育児と家庭

『おいしいハンバーガーのこわい話』何を食べ、どう生きるか

2010年3月18日

私の人生において、どうにもこうにも止められないものが二つある。

一つは、マンガ。

もう一つは、ジャンクフードである。

*
 
ジャンクフード。

身も蓋もない(?)ゴミのような食品。

「ゴミ」というよりはポイズン。

食べれば食べるほど、肉体を蝕まれる悪魔の食い物だ。



そう分かっていても、月に1~2度はやはり買ってしまうポテトチップスにチートス。

2~3ヶ月に1度はモーレツに食べたくなるKFCとマクドナルド。

日本に居たら、週に1度は買っていただろう。『大盛りイカ焼きそば』に『日清スパ王ペペロンチーノ味』。
 
中に何が入っているかなど、聞かなくても分かる。

でも止められない。

ミョーに美味しいから。

この年になって、ぽりぽりとポテトチップスをつまみ、マクドナルドでハンバーガーをかじっている自分の姿を客観的に想像すると「もういい加減にしろよ、オマエ」とツッコミをいれたくなるけれど、それにもまして魅力的なのだ、あのジューシーでスパイシーな味わいが。


 
そんな自分に活を入れるため、最近購入した本がこれ。

アメリカでベストセラーとなった『ファストフードが世界を食いつくす』をティーン向けに分かりやすく編集したもので、所々に配されたポテトやハンバーガーのイラストがとても愛らしい。

「みんなの大好きなハンバーガーがどのように誕生したのか」から始まって、「ドライブスルー・レストランの登場」「マクドナルド兄弟の考え出したファーストフード・システム」「落ちこぼれセールスマンが考え出したフランチャイズ方式」「ファーストフード店の爆発的な増加が畜産業や精肉業者に与えた影響」「みんなの大好きなパテ(挽き肉)の中身」「アメリカのカフェテリアと子供の肥満問題」etc。

現代アメリカの食生活と産業を取り巻く様々な社会問題が非常に分かりやすい語り口で紹介されている。

それらは決してファーストフード産業や創始者たちを批判し、貶め、不買運動を煽る偏った内容ではない。

あくまで「事実」を淡々と綴った上で、「それでも君たちはハンバーガーを食べ続けますか?」と問いかける、好感の持てる本である。

原題は、『Everything you don’t want to know about Fast Food(君たちが知りたくないファーストフードのすべて)』。

ほんと、知りたくない現実(どんな肉が使われているか、とか)が、いろいろ親切に書いてあった。

これを読んでも、「やっぱハンバーガーは美味いよなぁ」と思える人は、相当毒されているといってもいいかもしれない。

*

もちろん、書かれた内容の真偽については異論・反論があるだろう。

中には改善されたこともあるし、誇張されている部分もあるかもしれない。

だが、肝心なのは、「情報の正確さ」ではなく、「考えるきっかけを与えること」。
 
当たり前のように目にするCMや、何の疑いもなく口にしている「イチゴ味シェーク」が、実はこういう風に作られている、と知ることで、栄養学的なことはもちろん、現代の食文化や産業のあり方、しいては世界全体の構造まで、「本当にこのままでいいのか」と思わずにいられなくなる。

歴史でも、科学でも、大人が子供に物を教える時、大人はどうしたって「正しさ」にこだわるけども、それが正しいかどうかを判断するのはやはり子供自身であり、大切なのは事実をありのままに伝え、深く、広く考えさせる問題提起の姿勢なのだ。


 
それが「正しい」と信じて教えたことも、何十年後かには「間違いだった」ということもある。

「正しさ」にこだわれば、それは暗記にとどまり、学習ではなくなる。

学習とは、考えることだ。

正しいことを、覚えることじゃない。

*
 
『おいしいハンバーガーのこわい話』が多くの読者に受け入れられたのも、著者が「ファーストフード業者は絶対悪だ。買ってはいけない」というスタンスではなく、「今のファーストフード産業の裏側はこんな感じだけど、君たちはどう思う?」という姿勢で語りかけているからだろう。
 
たとえ10代の若者でも、世の中の流れを変える力はある。

みんなが食べなければ、この産業は確実に衰えるのだから。
 

§ 本の内容について

おいしいハンバーガーのこわい話

また、この本では、誰もが知っている有名ブランド「KFC」や「ドミノピザ」「GAP」といった企業がいかにして誕生したかも紹介しており、商業と社会の関わりを考える上でもとても興味深いです。

