音楽

迷走する教育 『アナザー・ブリック・イン・ザ・ウォール』/ ピンクフロイド

2014年9月5日

代々木ゼミナールが「20校舎を閉鎖」「事業縮小」のニュースを受けて、少子化の悪影響や教育受験産業の斜陽化など、いろいろ言われていますが、これからの時代、『箱(建物)』『クラス』という概念も変化して、授業もどんどんIT化していくんじゃないか、と思います。

今時、一家に一台はPCかタブレットかスマホがあり、世界に誇る高速回線があって(遅いと文句言ってる人も多いけど国際的にはトップクラスです)、一歳の子供でもスマホやタブレットで遊べるほど、ツールだけは普及してるんですから(ちょっと下のレベルの国になると高すぎて買えません)、これを機に、画期的な遠隔教育システムを導入して、それこそグローーーバルに新規事業を展開されてはどうかと思います。

実際、海外在住組は、子供の日本語レベルを維持するのに必死、みながみな、日本人学校や日本語補習校のある大都会に住んでいるわけじゃなし、『しまじろう』だけじゃ、とてもとても。

それに「日本語を勉強したい」という海外の学生も多い。(アニメファンも含めて)

日本に留学できるほどの経済力もなければ、日本語学科のある有名大学の近くに住んでいる人ばかりでもない、「かろうじてインターネットはできます」というような貧乏+田舎の環境で、「ああ、日本語勉強してー。ネイティブの日本人と喋りてー」(そう、日本人の皆さん、世界的にも非常に希少な日本語のネイティブスピーカーなんですよ)と、勉強の機会に植えてる向学心の強い若者もたくさんあるのだから、それこそ、融通の利く民間の力で画期的な遠隔教育システムを開発すればどうかと思います。

そうすれば、講師の皆さんも各々の力を末永く役立てることができるし、自宅で講義=在宅ワーキングマザーという勤務スタイルも可能になって、女性にとってもチャンスが広がるかもしれません。

教室で生徒と直に触れ合いながら教えるスタイルより劣る部分もあるかもしれないけど、やはり、みながみな、利便のいい大都市に住み、高度な教育を受けるチャンスを得られるわけではないですから、そのあたり、臨機応変に教育システムを展開すれば、全体の底上げにもなると思うんですけどね。

教育する側も、場所代や人件費が浮く分、いろんな試みができるような気がするのですが。

法的にもクリアしなければならない問題は多いかもしれないけど、この際、「箱=教室」にこだわらない新世代の通信・遠隔教育スタイルを編み出して、底上げに一役買っていただくと同時に、世界の地理的、経済的に非常に不利な若者にも教育が行き届くよう、何かしら新しく試みて欲しいなと思います。

学歴社会や詰め込み教育など、いろいろ問題はあったにしても、日本人の学力向上に一役買ってきたのは事実なのですし。(私たちの頃はね)

*

そんな私の耳に今も懐かしく残っているのがピンクフロイドの『アナザー・ブリック・イン・ザ・ウォール』。

1979年に発表されたこの曲は、中学生ぐらいの子供たちがレコーディングやビデオクリップで『We don’t need no education (教育なんてされたくない)』と大合唱することから、反社会的だと世間のひんしゅくを買った問題作です。

その頃、私は『FMラジオ少女』になったばかりの超初心者で、イギリスに関しても「鉄の女 サッチャー首相」あたりしか記憶がないため、この作品が作られた背景にイマイチ疎いのですが、『管理教育の真っ盛り』といえば、日本もそうだったかもしれません。

『アナザー・ブリック・イン・ザ・ウォール』のクリップでは、工場でネジが製造されるように子供たちが教育されます。

Pink Floyd - Another Brick in the Wall, Part 2

Pink Floyd - Another Brick in the Wall, Part 2

教師は子供たちに「従順であること」を求め、厳しい規律をしく。

Pink Floyd - Another Brick in the Wall, Part 2

やがて子供たちは国家や企業のために生産を続ける「部品」として社会のシステムに飲み込まれ、最後は「個」も「主張」もない挽肉にされる。

Pink Floyd - Another Brick in the Wall, Part 2

Pink Floyd - Another Brick in the Wall, Part 2

自我に目覚めた子供たちは、ついに教室をめちゃくちゃにし、学校に放火する。

Pink Floyd - Another Brick in the Wall, Part 2

Pink Floyd - Another Brick in the Wall, Part 2

*

その後、日本では、実際に、暴走族とかヤンキーとか呼ばれる生徒たちが校舎をバイクで走り回り、ガラス窓を叩き割って暴れてましたけどね。

ピンクフロイドの世界観とは全く質を異にしますが。

*

洋楽和訳 (lyrics) めったPOPSさんが詳しい解説をされています。

We don’t need no education
We dont need no thought control
No dark sarcasm in the classroom
Teachers leave them kids alone

