白い巨塔  /  華麗なる一族  山崎豊子

女流作家とは思えない、重厚かつ緻密な取材力に支えられた山崎作品。
わけても、「白い巨塔」「華麗なる一族」は、テーマ、ストーリー、キャラクターなど、どれをとっても異色の出来映えで、「勧善懲悪のタイピカルな構成」とケチをつけれようと、その面白さを否定することはできない。
特に「白い巨塔」は時代を超えて何度でも蘇り、その度に、人々の心をつかんで離さないだろう。
こんな作品は希有だと思う。山崎氏に感服。

『白い巨塔』について

ついにどなたがアップして下さった、田宮二郎版「白い巨塔」のオープニング動画(感涙)。
この数十年の間に様々な小説がTV化され、その都度、話題をさらってきたが、はっきり言って、田宮二郎主演の「白い巨塔」に勝るTVドラマは無い。

田宮二郎、太地貴和子、山本学、中村珠緒といった空前絶後のキャスティングに加え、骨太な脚本、硬派な演出、べとべとと絡みつくような浪花情緒(これが重要)、役者の演技を見るだけで背筋が痺れるような傑作である。

このドラマが制作されていた頃、田宮二郎はかなりの躁鬱病で、非常にハイな演技をしたかと思えば、突然自信をなくし、大柄な身体を振るわせて号泣したりと、とても不安定な状態だったそうだ。

しかし、「財前五郎」の魂が乗り移ったような鬼気迫る演技は、田宮が財前なのか、財前が田宮なのか、区別もつかないほど完全に一体化し、まるで「田宮二郎の自伝」を見るようである。

ドラマ・シリーズは半ばで視聴率が低迷し、制作側にも非常に厳しい時があったようだが、クライマックスの結審から人気を盛り返し、大変好評な中で最終回を迎えた。

しかし、放送から間もなく、田宮二郎は発作的に猟銃自殺を遂げ、ドラマは傑作を超えて伝説となった。

後に作られた現代版は忘れ去られても、田宮の「白い巨塔」は永遠に人の心を魅了するだろう。

これはまさに田宮二郎の物語であり、俳優たちが本物だった時代の不滅の名作である。

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こちらがオープニング。このテーマ曲を耳にするだけで、心が高揚しますね☆

動画では、「東教授の総回診が始まります!」のナレーションで始まりますが、上巻の「教授選」の後は、選挙を勝ちいた財前がふんぞり返って病棟内を練り歩き、ナレーションも「財前教授の総回診が始まります!」に変わります。

この一言が、財前五郎の野心、情熱、人生すべてを物語っているような気がします。


前任教授・東と火花を散らす財前助教授。

田宮二郎は言うに及ばず、俳優の中村伸郎さんも「表面は落ち着きと威厳を誰よりも重んじ、それらしく振る舞っているが、内面は誰よりも昇進で臆病」な東教授のキャラクターを見事に具現化しておられます。

このホンネと建前の応酬、腹の探り合い、今の日本の会社にもありますよね。

ちくりちくりと嫌みをたれる東教授は典型的な「何とやら」だし、敵の前でうっとうしいほどへりくだって見せる財前のふてぶてしさも凄まじい。

まさに二人の名優が火花を散らす場面です。

※動画は削除されました

病院事情にあまり詳しくない人が見たら、「デフォルメしすぎ?」と思うかもしれませんが、病棟の「部長回診」は今でもこんなんです(笑)
このドラマが見る目の厳しい医療従事者にも支持されたのは、ここに描かれる「ドロドロ人間模様」と「治療をめぐる対立」があまりにもリアルだからですよ。

こちらはドラマのクライマックス。
嘘で固めた財前の地位が、力なき医局員・柳原の証言によってガラガラと崩れ落ちる場面です。

「医学に素人のあなたに、そんなことを言われる筋合いはない!」

「素人とか、玄人とかの問題ではない! 人間の命の問題です!!」

このやり取りも素晴らしい。原作でもおおいに盛り上がる箇所です。

動画は削除されました

田宮二郎版の動画は定期的にUPされていますので、YouYubeなどで探してみて下さい

『白い巨塔』に関する書籍・DVD

国立浪速病院の外科医、財前五郎は、金と政治力を駆使して、大学教授の椅子を我がものにする。
だが、慢心から誤診して、患者を死亡させ、遺族と泥沼の医療裁判を繰り広げる。
田宮次郎主演のTVドラマも制作され、当時、大反響を呼んだ傑作。
後に、唐沢寿明主演で、「平成版 白い巨塔」も制作され、大ヒットとなった。

