キラキラネームは社会的に問題ですよ、と、なぜ国として意思表示しないのでしょうね

私も名付けに関するエントリーを一つ書いていますが、正直、「本当にそんな名前を子供に付けるつもりなの?」と首を傾げたくなることが多いです。

たとえば、「そうせい」。

ふるさと創生みたいに良い意味もありますが、「そうせい」といえば「早世」を連想する人も多いです、多分。

早世って、意味知ってますよね。「早く出世する」じゃないですよ。若くして早死にすることです。

「創生」の意味もあるんだからいいじゃないの、という意見もあるでしょうが、「早死に」のイメージも同じくらい大きいです。

それは「優子」という名前から「心の優しい子」を思い浮かべる一方で「優柔不断」を連想するのとは、かなり印象が異なります。

それなら、『冬星(とうせい)』をおすすめします。大和和紀さんのマンガ「はいからさんが通る」に登場する美形の編集長です。格好いいですよ。

*

確かにどんな名前を付けようが個人の自由かもしれません。

でも、社会生活を営む以上、最低限、配慮せねばならないルールがあります。

それは「漢語辞典で定められたように音読できる」と「邪悪な意味をもつ漢字は使わない」です。

個性的な名前は海外でも流行しています。

近年ではトム・クルーズの娘「スーリちゃん」が話題になりました。

日本人なら物盗りを連想する名前です。

でも、海外のユニーク名付けと、日本のユニーク名付けでは、決定的に違う点がある。

それは何かといえば、「スペル通りに発音する」ということです。

Suri と書いて、「ジェニー」や「キャサリン」とは読まない。読ませない。

Suri といえば「スリ」か「スーリ」。

Carimero や Hamtaro と付けても、読み方はスペルに従います。

だから、ユニークな名前を付けても、「正しく読んでもらえない」「書類手続きで混乱する」という事は、まずないんですね。

でも、日本の場合は、本来の漢字の読みに従わず、その親にしか解らない脳内変換を通用させるでしょう。

それも本人の自由といえば、自由だけど、社会生活を営む上では間違いの元になる。

たとえば、救急医療の現場で、こういうやり取りが起こり得ます。(かなりデフォルメしてますけど)

<救急車>

救急隊「●●通りで交通事故発生。小学生低学年と思われる男児が車にはねられ、腹部を強打している。脈拍、血圧ともに低下、呼びかけにもほとんど反応なし、腹腔内で出血している恐れがある。至急、搬入を許可されたい」

