私は、お城の天守閣に上がるのが好きだ。
姫路城や彦根城の天守閣にた~っと上がって、 あの小さな窓から城下町を見下ろすと、時の殿様の気分になるの。
ほんの一瞬だけど――。
今でこそ、城下町にも、何十階建てのビルが林立し、 人や車であふれかえっているけれど、江戸の昔は、そりゃあ爽快な眺めだったろうよ。
人も世界も、全てのものが、自分の足元にひれ伏しているような、 王様気分にひたれたろう。
だけど、それも一代で過ぎた。
時の殿様は、何百年後に、 下々の者が自分の玉座に上がり込んで、 壁や柱に、
「青森から来たよ~ん♪」
「ユミコ LOVE マサル」
なんて落書きしたり、 自分が座していた場所をバックに記念撮影したり、 →それもピース・サインで……。
無作法なオッサンに土足で踏みつけられたりするなど、 夢にも思わなかったろう。
だけど「形」というものは、そういうものなんだ。
物質として築いたものは、いつか必ず滅び去る。
時を超えて残るのは、Spiritual Heritage――
精神的遺産だけ。
精神だけが、何代にも渡って受け継がれていく。
絵の中に、音の中に、言葉の中に、
生き生きと、永遠に。
初稿:99/06/15