「日本の現代小説は、これ一冊読んだらいいや」というぐらい、骨太で読み応えのある作品。
医療業者も真っ青の徹底した取材に基づいた、生々しい内部描写が凄まじい。
当時、名のある医学部や大病院が名誉毀損をめぐって大騒ぎしたのも頷ける。
TVドラマでは、主演の田宮次郎をはじめ、太地貴和子、島田陽子、山本学といった豪華メンバーが、非常に熱の入った素晴らしい演技を披露。
特に、誤診で夫を亡くした浪速の女房役、中村玉緒の「あんた~、死なんといておくれやす~」は、最高にはまり役だった。
医療とは何か、人間とは何かを考えさせられる。
時間を忘れて何度でも読み耽ってしまう、社会派ドラマの最高峰です。

ほんと、ページが抜けてボロボロになるほど読み返してます。華麗なる一族もあわせて。

【Amazon レビューより】

ドラマ化もされていて、カスタマーレビューも高いので面白いのだろうと思って読んだのですが、医療現場・職場の人間関係・友情・家族・恋愛・人間の生き方、すべてが数十年前に書かれたとは思えない、社会小説の金字塔と呼ばれてふさわしい作品でした。

典型的な権力志向の財前と孤高の学究肌・里見。対立しながらも、互いの実力を信頼しあい必要とさえしている。物語を進める二人の主人公の対比が際立つ。生い立ちから信念まで正反対の両者、どちら側に感情移入し読み進めても感慨深け。他にも個性的な登場人物が彩り、大学病院と医療裁判という荘重なテーマの割りにはテンポよく読めた。

社会的なテーマを得意とする作者のその緻密な取材力、そして「ぬるりとした頭の又一がごぼごぼとお茶を飲み・・・」、「大河内教授は鶴のように長い首を・・・」、「里見助教授は油気のない髪をかきあげ・・・」等々というような登場人物ひとりひとりの特徴を捉えた人物描写は抜群であり、グングンと惹きつけられます。

大学医学部内の醜い権力闘争を描いた山崎豊子の同名ベストセラー小説で、1978~1979年にフジテレビ系で放映された田宮二郎主演ドラマ。
平成になってから、再放送された時も、視聴者の熱い支持を得て、平成版リメイクへと繋がった。

平成版(唐沢寿明主演)ファンには申し訳ないが、田宮二郎版は、主役級の演技はもちろん、脇役、端役に至るまで、文句のつけのようない完璧なキャスティングである。
教授の令嬢・東佐枝子(島田陽子)の上品で清楚なお嬢様ぶり、里見助教授(山本学)のにじみ出すような深く揺るぎない信念、愛人・ケイ子(太地喜和子)の強烈な存在感、どれをとっても原作の中から抜け出してきたような演技力である。
まさに「TVドラマの芸術品」と呼ぶにふさわしい。もう二度とこんなドラマは作られないだろう。
このDVD-BOXシリーズはファン垂涎の品。

【Amazon レビューより】
国立大学の医学部を舞台に、激しい権力闘争を繰り広げる教授達の姿を赤裸々に描き出している。
登場人物たちが仕掛ける陰謀の数々はまさに芸術的。
現代の日本では失われつつある「腹芸」「根回し」といった伝統文化の真髄を十分に堪能できる。
あくの強い脇役陣の演技も必見。

華麗なる一族

最初はあまり期待せずに読んだのですが、冒頭の、伊勢志摩グランドホテルでの華麗な晩餐の場面からぐいぐい惹きつけられて、一気に読み終えました。

『白い巨塔』もそうですが、いかにも関西らしい、ねっとりした人物像、欲と打算にまみれた人間の恐ろしいほどの利己心が青年劇画のように骨太な筆致で描かれ、これが本当に女性の手によるものか、と思うくらい読み応えのある作品です。