病院「了解。男児の名前をお願いします」

救急隊「(漢字で書かれた名札を見て)田中……(なんじゃこれ)……黄色い……熊??」

病院「聞き取れません。もう一度、お願いします」

救急隊「田中……黄色い熊って、書いてあるんだよ。キグマ? キクマ? とりあえず、タナカ・キクマでよろしく」

<救命センター>

看護師「タナカ・キクマ、到着しました。カルテ、ここに出来てます」

ドクター「これは開腹して止血しないとな。新鮮血、用意して。血液のマッチングお願い。レントゲンにも連絡して」

<検査室>

技師A「タナカ・キクマの検査結果でました。献血センターにも連絡スミです。AB型、新鮮血200ml×3パック、十五分で到着するそうです」

<受付>

一時間後に母親到着。

母親「田中ぷうの母ですけど、ぷうはどこですか」

受付「田中……ぷう?」

母親「交通事故で運ばれたって聞いたんですけど」

受付「ええ? タナカ・キクマじゃないんですか??」

母親「うちの子は『ぷう』って読むんです! キクマじゃありません!」

受付 – 救命センター
   – オペ室
   – 検査室
   – 医療事務部
   – レントゲン室
   – 薬剤部

順次、訂正連絡。「すいません、タナカ・キクマじゃなくて、タナカ・プウだそうです」

<オペ室>

ドクター「おい、伝票はまだか。同意書はどうした。オペが始められないじゃないか」

看護師「それが名前が違ってたみたいで、今、訂正の作業中です」

<検査室>

技師A「さっきのタナカ・キクマ、タナカ・プウの間違いだって」

技師B「えええっ、検体も伝票も全部、タナカ・キクマで出してるよっ」

血液センターから新鮮血到着。

センター係「タナカ・キクマの血液、到着しました。確認お願いします」

技師A「それがタナカ・キクマじゃなくて、タナカ・プウなんだって」

センター係「それじゃ受け渡しできないよ。こっちも一から書類の作り直しだ」

<オペ室>

ドクター「まだ書類と輸血の準備ができないのかっ!」

看護師「それが名前の間違いで、どこもかしこも訂正作業で手間取ってます」

その末に、子供が手遅れになってもね。

普通に読めない名前をつけた親が「黄色い熊といえば『ぷう』に決まってるじゃないですか! どうして読めないんですか! 書類なくても、手術や輸血ぐらいできるでしょ!」

できません。やりません。

医療行為には、非常に厳格な規則がございます。

「患者」と「名前の一致」は、医療行為の基本中の基本です。

それを無視して過誤を生じた場合、責任をとらされるのは現場に立ち会った職員です。

読めない名前をつけた親には何のお咎めもない。

上記の例は「たとえ」ですけど、「名前が一目で正確に読めない」というのは、社会的にいろんな問題を引き起こします。

時にそれは致命的になるかもしれない。

Suri が一部で失笑をかっても、社会的に問題視されないのは、「スペル通りに読める」からなんですね。

*

「名付け」に限らず、

自由 = 正義、先進的、独創的

規制 = 悪、保守的、発展を妨げる

単純にイメージで語られることが多いでしょう。

「自由を主張する」のが進んだ考えをもった正しい人で、「規制する人は悪い人」。

なんでも「自由」と言っておけば、自動的に善の側に回れる。

周りも、自分が「ワルモノ」になりたくないから、「頭の古い人間」と思われたくないから、心底では疑問や違和感を感じながらも、「確かに本人の自由だしぃ」と単純に迎合する。

果たして、そこで語られている自由は、「何人たりとも信仰の自由を妨げられない」の自由なのか、「赤信号 みんなで渡れば怖くない」の自由なのか、そこで問題にされるべき「自由」の本質を深く考えもせず、誰も彼もが『自由の戦士』になりたがる。

自由という名の思考停止ですよね。

*

名付けに関して言えば、「漢字の読みに添う」という最低限のルールは遵守すべきだと思います。

実際に脳内変換系の名前でどれほどトラブルが起きているか、実態は把握できませんが、少なくとも医療業者にとっては、ものすごく迷惑で、危険を伴う、と、言わざるを得ません。

子供に「ハニー」とつけて、看護師が待合室で「山田ハニーさま」と呼ぶのを「恥ずかしいからフルネームで呼ぶのは止めろ」と食って掛かるなら、受付で、カルテと診察券を作る時点で、「フルネームで確認させない事に伴うリスクについて、いかなる事故、損害が生じても、不服の申し立ては致しません」と同意書を取らないといけない。

名前は「子供の呼称」「親の愛情」かもしれませんが、社会的には「個人を識別するコード」でもあります。

漢字の読みに逆らった『普通に読めない名前』は、識別不能な個人の勝手を社会の仕組みにネジ込んでいるのと同然だと思いませんか?

*

役所の受付で、読めない名前の書類を受理せざるを得ない担当者の気持ちも解ります。

物の道理を説いても分からない相手に、うかつに意見して、衆目の中でギャーギャー騒がれたら、自分の立場が危うくなる。

腹の中では(なんやこれ?)と思いながらも、受理せざるを得ない姿が目に浮かびます。

平凡な日常を、些細なことで波風立てたくない気持ちは、誰しものことです。

ですから、国の方でね、「漢字の本来の読みを無視した名前は受理できない」というガイドラインを明確にしてあげればどうでしょう。

道理の通らぬ親でも、法務省だかどこかが作成した『マンガでわかる名付けのルール』みたいなパンフレットを受付で提示されたら、一度は考え直すでしょう。(クレジットカードの契約書みたいに細かい字でゴチャゴチャ書いても誰も読まない)

担当者も「だって、国で決められてますから」と逃げることができますし。

国家とは、意思なり。

明確に意思表示できない国家の下には混乱しか生じません。

自由の戦士に安易に迎合せず、「ダメなものはダメ」「困るものは困る」とガイドラインを示せないものでしょうかね。

そして、これから名付けする人も、もうちょっと社会の仕組みを勉強しましょう。

この世は法律をベースにしています。それを具体的に行使する最たるものが「書類」です。

SMAPのキムタクの顔なら日本中誰でも知ってる。だからといって、キムタクに顔パスで風邪薬を処方したり、渡航を許可することは絶対にありません。

病院でも空港でも、国民である限り、法律に従う義務がある。

その一つの手立てとして「書類」があり、その「名前欄」は単なる呼び名ではない、社会の個人識別コードとしての役割もあります。

その識別コードに解読不能なものを記入したら、どこもかしこも迷惑することぐらい想像つくでしょう。

それはあなたではなく、子供に跳ね返ってくるのですよ、それも一生。

素敵な名前を付けたければ、誰もが一目で、高確率で正確に読める漢字で工夫してください。

聖羅ちゃんとか、樹里ちゃんとか、それで十分に可愛いじゃないですか。

ちなみに私の一番好きな名前は、「布袋寅泰」と「氷室京介」。

カシオペアの「野呂一生(のろいっせい」と「神保彰(じんぼあきら)」も、素敵。

単純な漢字だけど、語感がいいんですよね。

いろいろ探せば、誰にでも分かりやすい、カッコいい名前が見つかると思います。

ぜひご一考ください。

アイテム

私の少女時代、大人気だった漫画です。アニメにもなりました。

大正時代のお話で、主人公の名前は「紅緒(べにお)さん」。可愛い名前だな、と思ってました。

「青江冬星(あおえとうせい)」は超美形の編集長で、恋のライバルとして登場。

大正ロマン風の名前もいいと思いますよ。今なら新鮮で。

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