書籍と絵画

ゲッセマネの園  ーイエス・キリストの苦悩-

2010年5月3日

ルカによる福音書より

十二人の弟子たちと最後の晩餐(イエスがユダの裏切りを示唆する有名な場面です)を終えたイエスは、弟子のペトロ・ヤコブ・ヨハネを連れて、オリーブ山にあるゲッセマネの園に向います。

イエスは弟子たちに「誘惑に陥らないように祈りなさい」と言うと、少し離れた所にひざまずいて、天の父に祈りました。
「父(神を指す)よ、できるなら、この杯(苦難と死を意味する)を私から取りのけて下さい。しかし、私の望みからではなく、あなたの御心のままに」。

すると天使が天から現れて、イエスを力づけました。
イエスがますます熱心に祈ると、汗が血のしたたるように地面に落ちました。

イエスが祈り終わって、弟子たちの所に戻ってみると、彼らは悲しみの為に眠り込んでいました。
「なぜ眠っているのか? 誘惑に陥らないように、目を覚まして祈っていなさい。心ははやっていても、肉体は弱いものだ」
遠くには、イエスを捕らえに来た兵士たちの姿が見えます。
「時が来た。私は罪人たちに引き渡される。立て。行こう。私を裏切る者がやって来た」

【キリストの苦悩】-Agony in the Garden- ジョバンニ・ベリーニ Giovanni Bellin

【キリストの苦悩】-Agony in the Garden- ジョバンニ・ベリーニ Giovanni Bellin

人間にとっての『ゲッセマネの園』

聖書の中では、この場面が一番好きです。
なぜなら、どんな人間にも、生涯に一度はこういう場面が訪れるからです。

運命――別の言葉に置き換えるなら「この現実」――を享受する事は、決して敗北ではありません。受動的な闘いであり、意志と理性の勝利だと私は思っています。

こんな事を言ったらニーチェが嫌がるかもしれないけど、彼の思想もイエスの生き様も、原点は同じだと思います。

運命から差し出された「杯(受難)」を潔く受け取り、運命に立ち向かうか、あるいは逃げ出すか――究極、人間の生き方は二つに分かれるような気がします。
そして前向きに立ち向かった者だけが、真の勝利をつかむのではないでしょうか。

宮崎駿さんの映画「もののけ姫」でも、村のばあ様が言っている。「運命は誰にも変えられない。だが自ら赴くか、待つだけかは決められる」
もし奇跡が起きるなら、それは運命に立ち向かった時――自らを変えた時、その人自身の中に起こるのではないでしょうか。

【キリストの苦悩】-Agony in the Garden- エル・グレコ El Greco

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イエス・キリストに関する書籍

とりあえず聖書やイエス・キリストの概要を知りたければ、イラスト入りのダイジェスト版がおすすめ。
後世の文学や絵画に影響を与えた感動的なシーンをすべて網羅し、名場面形式で分かりやすく解説しています。

旧約聖書は宇宙のはじまり・人類の誕生から、メソポタミア・エジプト・バビロン・ペルシャ・アッシリア・マケドニアなどの古代帝国の興亡、そこに捕らわれるユダヤ人と他民族の抗争、離散の歴史を伝える巨編で、ユダヤ教・キリスト教・イスラム教という一神教共通の聖典になっています。言わば文字で残された人類が共有する遺産です。
ノアの箱船、バベルの塔、ソロモンの栄華、神殿などをリアルに復元し、再構成した図解と遺跡の写真・名画で紹介。
ちょっとした読み物、雑学として楽しめます。

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キリスト教に関する参考書籍はこちらでどうぞ 『初心者にもわかりやすい キリスト教の本』

初稿:1998年秋

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