平成になって、木村拓哉さん主演でリメイクされましたが、やはり1974年に制作された佐分利信のドラマが最高に面白い。

特に「黒いドレスをびしりと着こなし、女豹のような眼」をした愛人・高須相子=京マチコの存在感は白眉のもの。


万俵大介は、大同銀行の専務と結託して、鉄平の阪神特殊鋼が不渡手形を出し、倒産へと追いやらされるさ中、上位の大同銀行との合併をはかる。鉄平は、大同銀行の頭取を出し抜いた専務と父親大介の関係を知るに及び、丹波篠山で猟銃自殺をとげる。帝国ホテルで挙行された新銀行披露パーティの舞台裏では、新たな銀行再編成がはじまっていた―。
聖域「銀行」に挑戦した熾烈な人間ドラマ。

同じく山崎豊子の鬼気迫る作品。こちらも佐分利進主演の映画が制作され、話題を呼んだ。
大阪・神戸を舞台にした、ねっとりと、いやらしい人間模様が秀逸。
山崎さんは大阪系人間の実態を描かせたら日本一と思う。

これもページが抜け落ちるほど繰り返し読みました。
大阪人なら、「ドンク」とか「元町」とか、具体的に名称が出てくるのが嬉しいですよね。

確かに銀行や鉄鋼業界ナンタラの部分は基礎知識がないと難しく感じるかもしれませんが、週刊現代や文春などのビジネス記事に親しむ素養があれば、だんだん分かってきます。平成とはずいぶん事情が異なるかもしれませんが、業界ヒエラルキーや政治的圧力で泣かされる構図は現代も変わらないと思います。

【 Amazon レビューより 】

これは山崎豊子氏の小説で、主人公が悪いほう(ピカレスク小説)の分類になる。(他には『白い巨塔』『女系家族』などがそれ)
主人公の万俵大介のエグさには、長編小説を付き合う読者としては辟易せざるをえない。ふつう悪党の小説を楽しむ時は、その悪党ぶりの痛快さを味わうのだが、本作で万俵が叩きのめす相手は、血を分けた長男なのである。これがまた、どこに父親の血を引いているのかと思うほどの正義漢で純粋だから、父親にやっつけられていく様は見ていて辛い。ストーリーはスピーディーに進むので読みやすいが、銀行の複雑な仕組みは素人にはやはり難しかった。

また、娘が一子、二子、三子と単純な名前で出てくるものの、二子ちゃん以外はあまり活躍の場がない。
せっかく『華麗なる一族』ならば、女性陣にもがんばってほしかった。
とはいえ、本当に面白いので5つ★です。

関西金融界の雄、万俵大介(佐分利信)は厳然たる家父長制で一族を取り仕切り、その勢力を広げようと腐心し続けている。しかし、長男の鉄平(仲代達矢)に対してだけは、その出生の疑惑にこだわりを持ち続けていた。ある日、その鉄平が経営者として致命的なミスを冒してしまう…。
虚飾に彩られた大財閥の実像を赤裸々に描いた社会派巨匠・山本薩夫監督の堂々211分におよぶ超大作。
見かけの華やかさとは裏腹のどす黒い人間たちの愛憎と確執が、悠々たる流れとエネルギッシュな演出の力わざによって壮大に繰り広げられていく。
当時のオールスターキャストも魅力的で、ある種パターンとも思える人物描写なども、彼ら彼女らの深みある存在感によって大いにカバーされている。
佐藤勝の優雅な音楽などスタッフワークも素晴らしく、当時こうした日本映画が普通に製作されていたという事実には、驚きすら覚えてしまうほどである。

佐分利信の、怪物エロおやじぶりがたまらない☆ 
京マチコの“相子さん”も、黒蜥蜴並にハマっていた。

最近では、木村拓哉主演でTVドラマがリメイクされたようだが、佐分利信の「大介」はもとより、仲代達矢の「鉄平」、京マチ子の「高須相子」、月丘夢路の「寧子」と、 こちらも文句のつけようがないキャスティングで、比ぶべくもない。
脚本もしっかりして、あれだけの長編をよくこの時間内に収めたなあと感心します。

【 Amazon レビューより 】

見所いっぱいの作品であるが、やはり佐分利信の貫禄が最大の見所であろう、佐分利がいたからこそ映像化可能だったと断言しても反論はないだろう、昨今のリメイク・ブームで本作も当然に俎上にはのぼっているのであろうが、おそらくは製作者たちの誰もがいったい現在の俳優達の中で誰が万俵大介を演じられるだろうかと頭を抱えるだろうとおもう、意表をついたキャスティングで21世紀版華麗なる一族を見たいと多くのファンが考えているだろう。

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