育児と家庭

「育児ストレス」の捉え方

2007年12月7日

私は今、家族そろってアメリカの義姉さん宅に滞在しています。

アメリカ滞在中は、幼稚園も保育園も無いので、昼間は自分一人で見ている状況ですけど(ヤツラ、新しい場所に来て、めちゃハイテンションっすよ)、夕食の準備とか、子供の遊び相手とか、義姉さん一家が仕事や学校から帰ってきた後はたくさんの人手があるので、それだけでもずいぶん救われています。

ポーランドでは究極の密室育児を体験した私ですが、今は義姉さん一家に囲まれ、その上、義母さんやもう一人の義姉さんとの交流もあって、精神的にはずいぶん楽させてもらっています。

この二週間に、二人の子供を義姉さんや義母さんに預けて、夫と二人でショッピング・モールに行く事もできましたし、総出で出掛けたディズニー・ワールドでは、子供そっちのけでスプラッシュ・マウンテンジェット・コースターなど、いろいろ楽しませてもらいました。ほんと、生き返りました。

おかげで、それまで悲惨なくらい苦しかった育児ストレスも一段落し、今はこうして育児のメルマガを書けるまでに回復したのですが、自分以外に子供の相手をしてくれる人がいて、なおかつ夫以外の話し相手がすぐ側にいる状況がこれほどラクなものとは夢にも思いもしませんでした。

恐らく、同居していたらそうなのでしょうけど、それはそれでまた難しいところもありますからね。

一概に、核家族より同居の方が育児がラクです、なんてことは言えません。

それにしても、「育児ストレス」というのは、一体何ものなんでしょう。

私はこれまでに大きな育児ストレスを三回体験したことがあります。

数日では回復しなかった、どん底のストレスです。

一度目は、上の子が一歳近くになってもまだ熟睡せず、明け方はほとんど一時間おきに起こされて、私も昼夜逆転し、一日中フラフラだった時。(これは卒乳と同時に5時間以上連続して眠るようになってから解消しました)

二度目は、下の子の授乳中、上の子に毎回羽交い締めにされたり、噛みつかれたり、背中に飛び乗られたりしていたのに加え、下の子をキャリーに抱き、上の子を手押しの三輪車に乗せながら、子連れ狼みたいな散歩を毎日3~4時間も続けていた時。(これは上の子が保育園を再開して解消)

三度目は、二人の子が体調を崩して、ずっと家に居た最近のこと。モンキーパークのような二人の子供に家の中をメチャクチャにされた上、登園をめぐって夫と意見が合わなかったことが引き金になりました。

今は義姉さん宅に居るので、自然に解消されましたが……。

いろいろ振り返ると、一口に「育児ストレス」といっても、そうなる原因は複合的です。

単純に「子供相手に疲れた」だけでは大きなストレスになりません。

私の場合は、海外在住の核家族で、一人で外出することも、友達に電話をかけることも出来ない密室状態になりやすいこと。これが積もり積もって、育児ストレスを引き起こすケースが大半です。

次は、夫と育児に対する考えが合わない時。

手伝いは非常に良くしてくれるのですが、トイレ・トレーニングや食事など各場面における微妙な考え方の違い――とりわけ、子供が鼻タレ状態になった時の登園に対する考え方が決定的に違うので、これが育児や日常生活におけるストレスを倍増させる要因になっています。

私の場合は、この2点がネックですね。

それを除けば、ほとんど悩みらしい悩みはありません。

(トイレ・トレーニングや言葉の遅れ、小食など、子供自身に関する事はほとんど気にならない方なので・・)

しかし、人によっては、「姑に『アンタのやり方が悪い』と嫌味を言われた」とか、「隣のママが競争しかけてくるのでプレッシャーに感じる」とか、「夫の帰宅が遅くて平日は母子家庭状態」とか、「元同級生の○○ちゃんは今でも綺麗で、仕事もバリバリしているのに、私はすでにオバサン体型で、何の楽しみもなくて……」とか、いろんなプチ・ストレスが複合的に絡み合って、いよいよ本格的な育児ストレスへと発展していくケースが多いのではないでしょうか。

「子供のやること、なすこと、全てにイライラする」

「何でもないことで気が狂ったように怒ってしまう」

「子供に冷たく当たってしまう」

こうした症状が出た時、真っ先に考えるのは、「虐待」であり、「母子関係の歪み」だろうと思います。

「私は虐待しているのではないか」

「子供に愛情の持てない、悪い母親で、いずれ子供の性格も曲がってしまうのではないか」

と、自分を責め、子供の心の発達について否定的に考える人が大半ではないでしょうか。

しかし、私は、「育児ストレス」と「虐待」と「母子関係の歪み」を同次元で考えてはいけないと思うのです。

「育児ストレスだから虐待する」「母子関係が歪んでいるからイライラする」という風に、全部ごっちゃにして考えると、自己卑下するばかりで出口が見えなくなるからです。

たとえば、世間で「虐待母」と考えられている人が、日常的に育児ストレスを感じているかと言えば決してそうではないでしょう。

炎天下の車内に子供を閉じこめて何時間もパチンコする親は、それが悪いと思わないから、子供を死なせるまでに至る訳で、自分の不満やイライラより、やっぱり子供の事が気になるタイプは、子供の生死に関わるような虐待にまで落ちたりしない……と私は思うのです。

