『素直な戦士たち』城山三郎 / 『犬神家の一族』 / 『黒蜥蜴』 / 『刺青』/ 池上遼一 近代日本文学名作選

11月 24日, 2008年 in 日本の小説とエッセー
素直な戦士たち :城山三郎

「東大に入りさえすれば、エリートにも、ルンペンにもなれる。子供の可能性は無限に広がるのよ」と盲信する母親のもとで、赤ん坊の頃から徹底した英才教育を施される英一郎。だが、その先には、大きな悲劇が待ち受けていた……。NHKでドラマ化もされた、衝撃的な作品。

「塾」「受験戦争」が、ぼちぼち社会問題化してきた頃に発表された、城山三郎さんの秀作。
作品の背景はかなり古いが、教育ママの過剰な干渉や、偏執的な物の考えは、現代の母親にも通じるものがある。読後に救いようのないものを感じるのは、今の教育事情が取り返しのつかない所まで来ているからだろうか。
子供の将来や勉強のことが気にかかるママさんには必読の書。

関連記事はこちら 【七田式と早期教育 / 城山三郎『素直な戦士たち』抜粋

【Amazon レビューより】
高校生のときに読んだんですが今でもはっきり覚えています。
まず第一に、読みやすい! 複雑なことは何一つありません。シンプルなストーリーで、直球勝負です。息子をエリートに育てようと必死の母親。それにひっぱられる父親。それだけの話です。コメディかと思って笑いながら読んでたら、すこしずつ悲劇的な雰囲気になってきて、最後は凍りつくようでした。
読書はいろいろ好みがあるけど、他人にすすめる一冊なら、これかな。
するするっと読めて、いつまでも余韻が心に残る。
城山さんのなかでも異色の傑作だと思います。

犬神家の一族

信州財界一の巨頭、犬神財閥の創始者犬神佐兵衛は、血で血を洗う葛藤を予期したかのような条件を課した遺言状を残して他界した。血の系譜をめぐるスリルとサスペンスにみちた長編推理。

映画も面白いが、やはり、人物像の奥深さでは、原作の方がはるかに上回っていた。推理ものとして読むよりは、どろどろした人間ドラマとして読んだ方が分かりやすいかもしれない。映画ファンなら、必読の書。

【 Amazonレビューより 】
ミステリを読み始めて5年にして、初めて横溝正史「金田一」シリーズを読みました。まず、作品の完成度に驚かされました。少し読むのをためらっていたことが、悔やまれます。
多くの読まず嫌いの人々にオススメします。先入観を捨てて読んでみると、確実に驚かされます。そして満足を得ることでしょう。

【 映画版 】

石坂浩二の金田一耕助はもちろん、高峰三枝子、草笛光子、あおい輝彦、島田陽子など、一流どころの演技が冴える、日本映画史に残る傑作。
佐清のゴムマスク、湖の逆立ち死体、「よき・こと・きく」の家宝など、突っ込み所は数知れず。
脚本も非常に優れており、「リング」なんかより、こっちをハリウッドでリメイクして欲しいほど。
平成版でも蘇るそうだが、どんな役者を持ってきても、本作を上回ることは、多分、永久に不可能だろう。
まさに文句の付けようのない、傑作中の傑作。
映画では「お前、恋しさのあまり、母さんはとんでもない間違いをおかしてしまった」のセリフで分かるように、息子・佐清と愛人の子・青沼静馬を取り違えてしまう、母の盲目的な愛がよく描かれており、犯人の松子を単なる「殺人鬼」で終わらせていない点が秀逸。
役者の演技を見るだけでも、価値のある一本だ。

参考サイト「犬神家の一族 配役一覧」 → スゴイです!! 超おすすめ!!

黒蜥蜴

「黒蜥蜴」を名乗る暗黒街の女王から、秘宝「エジプトの星」を頂戴するという挑戦状が届く。宝石商は、名探偵の明智小五郎に事件の解決を依頼するが、明智は黒蜥蜴を軽く見て、真剣に取り合わない。
そんな明智の前に、美貌の貴婦人、緑川夫人が現れ、大胆不適な賭けを申し出る――。
美輪明宏の舞台でも有名な、江戸川乱歩の秀作。

【 Amazonレビューより 】
これらの作品のなかでも、とりわけ『黒蜥蜴』は1961(昭和36)年に三島由紀夫によって戯曲化されて以来、幾たびか上演され、また映画化もされた人気作品である。美しい女怪盗と名探偵とのあいだで繰り広げられる壮絶な智慧比べ。敵同士でありながらお互いに引かれあっているふたりの心理的ジレンマに、読者は「ドラマ性」を感じ取っているのだろう。また、黒蜥蜴が登場するのは全作品中この短編だけだが、明智小五郎や怪人二十面相、小林少年らと並んで、乱歩作品の人気キャラクターである理由もそこにあるのだろう。彼女を演じた俳優の美輪明宏の当たり役ともなった。

『黒蜥蜴』と言うと、美輪明宏さんの代名詞なのですが、それ以前には、京マチコさん主演で映画化もされています。
オープニングの「くろとか~げ~」というフレーズと鞭の音がいいですね。

