自動車教習生はおおまかに分けて二通りある。
決められたコースをちまちま走るのは得意だが、路上に出ると頭が真っ白になってしまう「場内派」。
場内では目も当てられないほどヘタクソだが、路上に出た途端、水を得た魚のように生き生きと走り回る「路上派」。
私は典型的な後者で、仮免は2回落第したにもかかわらず、卒検は見事な走りで教官さまのお墨付きを頂き、同乗していた他の試験者からも、「運転、上手いですよね~~」と羨望の眼差しで見られた経験を持つ。
場内教習なんて、ただただ「かったるい」ばかりで、「ああ、早く仮免に通って、路上で運転したい」と切望していたにもかかわらず、一度目は縦列駐車に失敗、二度目はS字カーブで縁石に乗り上げて、試験の後、「途中で気付いてバックしてたら、OKにしてたんだけどネ」と試験官に言われた時は、その場でワーッと泣き崩れそうになるほど悔しかったもの。
恐らく、免許試験に落ちた大半の人がそうだと思うけど、「誰でも運転できる」と舐めてかかっていたのが、案外、手こずって、まともに車庫入れも出来ない現実に遭遇した時の情けなさはハンパじゃない。
猿でもチンチン電車を運転するのに、なぜこの私は……!!
という声にならない悔しさ。
2度も落ちれば、こんな気持ちだ ↓

ちなみに、ポーランドには、仮免という制度はなく、最初に講習を受け、仮の学科試験に合格したら、初心者でも即、路上である。
もちろん、初めてハンドルを握るという人は、人気のない体育館の駐車場や、だだっぴろい空き地に連れて行って、発進の基礎から練習するわけだが、私の場合、日本で免許取得していた為、初日からいきなり路上教習。
初めての右ハンドルに、ほぼ15年ぶりの運転、それもMTという非常に厳しい条件にもかかわらず、生きて返ってこれたのは、その日がたまたま日曜日の午前9時で、車量がきわめて少なかったことが幸いしたためだ。
しかも、ポーランドの実技教習は、駐車、バック、坂道発進、Uターンなど、すべての操作を「実際の道路」で行うため、緊張感もハンパではない。
後方確認にマゴマゴし、
「何してる、トラックが来るぞ!」
とか言われた日には、ハンドル握ったまま気絶寸前。
もちろん、『L』のついた教習車を威圧する車などないけれど、はためいわくな存在には違いないと思う。
特に、坂道発進の練習中とか。(←民家の前でやるんだよなー、これが)

今にして思えば、『車の運転』というのは、サイドミラーと車体感覚をいかに結びつけ、思うように車を動かすか──という点にあると思う。
初心者は、「アクセル」+「ハンドル」こそが運転だと思い込み、その操作に夢中になってしまうけれど、本当に大事なのは、サイドミラーの情報を立体的に取り込むことであって、あの単純な鏡の映像から、周囲の状況、側方感覚、車間距離、相手のスピードを即座に判断し、安全かつ確実に車体を導く、このイメージとアクションの連携こそが運転の基礎である。

したがって、サイドミラーの情報を上手く取り込めない──今、自分がどんなポジションを取り、どの方向に車を動かそうとしているのか、それが感覚として掴めない限り、運転というのは出来ないものだと思う。
だから、仮免に何度も落ちるような人、路上に出ると頭の中が真っ白になって、状況判断どころではなくなってしまう人は、やみくもに道路を走るのではなく、縦列駐車や車庫入れを何度も経験して、サイドミラーとハンドル操作の関連付けをしっかり取り込むのが上達への近道ではないだろうか。
もちろん、これらのセオリーも、路上においてはほんの一節に過ぎず、町中に出れば、「とんでもない場面」に数限りなく出くわす。
その時、横で、補助ブレーキを踏んでくれる人もなければ、車窓から身を乗り出して、相手の車に危険を知らせてくれる人もなく、すべて自己判断、それもゼロコンマ数秒の、ほとんど反射とも言える操作で対処しなければならない。
そう考えると、やはり教習生の間がパラダイスという気がする。
どうしても卒検で引っ掛かって、緊張してしまう人は、こう考えてみてはいかがだろう。
横で補助ブレーキを踏んでくれる人とのドライブは、これが『最後』だと。
最後の教習期間を楽しむ気持ちでハンドルを握ってみたら、案外、気持ちも和らぐかもしれない。
まあ、それでも、実技試験というのは、いつの時代も、どこの国でも、最高に緊張する場面の一つにちがいない。
ちなみに、ポーランドでの、実技試験の通過率(Wynik Pozytywny)は、35パーセント前後である。

みんなが苦手な場内試験。L字型のカーブをバックするだけだが・・