教育なんてされたくないのさ
思想管理なんてされたくない
教室のなかで暗い皮肉なんて
聞きたくないんだ
先生 子どもたちを放っておいてくれ

Hey! Teachers!
Leave them kids alone!
All in all it’s just another brick in the wall.
All in all you’re just another brick in the wall.

先生たち!聞こえるか!
子どもたちに構わないでくれ!
だって所詮 壁のなかのレンガでしかないんだ
だってあなただって
壁のなかのレンガの一片にすぎないんだ

We don’t need no education
We dont need no thought control
No dark sarcasm in the classroom
Teachers leave them kids alone

教育なんてされたくないのさ
思想管理なんてされたくない
教室のなかで暗い皮肉なんて
聞きたくないんだ
先生は子どもたちを放っておいてくれ

Hey! Teachers!
Leave them kids alone!
All in all it’s just another brick in the wall.
All in all you’re just another brick in the wall.

先生たち!聞こえるか!
子どもたちに構わないでくれ!
だって所詮 壁のなかのレンガでしかないんだ
だってあなただって
壁のなかのレンガの一片にすぎないんだ

この曲はPart1 Part2 Part3 の三種類が存在し、一番有名なのが『We don’t need no education』と歌ったPart2です。

ビデオクリップは前置きが少し長いので、曲の始まるところからご覧くださいな。


こちらはアニメ版。70年代のサイケな雰囲気がよく出ています。


*

いつの時代も「管理」や「規律」や「画一的」は『教育の敵』と思われがちですが、昨今の「個性重視」「自由の尊重」を見ると、あながちそうとも言えない..というのが現実でしょう。

個性も、自由も、反抗も、創造性も、(とりあえずは)「右向け、右」の号令に従うことのできる社会性や協調性があってはじめて発揮できる力であり、よく「枠組みを超えた」という言い方をしますが、「枠組み」のなんたるかを知らない人間に枠組みは壊せないんですよね。

だって、そこに元から枠組みはないのだもの。

枠組みを超えるには、それゆえの不満や息苦しさを知る必要もあると思うのですよ。

「自由」も空気と同じ、「自由がない」現実を知ってはじめて自由に憧れ、自由を求めて行動を起こすんじゃないかな、と。

何でもバランスが第一です。

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今、改めて『アナザー・ブリック・イン・ザ・ウォール』を見て、いずこの国も、いつの時代も、教育に迷走し、上手く行ってる方が少ないのかもしれません。

当の大人自身が迷走してるんですもの。

国をあげての「理想的な教育」なんて、そう簡単にはいかないかもしれません。

でも、ある意味、ITの時代になって、『箱』や『クラス』、ひいては『年齢』『環境』『国籍』といった差違にこだわらない教育方法も可能なのですから、少子化だ、不況だと、溜め息をついているヒマがあれば、より濃厚で、子供と教師がガッツリ組むような、新しいスタイルを模索すればどうかと思います。

もう古いやり方にこだわる必要はない。

駅前の教室に通わなくても、ライブチャットで英会話もできる時代ですしね。

世界でも特異な存在である教育産業の皆さんは、それこそ国際社会が目を見張るような、画期的、かつ、グローバルな新規教育事業を展開し、新たな市場を創出して下さい。

受験生に勉強教えるぐらいだから、頭いいんでしょうしね。

*

「管理」や「厳しさ」は悪のようにみなされ、実際、そういう部分もあるかもしれないけれど、「きちんと教えられてない子供」というのも、また悲劇です。

「壁のブロックの一つ」にもなれない子供は、ブロックの役にも立たず、ゴミとして社会の隅に捨てられるかもしれません。

ピンクフロイドのビデオクリップのように、最後は工場のシステムに飲み込まれ、みな一様の挽肉にされるのも問題ですが、壁のブロックの一つとして社会を支える意義も同じくらい重い、と思います。

アイテム

これも歴史的名盤ですね。最近リマスターされました。

ウォールだけ聞きたいはMP3ダウンロードでどうぞ。 

Photo : http://pinkfloydarchives.com/DUSLPcom.htm

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