映画

後悔と期待の失恋ラブコメディ 映画『ベスト・フレンズ・ウェディング』

2011年6月2日

『最高の男ともだち』──。

そういう人、私にもいた。

知り合って、10年。

なんだかんだでいつも一緒に行動し、将来や社会に関する真面目な話もすれば、下ネタや馬鹿話で笑い転げたりもした。

いわゆる「一つの布団にくるまって一晩過ごしても、何も起きない仲」。

私はいつも他の男の子に夢中だったし、あっちも途絶えることなく彼女がいて、互いに意識することもない。

にもかかわらず、共に喜び、共に怒り、いろんな出来事を共有してきた。

周囲には「どうして(恋人として)付き合わないの?」「結婚すればいいのに」と言われもしたが、全然そんな雰囲気じゃなかったよね。

……というより、下手に男女の関係をもって、絶妙なバランスが壊れるのが怖かったのかもしれない。

*

そんな中、二人とも年頃になり、『結婚』の二文字を意識するようにもなった。

実際に、その話も出た。

でも、キスはおろか、手も握ったこともないのに、いきなり結婚って……アンタ・・・。

満員電車のなかでゲラゲラ笑いながら「オレと結婚しろ。結婚。結婚、結婚!!」とか言われて、感動して頷く女がおるかいな。

私も喉元まで「うん」という言葉が出かかっていたけども、なんか釈然としない。
いや、そうじゃない、私が聞きたいのはそういう言葉じゃなくて、ほら、もっと、女の子がじーんと感動するような言葉があるでしょうに、
「あ」のつく言葉とか、「す」で始まる言葉とか……。
ホントにここで頷いていいのかなー、という思いが頭の中でぐるぐる駆け巡って、結局、最後まで頷くことはなかった。

そして、一度は、「前向きに考える」と答えたものの、保留すること数ヶ月。その間、私のズボラな性格が原因で共通の友人を怒らせてしまい、飲み会がお流れになったあたりから話がややこしくなり、数週間ぶりに電話してみると、「オレには彼女ができた。お前とは終わり」と言われて、10年間の付き合いがあっけなく幕を閉じたのだった。

しばらくショックと怒りと脱力感で受話器を握りしめたまま身動きもできなかったけど、私も甘かった、とつくづく反省したもの。

今までどんな大げんかして、どんな無理を言っても、なんだかんだでまた身を寄せ合って仲良くしてきたから、今度も許してもらえるという甘えがあった。
もしかしたら、私が思う以上に、相手は真剣に考え、期待してたかもしれない。
だとしたら、彼の好意に甘えて、何年も酷いことをしてきたのは私の方だし、私なんかが思い及ばぬところで、深く気持ちを傷つけてしまったのかもしれない。

その後、計り知れない喪失感にボーゼンとなり、彼と過ごした10年の歳月が心の中に一気に押し寄せてきた。

何度も何度も夢の中で再会しては、彼の左手の薬指にリングが光っている場面にまた傷ついて、自分の叫び声で目が醒める、ということを繰り返してきた。

一度も意識したことはないけれど、多分、心の奥深いところでは一番の存在だったんだろう(他の男の子に恋していた時でさえ)。

そんなわけで、初めて映画『ベスト・フレンズ・ウェディング』を見た時は、まさに自分の経験が重なって、コタツの中で号泣。いろんな場面がフラッシュバックして、しばらく立ち直れなかったぐらい。

*

ジュリア・ロバーツ演じる料理評論家のジュリアンは、昔の恋人で、今は友達として付き合っているマイケルと、「お互い、28才になっても独身でいたら、結婚しよう」という約束をする。

そして、28才の誕生日を前に、マイケルから電話がかかってくる。

てっきりプロポーズの電話だと胸を高鳴らせていたジュリアンは、「素敵な女性に出会った。四日後に結婚式を挙げる。君には花嫁の介添えとしてぜひ出席して欲しい」というマイケルからの申し出にショックを受け、式までの四日間に何としてもジョージを取り返すことを決心する。

花嫁となる女子大生のキムは、キュートで、性格も明るく、資産家の娘と文句のつけようのない相手。

キムの前で、わざとマイケルとジュリアンにしか分からない旅行の思い出話をしたり、音痴のキムに無理矢理カラオケを歌わせて恥をかかせようとしたり、あの手この手で二人の仲を潰しにかかるが、その度に、マイケルとキムの絆は深まり、ついに結婚式の日を迎える。

まさに式が始まろうという時、ジュリアンはとうとう愛を告白し、ジョージに「結婚して」と迫るが、その場面をキムに見られてしまい……

最後は、涙ながらもハッピー・エンディングで、「次はあなたの番よ、ジュリアン!」と花でも贈りたくなるような結末なのだけど、彼女の一挙一動、気持ちの一つ一つが手に取るように分かり、こんなに切ない気持ちになるラブコメもまたとなく。

