映画

世界を救う第五の要素『フィフス・エレメント』/ ミラ・ジョヴォヴィッチ&ブルース・ウィルス

2008年12月24日

1997年、世界中が注目する中で封切られたリュック・ベンソン監督のSF映画。

とはいえ、その前に、泣き虫の殺し屋を描いた『ニキータ』で名を上げ、次作の『レオン』では世界中の女性に溜息をつかせた(特に日本女性に圧倒的支持を得ているらしい)経緯があるので、黙っていてもヒット作になるのは間違いない中での封切りだったのだけれど。

物語はいたって簡単、暗黒の力をもった巨大なエネルギー体が地球に近づきつつある中、太古から『フィフス・エレメント』の秘密を守り続けてきた一族の子孫であるコーネリアス神父(イアン・ホルム)の助言により、宇宙の果てからその「秘密を持つ者」が召喚される。
しかし、悪徳武器商人ゾーグ(ゲイリー・オールドマン)とその一味の謀略により、その者を乗せた宇宙船は撃墜され、破片から回収された遺伝子から美女リー・ルーが再生される。
しかし、リー・ルーは研究施設から抜け出し、高層ビルから飛び降りたところをタクシー運転手のコーベン(ブルース・ウィリス)に救われる。
コーベンの手引きによりコーネリアス神父と合流することが叶ったリー・ルーは、『フィフス・エレメント』に関する重要な物を受け取るためにコーベンと共に惑星フロストン・パラダイスに向かう。
そこでは青色のオペラ歌手が彼らを待ち受けており、極秘裏に受け渡しできる手はずだったのだが、ゾーグの差し金によりオペラ歌手は舞台の途中で狙撃されてしまう。
だが、彼女が息を引き取る前に、彼女の体内から「それ」を取り出したコーベンは、リー・ルーを連れて、フィフス・エレメントの秘密が隠された古代の遺跡へと向かう。
暗黒のエネルギーに対抗する唯一の武器『フィフス・エレメント』とは何なのか──。
傷つき、疲れ果てたリールーを抱いて、遺跡の中央に立つコーベンが遭遇したものは……。

ベンソン監督が子供時代から温めていた企画だけあって、全編これお伽噺のようなテイストである。

そのせいか、悪役ゾーグは間抜けだし、地球の存亡をかけた政府の姿勢にもまるで悲壮感がない。

アクションも、「一流SF大作」というよりは「アメリカン・コミック」のノリで、どうやらこの映画は『スター・ウォーズ』や『エイリアン』のような本場SFのノリを期待して見る作品ではないらしい。

とはいえ、ブルース・ウィリスのガン・アクションは流石だし、フランスの鬼才ジャン=ポール・ゴルチエがデザインした未来ファッションに身を包んだゲイリー・オールドマンの異様な存在感にも目を見張るものがある。

ついで言うなら、『エイリアン』第一作目で、突然、女性隊士リプリー(シガニー・ウィーバー)に襲いかかり、エイリアンをクルーの体内に寄生させて、生きたまま捕獲するという真の目的を露わにした冷酷なアンドロイドを演じたイアン・ホルムが、ここでは茶目っ気のある神父を演じているのも一興だ。

だが、特筆すべきは、『レジデント・イーブル』ですっかり人間離れしてしまったミラ・ジョヴォビッチが、髪を鮮やかなオレンジ色に染め、もろく傷つきやすい最強の女戦士をキュートに演じていることだ。(ちなみにベンソン監督はこの作品を機に彼女と結婚したが、数年後に離婚している)

ジョヴォビッチはモデル出身だけにスタイルが抜群にいいし、身のこなしも猫のようにしなやかで、爽やかな色気がある。
あの可憐なジョヴォビッチが、あんなアクション系の女優さんになるとは夢にも思わなかったので、私としては少々残念なのだけど、確かに演技で売るよりは、ネコ系の美貌と抜群のプロポーションを生かした役柄を演じる方が似合っているのかもしれない。

映画としては、100億円の予算をかけた割には話が小粒で、「映像を見せるための映画」に終わってしまったような感があるが、それでも、ジャン=ポール・ゴルチエの22世紀ファッションをはじめ、立体コミックのような未来都市、オペラの演出、不細工かつユニークな宇宙のクリーチャーなど、映像を楽しむ分には十分に満足できると思う。