食事を全く与えないで、全身アザだらけになるまで殴る、蹴るを繰り返す親も同様ですよね。

そういう人は、「どうにかして良い親になろう」と苦しんだり、自分を責めたりしないから、誰の助けも借りないで、ついには子供を死なせてしまうのでしょう。

自分で激しいストレスや異常性を感じて、「これはヤバイ、何とかしなければならない」と思っている普通のストレス・ママは、誰かに「あなた、大丈夫? お手伝いできることはない?」と助け船を出されたら、それで救われるんです。

「うるさい、他人の子育てに口出しするな」と突っぱねて、子供のアザを隠そうとする親とは根本的に違うと思います。

「ストレス性のイライラ」と「虐待」を同じ次元で考えたら、余計に苦しくなりますよ。

私は、「ストレス」というのは、悪い状態から良い状態にリバウンドしようとする強烈な心の反応だと思います。

愛情が無いから……人格が曲がっているから……育児ストレスに苦しむのではなく、元々が良いから、今現在の、叩いたり、怒ったりしてしまう自分に嫌気が差すのだと。(自分をヨイショするような表現で申し訳ないですが)

最初から、子供を叩いたり、怒鳴りつけたりすることを楽しみに産む人なんてないでしょう。

産んでみたら、「こんなはずじゃなかった」の連続で、ついに理性の屋台骨がポッキリ折れてしまう人が大半ではないでしょうか。

一般のママさん方が、「育児ストレス」と呼んでいるものの多くは、複合的な育児疲れと日常生活における不満の集積(とりわけ夫や姑など近親者に対する)であり、今、鬼みたいな顔で子供を怒鳴りつけている人も、物理的・時間的に子供と距離を置いて、あるいは援助者を得て、絶対的な仕事量が分散されれば、一気に良くなるんですよ。

たとえば、子供の離乳食が進まずイライラしている人も、三度に一度は義母が作ってくれて、義母がやってもやっぱりダメだと分かれば、「自分のやり方が悪い」とか「我が子がオカシイんじゃないか」とか、そんな風に思い詰めたりしないと思うんです。

あるいは、子供の癇癪に手を焼いている人も、三日に一度は義父が外に連れだしてくれて、あのワンワン・ギャンギャンを耳にする時間が一時でも消えて無くなれば、全然違いますよね。

それに、子供だって、母親以外の誰かと一緒に過ごした後は、ちょっと態度が違ったりするんです。

私は、いわゆる「育児ストレス」を改善する具体的かつ効果的な方法は、物理的・時間的に子供と距離を置くことだと思います。

母親としての心構えだの、育児を楽しもうだの、そんな精神論で根本的なストレスは解消しないし(何となくラクになったような気がするだけ)、「子供がみるみるいい子になる50の法則」だの何だのと、いろんなノウハウを取り入れたところで、育児疲れから永久に解放されることはありません。

子供と距離を置くことについて(もちろん常識の範囲内で)、「可哀相だ」「育児放棄だ」と責める人があっても、それは究極の育児ストレスを経験したことがないからで、分からない人の言葉を真に受けて、自分まで一緒になって「私って、悪い母親」なんて落ち込む必要などないんです。

「ストレスに感じるほどハチャメチャな子供になるのは、あなたの育て方が悪いからだ」と言うような人があれば、「じゃ、試しに、幼児のいる家庭を百軒ぐらい訪問して、貴公子然と親の言うことを聞く子供が何人いるか、カウントして下さい」と反撃しましょう。

いろんな家庭と交わり、いろんなタイプの子供を見て知っている方なら、そういう発想はしないものです。

やたらと他人の育児に批判がましい人は、「自分の子供しか見てない証拠だ」ぐらいに思って、聞き流して下さいね。

私も、育児書や育児サイトなど、いろいろ見て回って、育児ストレスに関する記事などを読みましたが、それが「日常生活や夫婦関係の不満と絡みながら複合的に引き起こされるもの」であることを語っている記事はほとんど無くて、ひたすら「母と子の関係」や「接し方」に話が集中しているのが気になりました。

でも、はっきり言って、今、育児ストレスを感じておられる方も、もし日々の仕事が「子供の世話」だけに限られて、食事の準備も、掃除も、洗濯も、全くしなくていいとしたら、ストレスの度合いも全然違うのではないですか。

あるいは、夫が定時に帰宅して、夕食の後片づけも、子供のお風呂も、寝かしつけも全部手伝ってくれたとしたら・・・?

だから、育児の楽しみ方とか、素敵なママになろうとか、『精神論では解決しない負担』というものが子育てにはあることを認識して欲しいと思います。周りも、母親自身も、です。

これからも、大波小波あるかもしれませんが(私も、皆さんも)、本当にヤバイ時は、何でも精神論で乗りきろうとせずに、物理的・時間的に日々の仕事量を減らすことを考えて、乗り越えていきましょうね。

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