音楽

哭きのサックス ガトー・バルビエリ ~恐れずに「好き」と言おう

2015年10月27日

日本では未だにランチされないSpotifyには「今週のディスカバー」という、非常に面妖な「あなたにお勧めのプレイリスト」が存在します。

私が日々、愛聴している曲目をSpotifyが分析し、毎週、さまざまなお勧めをリストアップしてくれるサービスです。

そして、今週の月曜日に新たに追加されたのが、コチラ。(←アクシデントでファイルが消えました)

*

私の場合、クラシックやら80年代ポップスやらSmoothJazzやら、いろんな曲を聴くので、Chicagoの次にプッチーニが配されるという、けったいな様相に。

せめてジャンル分けしてくれたらいいのに・・と思うけど、そこまでは流石に無理ですもんね。

で、とりあえず流しで聞いていて、

このオヤジのだみ声のような哭きのサックスは……

と思ったら、アーティスト情報を見るまでもなく、ガトー・バルビエリ。

私もマーロン・ブランド主演の『ラストタンゴ・イン・パリ』でガトーさんの事を知ったのですが、リスナーの皆さんが仰るように、とにかく、濃い、濃い、濃い!

タバスコ入りソースのようにネットリと熱く、なおかつ、コブシのきいた音回し。

こんなこと言ったら何ですが、曲も演奏も「オヤジっぽい」んですよね。

大阪ミナミの千日前のキャバレー、って感じで。

千日前のキャバレーが悪い訳じゃないけれど、キタの新地のジャズクラブで一杯2000円だかのギムレットとか飲んでる自称・通から見れば、泥臭い印象は否めない。

今日も久々に聞いてみたけど、さびの部分で諄いほどコブシが回るのは相変わらず。

ああ、サックスが哭いている・・

そう、ガトーのサックスは哭くのですよ。

それも嘆きの泣きではない。

オレの魂を聞かせるぜ!! みたいな、熱い哭きなんですよね。

こちらのエッセーに書かれている、

ガトー・バルビエリのことなど / 瀬崎 祐 
http://www.geocities.co.jp/Bookend/8960/page173.html

ガトー・バルビエリが好きだということは、実は、どうやら 大変に恥ずかしいことらしいのだ。彼のジャズは二流であり、実は 自分もガトーのファンであるということは、恥ずかしくて他人には言 えない、と書いているジャズ評論家もいたぐらいだ

この感覚も分かるような気がする。

でも、言い換えれば、「一流のジャズ」って何?

評論家の認めたジャズが一流で、そうでないアーティストは二流ってこと?

人は一流の作品こそ感動すべきであり、二流の作品に心惹かれるのはお前自身が二流の証である! ってこと?

そんな訳ないよね。

これはガトー・バルビエリに限らず、クラシック音楽でも、小説でも、マンガでも、何でもそう。

●●のファンと言えば嗤われる。

お前には見る目がないと軽蔑される。

そういう恐れが、ファンの心を萎縮させると同時に、権威や五つ星評価や人気ランキングにすがっちゃう。

そして、インチキなものにも拍手喝采して、後で騙されたと地団駄を踏む(このネタ、ちょっと古いね)

自分の審美眼や判断に自信が無いのもあるけれど、周りに「あんなのが好きなの?」と嘲られるのが怖いという心理も往々にしてあるでしょう。

そう考えると、本当に好きなものを正直に「好き」と言えない社会って何だろうと思うし、ファンの「好きな気持ち」ってその程度なのかとも思ってしまう。

この際、大きな声で言いましょうよ。

●●が好きだ!

それが世間では三流と見なされていても、自称・通にバカにされても。

だってね。「これが好き」と思う気持ちって、本当はとても凄いことなんですよ。

人は何かを批判したり、嫌いになるのは得意でも、褒めて好きになるのは案外苦手。

なぜって、何かを批判するのは決して自分のプライドを傷つけることはないけれど、好きな気持ちは時に自己を傷つけることがある。とりわけ、それが他人に否定された時は。

それだけに、人でも、作品でも、何かを好きになって応援するのは勇気が要るし、時には好きな気持ちと心中する覚悟も要る。

そして、見方を変えれば、誰かをそれだけの気持ちにさせる作品(アーティスト)って、やっぱり価値があるんですよ。世間の評価がどうあれね。

*

そうした「評論家で口をつぐんでしまう冷たい空気」をガトー様もきっとご存じでしょう。

にもかかわらず、「オレはこうだ」と貫くところに『哭き』があるのだと思います。

そしてまた、芸術とは何かと言えば、己以外の何ものにもなれない事をいうのでしょう。

コルトレーンが一流だから、今はキャンディー・ダルファーみたいなのが流行だからと、その度にコロコロと聴衆におもねるような演奏したって、結局は何ものにもなれずに終わります。

ガトー様が、相変わらず『哭きのガトー』で、そんなガトーを書庫の陰だか、スピーカーの隙間だか、こっそり応援し続けるファンがいるというのは、これも立派な才能であり、芸術ですよ。

もう誰にも真似できないし、そのスタイルが自身の代名詞になってるんですから。

適当に聞き流す『おすすめプレイリスト』の中で、サックスの音色を聞いただけで、「おっ、ガトー様やん」と振り向いてしまうプレイヤーがこの世に何人いることやら。正直、大半は、どれも「いっしょくた」やないですか?

そんな訳で、日本でもSpotifyがランチされたら、ぜひガトー様のページを訪れて下さい。(そろそろ動きだすのでは・・とう話です)

ガトー・バルビエリ

ディープなファンには嬉しいラインナップでしょうか? 
『QUE PASA』や『Caliente!』もちゃんと収録されておりますよ。

ガトー・バルビエリ

≪追記≫

日本でもSpotifyが始まったので、アーティスト・ページの案内です。

のっけからビンビンに飛ばしている『Europa』。
多分、FMラジオや喫茶店のBGMなどで耳にした人も多いのではないかと思います。
哀愁感が漂うのだけど、どこか「情熱♪熱風☆せれなーで」のようにコテコテしたムード、腹の底からひねり出すような演歌風のコブシ、お洒落なんだけど、どこか場末っぽい曲回しなど、「国道沿いのラーメン屋」っぽい雰囲気が逆に個性的で、一度聞いたら忘れられません。

褒めるか、けなすか、どっちかにせぇや・・

って感じのレビューで申し訳ないけど、でもね、「ああ、まだこの路線で頑張ってはるんや」って、ほんまに感動しましたよ。Spotiryで最新アルバムを聴いた時は。

哭いてる、哭いてる! 

この世界をぜひ一度、背中が煤けるまでご堪能下さい。


これもアップテンポですが、「スパイ大作戦のエンディング」みたいな雰囲気で泣けますよ。
イメージとしては、ポール・ニューマンが金髪美女と夕陽をバックにボートに乗って去って行く感じ。

いや、それともショーン・コネリーかな・・

*動画は削除されました。

一番大事なものを忘れてました。

名曲『ラストタンゴ・イン・パリ』はこちらです。

アイテム

南国ムードあふれるガトー様の代表作。私もいろいろ聞いてみて、やっぱりこれが一番好きですよね。

Photohttp://www.rollingstone.com/music/news/gato-barbieri-latin-jazz-great-and-last-tango-in-paris-composer-dead-at-83-20160403

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