そして、世界を救う「第五の要素(フィフス・エレメント)」が『愛』という設定も、ベッソン監督らしい発想だと思う。

ちなみに、この作品も、1995年に制作された押井守監督の『GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊』にインスパイアされた部分があると一部では言われている。

たとえば、高層ビルから飛び降りるリー・ルーの構図や、遺伝子から人間へと再生する過程(動画参照)が似ているとか。
もちろん『マトリックス』のように公言された事実ではない。

『ニキータ』や『レオン』に共通するロマンティックで古典的な純愛を期待していたファンには、どうにも収まりの悪い話題作だったけれど、エリック・セラによる映画音楽は素晴らしかった。

とりわけテーマ曲『Little Light of Love』にはベンソン監督の最も美しい要素がぎゅっと詰まっている……と言えるのではないだろうか。


From a little light of love
I was born and in my cry, my cry
Was a little light of love
For the honoring of life
And in the pharoahs of my soul is this light of love
Precious little light of love

There’s a candle burning on
In the breezy shades of night
I keep up my faith and underset my hope
To call the realm of light
I treasure your shimmer
In the middle of the shady desert
Bring on a field of light
Little light of love
Fairy light of love

Only one religion
Will lead us through the love we aim for
Over the dark illusions
Of the warring nations
When I think what leads to power
The destruction glorified higher
And when the war is nearly over
How come the leader’s held in high honors?

Would you die, for their lie?
Their greedy hunting cry?
Rely on your light, it’ll all be fine

Little light of soul religion
Well a little light of love
Little light of soul and freedom
just a little light of love

「Little light of love 小さな愛の光」とはリールーのこと。
はかなく、頼りなげではあるけれど、私はそれを信仰(faith,religion)によって守り抜こう、夜の闇を超えて、世界を照らし続けよう……という祈りの歌ですね。

こちらは、リールーが再生される場面。言われてみたら、『攻殻機動隊』のオープニングにも似てるかな。

BGMは関係のないPOPSが流れますが、映像はきれいです。


この作品の見所は、オペラの場面。
ドゼニッティの名曲「ラメルモールのルチア ~ディーヴァ・ダンス~」にのせて、『秘密のもの』を運ぶオペラ歌手の舞台とリールーの戦闘シーンが巧みに組み合わされている。


歌声は本職の歌手の音声を機械処理したもので、SFテイストたっぷりの歌唱に仕上がっている。

私は、リュック・ベンソン監督作品に関しては『ニキータ』が一押しなので、これに100億かけるぐらいなら、あの作品に……なんて思わなくもない。

しかし、低予算の限られた中で、自身の美学を徹底的に追求した力作だからこそ輝く作品もある。

『ニキータ』はまさにそれで、『フィフス・エレメント』は、風呂敷が大きくなった途端、作品のしまりが悪くなる一例と言えよう(意地悪ですが)

とはいえ、エリック・セラの音楽が良かったので、私の中ではけっこう思い出深い。

そして、ミラ・ジョヴォビッチは、いつになったら人間に戻ってくれるのであらうか。

あるいは、彼女が機械化していくのを予見して、ロマンティストのベンソン監督は離婚に踏み切ったのかもしれない。

世界を救う『フィフス・エレメント』も、夫婦に関しては、力も萎えたようだ。

関連アイテム

ベンソン監督御用達、エリック・セラによるサウンドトラック盤。
音楽に関しては、上記の『Little Light of Love』をはじめ『ディーヴァ・ダンス』『モンドシャワン』など、宇宙を感じさせる音作りで非常に魅力的。
Amazonで試聴できるので、ぜひ聞いてみて下さいね。

単純に映像を楽しむなら満足できると思う。
でも、今時のCG技術に慣れきっている新手の視聴者には古く映るかもしれない。
ミラ・ジョヴォビッチをはじめ、ゲイリー・オールドマン、イアン・ホルム、クリス・タッカーなど、役者は良い。
これで物語にもう少しヒネリがあればねえ。
ちなみに世界を構成する四大要素とは「火」「水」「土」「風」のことです。
映画のクライマックスにも謎解きに登場します。

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