」と感嘆せずにいないくらい。

魅力と才能に満ちあふれている。

*

それにしても、「玉梓」を演じる夏木マリのなんと妖艶で魅力的なこと。この映画の真のヒロインといってもいいぐらい、その存在は際だっている。(もとふじぃ~!!という叫び声がいい。玉梓はお母さんなんだよね)

マザコンにして男の色気ムンムンの、「蟇田素藤(ひきた・もとふじ)」(=目黒祐樹)も秀逸だし、蛇の化身である「妖之介(ようのすけ)」も、ネチこいいやらしさを醸し出して気味が悪いぐらい。

薬師丸ひろ子の「きゃぁあぁあぁ~」という気の抜けたような叫びっぷりも笑えるし(「オレたちひょうきん族」でパロディをやっていた)、声だけ出演している松坂慶子も、「姫」というよりはマダムという感じ。色っぽい。

千葉真一は相変わらずカッコいいし(彼になら、斬られても本望かも)、デビューしたての頃の京本政樹も本当にみずみずしい。

この頃から一躍知名度が高まった真田広之は、初めて見た時は、「えー、こんなお猿顔が次代のホープなの」と思ったものだが、やっぱり千葉真一は見る目があったね。今や日本を代表する国際派俳優。(葉月里緒奈とのスキャンダルはガッカリだったけど・・)

そして、志穂美悦子や岡田奈々のなんと美しく清冽なこと。

今時、赤い口紅がピタリと顔に収まる女優さんがいるだろうか。

*

この作品は今でも海外で高い評価を受けているそうだが、頷ける話だ。

単純に「面白い」。

それがどうした、と言わんばかりの迫力が見ていて爽快、日常の垢をさっぱり洗い流してくれるからだろう。

私も角川映画が一大ブームだった頃は、あまりの思想のなさにうんざりすることもあったけれど、今では「いいものを見せてもらった」とつくづく思う。

ほんと、いい役者さんが、いっぱいいたんだなぁ、って。

このトリュビュートがよく出来ています(^^)

※削除されました

Youtubeより

玉梓姫が親兵衛に出生の秘密を明かす場面。夏木マリ様の妖艶なこと。。目黒祐樹の色男っぷりも流石。

*

これが発泡スチロールばりばりのラストファイト。80年代の角川映画らしい演出。
役者の力量もさることながら、殺陣も素晴らしいです。
セットも、なまじCGなんか使うより、発砲スチロールの方が温かみや重量感があって、よっぽどいいね。
これぞ「映画作り! 東映太秦村!」って感じ。大好きです。

*

これが話題になった薬師丸ひろ子と真田広之のラブシーン。けっこう目のやり場に困る。

※削除されました

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悪霊につかえ、不死身の妖怪となった玉梓は、かつて里見家に征伐された恨みを抱いて館山城に攻め入った。里見一族は虐殺され、静姫だけが生きのびる。その姫の前に仁・義・礼・智・忠・信・孝・悌の各字を刻んだ八つの霊玉を持った八剣士が集まる。妖怪軍団の巣窟ヘ攻め入り、激闘の中で一人一人命を失ってゆく八剣士の中、親兵衛と静姫は最後の力で玉梓に挑むのであった。。。角川映画35周年記念 デジタル・リマスター版

80年代の角川映画、当時を代表する役者たちの魅力がぎゅっと詰まった必見の娯楽大作。
悪役も、剣士達も、それぞれの個性が十二分に生かされて、演技を見るだけでも価値があります。
深作監督も見せ場を作るのが上手いし、ごちゃごちゃ考えず、エンターテイメントとして楽しんでください。

わが国の伝奇小説中の「白眉」と称される江戸読本の代表作を、やはり伝奇小説家として名高い白井喬二が最も読みやすい名訳で忠実に再現した名著。長大な原文でしか入手できない名作を読める上下巻。

いわゆる図解本。
手っ取り早く作品を理解するにはもってこいではないでしょうか。

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