愛なき評論はアーティストを殺す

私も子供の頃からTVのロードショーは大好きで、日曜、月曜、木曜、金曜、土曜、ほぼ毎日、TVに釘付けになっていたものです。

それが「エマニュエル夫人」であろうと(10歳の時に鑑賞)、「サスペリア」であろうと。

そして、TVロードショーの面白さは、なんといっても映画解説でしょう。

日曜=淀川長治さん、月曜=荻昌弘さん、金曜=高島忠夫さん。

どの方の解説も心に深く残っています。

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そんな中、淀川長治さんが非常に興味深い話をしておられました。(これは多分、雑誌『スクリーン』か『ロードショー』で読んだと思います)

日曜洋画劇場といえど、毎回「ローマの休日」や「スターウォーズ」みたいな一級品ばかり放映するわけじゃない。

やはり予算の都合で、数回に1回は「アナコンダ」「コンゴ」(しょっちゅうやってた)、「恐怖 巨大イカの逆襲」みたいな、超低予算、超マイナーな作品が流れます。

まあ、放映権のお金が安いからでしょうね。

でも、そんなヘタレな作品でも、淀川さんは、その都度、心をこめて解説されるわけですよ。

どこを、どう見ても、面白くも何ともない、C級パニック映画でも。

「うわ~、こんな作品でも一所懸命にヨイショしなければならないなんて、淀川さんも気の毒~~」と思っていたら、やはり似たような感想を持つ人は他にもあったようです。

ある日、ファンの方から、「どうやったら、あんな駄作でも熱心に解説できるんですか」という手紙を受け取ったそう。

それについて、淀川さんはこんな風に答えておられました。

「どんな作品でも、必ず一つは褒めるところがある。その良い所を見つけ出すのが評論家の仕事」

この言葉を知った時、ああ、この方は本当に映画を愛しておられるのだな、と思いました。

そうでなければ、「アナコンダ」や「巨大イカの逆襲」に、温かい解説は付けられない。

それも一度限りじゃなくて、数ヶ月に1回は朝日放送もネタが尽きたように出してくるんですよ。

その度に、「すごいですね、怖いですね、巨大イカ! 船の横からガバーっと出てきますね、実はこの監督さん、この後に○○という作品も撮ってますね、上手いですね」なんて、視聴者に「ほんまかいな」と期待を抱かせるような解説はできません。

愛があるから、見る人の心も動かせるのです。たとえ鑑賞後に「騙された・・・」と感じたとしても。

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評論といえば、「レミーのおいしいレストラン」で、厳格な料理評論家のアントン・イーゴが、ねずみのレミーが作るラタトゥーユに心を動かされ、新聞に素晴らしい批評を載せる場面が印象的でした。

評論とはどうあるべきかを真摯に語った台詞だと思います。

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もちろん、何でもヨイショすればいいというものではない。

「巨大イカの逆襲」が救いようもないほど退屈で、どう見ても予算けちってるのが丸わかり(比叡山お化け屋敷の方が怖いやないけ)、一体何が目的でこんな映画を撮ったのか、「バッキャロー、金返せ」な作品にまでお愛想で五つ星レビューを付けていては、別の意味で映画産業が衰退してしまいます。

それでも、批判するにもそれなりの礼儀作法が必要だし、救いようがないほど叩いたところで、作り手の能力が向上するわけでもない。

愛のない批判は、ただの蔑みと言えなくもありません。

それはイーゴいわく「書き手にとっても、読み手にとっても痛快」かもしれませんが、何をも育てないんですよね。

だからといって、私に「巨大イカ」の面白さを見出すことは100年経っても不可能でしょう。

あれを二時間通しで鑑賞するのを強要されるぐらいなら、話のネタに「死霊の盆踊り」でも見た方がマシ。

そういう点で、淀川さんほどの愛情は持てないのが現状です。

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ネットが普及して「一億総評論家時代」とも言われていますが、Amazonで一つ星を付ける時にも、最低限、思いやりは持ちたいものですね。

アーティストに希望も逃げ道も与えない批評は、せっかくの才能の萌芽も潰してしまいますからね。

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ちなみに、「アナコンダ」や「巨大イカの逆襲」にかけるべき言葉は何だろう。。。

ここで詰まってしまうところが、私と淀川さんの差です(´。`)

Photo : http://wallup.net/funny-pirate-squid-high-resolution/http://wallup.net/funny-pirate-squid-high-resolution/

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