話の途中、マイケル恋しさに、取り返しのつかない過ちをおかしてしまい、ホテルの廊下にへたり込むジュリアンに、通りすがりのベルボーイが、

すべてのことは過ぎ去る

と慰めるが、まさにその通り。一度失われた人の気持ちは帰ってこないし、二人で過ごした時間も戻ってこない。

どんな痛い間違いも、遠くに過ぎ去ってはくれるけど、良い時もまた風のように流れ去ってしまうのだ、自分でしっかり掴まえておかないと。

この映画の醍醐味は、時間の流れや人の心の移り変わりを「ヒロインの神業」で押し戻すことなく、どうにも変えようのない人生の真実を潔く、また明るく、受け入れる点にある。

だからこそ、エンディング、披露宴でダンスを踊るジュリアの笑顔がこの上なく眩しい。

人は時に大きな過ちから自分にとって一番大切なものを無くしてしまうけれど、人生はそこで終わりではなく、心を入れ替えた瞬間にまた新たに始まるのだ、ということを教えてくれる、とても気持ちのいい作品である。

ジュリア・ロバーツ ベスト・フレンズ・ウェディング

暴走するジュリアンの御者役となるのがゲイの編集長ジョージ。

「マイケルがあんなに素敵な男性とは思わなかった・・」と泣いて悔やむジュリアンに、

「君はマイケルを本当に愛しているのか? それとも他の誰かのものになったから、奪いたいだけ?」
と問いかける。

よく「いいなと思った男性は、結婚してるか、彼女がいるか」というけれど、パートナーのいる男性は自然と優しく、頼もしくなっていくものだから、シングルの女性から見れば「ますます魅力的」に映るのは当然。

だからといって、彼がフリーの時に出会ったとして、果たしてその魅力に気付いたか、と言われたら、決してそうじゃないのね。

今、彼が身につけている優しさや頼もしさは、パートナーである女性がもたらしたもの。「出会うのが遅かった」と運のせいにするのはお門違いなのね。

ジュリアンもそう。今頃になって彼の魅力に気付いても、それはやはり彼女が至らなかったせい。ジュリアンが見過ごしてきたものを、婚約者のキムは大切に思い、正面から愛し続けてきた。その点で、キムに軍配が揚がるのは当然のことなのだ。


そうしてついにジュリアンはマイケルに告白する。

Choose me, Marry me, Let me make you happy.

私を選んで。結婚して。私にあなたを幸せにさせて。

普通に考えれば、もうすでに結婚が決まった相手に、今さらのように愛を告白するなんて、厚かましい! って印象があるけども、私がジュリアンの告白に好感を持ったのは、「Make me happy(私を幸せにして)」じゃないからだ。

Let me make you happy(私にあなたを幸せにさせて)

素敵な言葉と思いません?

哀れっぽく相手の好意にぶら下がるのではなく、自分から気持ちを全開にして、懐に飛び込んで行く。

この一言で、ジュリアンの我が侭も許せる、そしてマイケルも最後には「ありがとう」を言う。

この映画のジュリア・ロバーツは最高に輝いてます。

*

この映画はとにかく『間』がいい。

気持ちをクドクド説明するのではなく、ふとした表情、交わす視線で、複雑に揺れるジュリアンとマイケルの気持ちを非常に上手く表現している。

キャメロン・ディアスも溌剌として可愛いけど、この映画に関しては、完全にジュリア・ロバーツの貫禄勝ち。恐れ、後悔、期待、意地悪、彼女の顔を見ているだけで、気持ちが手に取るように分かるから。

またこの作品には、「これで流れが変わるかも! 今だ、告白して、ジュリアン!」という展開が幾つもあって、たとえば、遊覧船の上でジュリアンとマイケルがゆったりとダンスを踊る場面、船が橋桁の下を通過する一瞬、愛の言葉が口をついて出そうになるジュリアンの気持ちを痛いほど表現しているし、身内の祝いの席で皆が「I say a little prayer for you」を歌う中、思いがけない心の変化に戸惑うマイケルと(ジュリアンはジョージと婚約したとウソをつく)、切なさを堪えるようにして笑顔を浮かべるジュリアンの気持ちを、見交わす視線だけでスリリングに描いている。

いくつも映画賞にノミネートされるような名作ではないけれど、ジュリア・ロバーツの映画としては三本の指に入る傑作だし、きっとこれからも長く愛される作品ではないだろうか。

ジュリア・ロバーツ ベスト・フレンズ・ウェディング

もしかしたら、隣に座っていたのは私かもしれないけれど……

ベスト・フレンズ・ウェディング

今は笑顔で祝福たい。

ジュリア・ロバーツ ベスト・フレンズ・ウェディング

そして彼は永遠に手の届かない所へ去って行く・・。

せつないですが、見終わった後に涼風が吹く、そんな良作です♪


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ジュリア・ロバーツとキャメロン・ディアス共演で贈るラブコメディ。元恋人のジョージが結婚すると知ったジュリアンは嫉妬を覚え、婚約者との仲を壊そうとするが…。

ジュリア・ロバーツの映画は積極的に見ることないのだけども、この作品は別。ジュリアの役者としての器量が光り輝いている。
監督さんも日本ではほとんど知られてないけども、演出が上手い。
個人的には、五本の指に入るラブコメです。

これも元気の出る映画です。一文無しのシングルマザーが法律事務所で仕事を得て、化学工場周辺の異常な病気の発生率に気付き、大手企業から史上最高の和解金を勝ち取る話です。下層出身ながらも、堂々として、頭のいい女性をジュリアが爽快に演じています。

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