映画『黒蜥蜴』 オープニング 主演:京マチコ
/video/kurotokage.flv
刺青 :谷崎潤一郎

「美しくさえなれるのなら、どんなことにも辛抱してみせましょうよ」。独自の美を追い求める天才刺青師の元を訪れた、女郎の背中に彫られた刺青とは。

流麗な文章は言うに及ばず、作品全体に漂う緊張と官能美が素晴らしい。
最後の一行は、まさに天才にしか書けない名文。
一語一語を味わって読んで欲しい作品です。

【Amazon レビューより】
刺青は言葉に書かれていない範囲で想像させる作品だと思う。美女の背中に張り付いた女郎蜘蛛が、美女の動きとともに顫動運動する様子を想像したら、強烈なインパクトを感じられた。

地獄変 :芥川龍之介

帝の命じた『地獄変』の屏風を描くため、絵師が犠牲にしたものは。
人間の強欲が地獄の炎のごとく渦巻く名作。

『蜘蛛の糸』が文学的秀作なら、『地獄変』は芸術的名作。残酷な悲劇でありながら、研ぎ澄まされたような美しさを感じるのは、創作に魂を焦がした芥川ならではであろうか。
触れれば壊れてしまいそうな作品が多い芥川だけれど、この『地獄変』だけは生き生きとしたものを感じる。

【Amazon レビューより】
私はこの本のどこを評価すればいいのか?それは集英社の芥川龍之介作品というところです。
この集英社刊の「地獄変」は芥川龍之介を代表する作品ばっかり収めていて、これから芥川龍之介作品を読もうとする人には最適の本となっています。地獄変・羅生門・蜘蛛の糸・鼻などなど。
他の出版社には真似出来ないようなこのボリューム!そしてこの安さ!!
この本一冊であなたも芥川龍之介マニアになること間違いなし・・・?

池上遼一 近代日本文学名作選 (ビッグコミックススペシャル)

上記二作をはじめ、山本周五郎『松風の門』、泉鏡花『天守物語』、菊池寛『藤十郎の恋』、江戸川乱歩『お勢登場』といった近代日本文学の傑作を華麗な筆致で劇画化。
とりわけ『地獄変』の息を呑むような迫力(作中の天才画家とは、池上氏のことだよな・・)、ヒロインらの官能的な美しさは白眉のもの。
私の大好きな『刺青』が著作権の関係で単行本に収録されなかったのは本当に残念でならない。

恍惚の人:有吉佐和子

文明の発達と医学の進歩がもたらした人口の高齢化は、やがて恐るべき老人国が出現することを予告している。老いて永生きすることは果して幸福か?
日本の老人福祉政策はこれでよいのか――。
老齢化するにつれて幼児退行現象をおこす人間の生命の不可思議を凝視し、誰もがいずれは直面しなければならない“老い”の問題に光を投げかける。
空前の大ベストセラーとなった書下ろし長編。

単なる問題提起を狙った社会派小説ではなく、人間の一生に対する敬虔な思いが感じられる傑作。
今、何をなすべきか分からなくてもいい。でも、心に留めておいて欲しいテーマがここにある。

【Amazon レビューより】
昭和47年に本書が発表されてから老人問題は何も進展してはいないんじゃないか と思うくらい、作中と今との社会に対する嘆きは一緒である。
義理の父にいびられ続けてきた昭子が「女」である為に、結局は茂造の面倒をみなければならない。
実の息子である夫、信利の態度に「家出して全部信利に押し付けてやればいいのに」と何度思った事か。
頑丈で偏屈な茂造が全てを忘れて、今まで見せる事のなかった笑顔を時折みせるようになったと思ったのもつかの間、体が弱ってきて、周囲に対する関心も失われ、再び笑う事もなくなっていく。
時間の経過がせつない。

——

この本がベストセラーになったというのも頷ける。
耄碌した舅の建造を甲斐甲斐しく世話する昭子の微妙な心情を見事に描いている。
さすが著者は女性だと思わせた。
そして、高齢者問題はこれが書かれて四半世紀経つのに、いったいどれだけの解決がなされたのかと思う。益々問題としては大きくなっているのではないかと思う。

【映画版はこちら】

見たのは十代の頃でしたけど、実に衝撃的な作品でした。
誰にとっても決して無縁ではない「老い」の問題。
誰が見るのか、救いはあるのか、永遠に答えの出ない問い掛けに、老いることの残酷さをつくづく思い知らされます。

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Comments

  1. 城山三郎さんの著作は骨がありますよね。
    私は人物伝のエッセーをメインに読んだのですが、これぞ「男の読み物」という感じで、ほんと、惚れ惚れしました。

    ……というより、昔、そういう男達がいた、という事実に惹かれるのですけれど。

    NHKでドラマ化された「素直な戦士たち」を見たのは、小学生の頃だったのですが、子供心にも納得の行く内容で、この平成の世にもう一度、ドラマ化して欲しい秀作です。

    ブックオフ・・私ももう一度、行きたいです!

  2. 阿月まり 7月 9, 2008

    偶然検索したら、見覚えのあるサイトで、優月まりさんのサイトだとわかり・・・、驚きました。ご縁ですね。城山三郎さんについてはちょっとしたサプライズがあり、6/5のブログに書いてみました。昨日もブックオフで昔読んだことのある「素直な戦士たち」「ビジネスマンの父より息子への30通の手紙」をゲットしてきました。もちろん、105円でした。

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