おいしいハンバーガーのこわい話

この章では、子どもをターゲットにしたマーケティング戦略が紹介されています。
普段、何気なく目にするコマーシャル、親や祖父母へのおねだりが、どのように企業の利益に繋がっていくか。
「プレイランドは子どもたちを呼び込み、子ども達は親を呼び込み、親はお金を呼び込む」という一文がすべてを物語っています。

おいしいハンバーガーのこわい話

この章では、「ハッピーセット」のおもちゃを作る発展途上国の労働者の現実を取り上げています。

おいしいハンバーガーのこわい話

この章では、フライドポテトの味を決定づける「人工香料」について解説。
現代の食品工業において、絶対不可欠な人工香料。
わたしたちが「おいしい」と感じる味も大半が化学成分で合成されている現実を考えます。

ふつうの家でいちごのミルクシェイクを作るとき、必要なものは、氷とクリーム、いちご、砂糖、バニラ少々だけ。

いっぽう、ファストフードのストロベリー・ミルクシェイクの原料はというと……この人工いちご香料には何が含まれるのか。
以下のおいしい化学物質だ。酢酸アミル、姉トール、蟻酸アニシル、硝酸エチル、メチルアセトフェノン、etc。

おいしいハンバーガーのこわい話

この章では、みんなの大好きなチキンナゲットになる為に、品種改良され、恐ろしい早さで異常に大きく成長し、工業的に処理される鶏や、人間による牛の解体処理現場について生々しく記述されています。

おいしいハンバーガーのこわい話

この章では、ファストフードの大量摂取から病的に肥満になり、ついにはバイパス手術を受けることになった少年の辛い闘病生活が紹介されています。
そして、そんな病児たちの通う病院にさえマクドナルドの支店がある、というのが驚愕です。

おいしいハンバーガーのこわい話

最終章では、企業のマーケティング戦略によってファストフード&清涼飲料水まみれになった子ども達の食生活に対し、個人として、学校として、どのような取り組みが出来るか、実例を挙げて説明しています。

最後の締めは次の通り。

店内に入って、ひんやりした空気を肌に感じる。列に並んだら、あたりを見まわしてみよう。キッチンで働く若者たちや、席についた客たちや、最新のおもちゃ広告に目をやる。カウンターの上の、バックライトに照らされたカラー写真をあれこれながめる。
そして考えよう。
この食べ物はどこから来るのか、どこでどんなふうに作られるのか。ファストフードを買うという行為ひとつひとつが、何を引きおこしているのか、ほうぼうにどんな影響があるのか── そういったことを、どうか考えて欲しい。
そのうえで、注文しよう。
あるいは背を向けて、ドアから出てゆく。
いまからでも遅くはない。
ファストフードがいっぱいあるところで暮らしていても、あなたはまだ、自分の好きなように行動できるのだから。

私は……と言えば、時々、無性にフレンチフライが食べたくなって、スーパーで売っている冷凍ポテトを揚げることがある。

でも、似たような形状でありながら、マクドナルドと同じ味になることは絶対にない。

なぜかといえば、マクドナルドのフレンチフライには、牛脂が使われているからだそうだ。

我が家で、どんな新鮮なヒマワリ油で揚げても、「あの味」にならない所以だ。

じゃあ、次に揚げる時は、鍋にクノールのビーフ味のコンソメでも入れてみるか、と思う。

それで似たような味になれば、マクドナルドに行くのは半年に一度で済む(多分)
 
*

著者は言う。

ジーンズやオートバイを買う時は、いろんな情報を吟味して慎重に選ぶのに、なぜファーストフードはいとも簡単に口にしてしまうのか。

そして、ジーンズやオートバイは、飽きれば交換したり、修理がきくけども、食べ物は確実に身体の一部分になり、それはどうにも変えられないんだよ、と。


 
ジャンクフードの誘惑は、子供の頃から母の手作り料理で鍛えられた人にもいつか必ずやって来る。

私も、スーパーの総菜や冷凍食品はいっさい並ばない家庭で育った割りには、カルビーの誘惑に負けたから。

*
 
国道沿いに燦然と輝く「M」の看板に打ち克てるのは、案外、母の手料理などではなく、こうした「ハンバーガーのこわい話」なのかもしれない。

 

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